「離婚原因は、私が力みすぎたから。最悪の別れ方をしましたが、彼に対してよりも自分に対する嫌悪感のほうが強いです」
そう語るのは、今年の8月に離婚した林秀美さん(仮名・33歳)。林さんは完璧主義な性格を理由に夫・弘明さんから別れを告げられてしまいました。
理想の子ども像を押しつける両親によって完璧主義に

「テストでは常に100点を取れと言われました。他の点数は、0点と同じだからと。でも、頭がよくなかったので、80点台のことが多くて……。『あんたは馬鹿だ』と、よく怒られました」
テストだけでなく、普段の生活の中でも秀美さんは両親からの注意や指摘に怯えていました。例えば、食器を洗った後、シンクに水が1滴でも残っていると父親は激怒。「水を使った後は、水滴が残らないように必ずシンクを拭け」と怒られるなど、気の抜けない日常を送っていました。
「完璧だと両親は、『やっぱりあなたはすごい。私たちの子だわ』と褒めてくれましたが、少しでもミスをすると、『世間に笑われる』とか『みっともない人間だ』とか言われるので、そういう言葉を聞きたくなくて、両親が望む完璧な子であろうとしました」
自分が完璧主義だと気づいたのは実家を出て、ひとり暮らしをするようになってから。
「例えば、休日に掃除をするのがルーティンになっていたら、どれだけ疲れていても義務感のような見えない圧力に押されて、隅々まで清掃しないと気が済みません。上手く休めない日が続き、なんで誰もいないのに、誰かに認めてもらいたいかのように頑張ってしまうんだろうって思いました」
正反対な性格の夫と結婚

一方、弘明さんは家事を完璧にすることより、ふたりで話す時間を重視。家事をしている秀美さんに、しばしば「そんなことよりも、ソファーに座ってふたりで話そうよ」と言ってきました。
完璧主義な秀美さんはできていないことがあるのが嫌で、弘明さんの誘いを断る日が増え、2人の関係は徐々にギクシャクしていったのです。
「それでも、初めの頃はまだ会話がありました。そんなに頑張らなくてもいいよと、夫は優しい言葉もかけてくれた。けれど、1ヶ月ほど経つ頃には家庭内に殺伐とした空気が流れて、会話もまったくなくなっていました」
義理の両親から200万円の手切れ金で「別れて」と言われた
すると、ある日、弘明さんから「週末、ちょっと外で話さない?」と言われ、とある喫茶店へ行くことに。場所を変えて話しやすいようにしてくれたのかと、秀美さんは思いましたが、喫茶店につくと、弘明さんの両親が……。
なぜ、義母と義父がいるのか疑問に思いながらも、言われるがままに4人で席につくと、目の前に分厚い封筒が置かれました。

実は弘明さん、家庭があまりうまくいっていないことを両親にずっと相談しており、自分たち親子だけで「離婚したほうがいい」という結論を出し、秀美さんに手切れ金を渡しにきたのでした。
驚いた秀美さんは弘明さんに「もうやり直せないの?」と聞きましたが、弘明さんは「僕らは価値観が違いすぎるからうまくいかないよ。一緒にいて疲れるし」と言われてしまいました。
「話しにくい雰囲気はたしかにありましたが、真っ先に親に相談されたことが嫌でした。私と話し合うという選択が頭の中になかったことが悲しかったです」
何を言っても無駄だと悟った秀美さんはお金を貰い、弘明さんと離婚。現在は、離婚に繋がった完璧主義な性格を変えようと頑張っています。
離婚の原因が自分にあったと、自らを責める秀美さん。そんな彼女が自己否定せず、苦しまない人生を歩める日がくることを切に願います。
<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291