馬場ふみか演じる専業主婦が、モラハラ夫(野村周平)を社会的に抹殺しようと計画するドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法』(テレビ東京系、火曜深夜0時30分〜)。話題のドラマを、夫婦関係について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。
虐げられた妻が、夫を退職に追い込んだ方法とは
ネット上と玄関に差し入れられる手紙でしか接点のない「謎の仮面さん」の誘導にしたがい、夫を社会的に抹殺していく決意を固めた茜。5つの方法のその1は、ポジティブ感情を奪うこと。前回、不倫相手の前で強烈な恥をかかせて関係を終わらせたことで、夫のポジティブ感情を崩壊させたはずなのに、夫はどうやらまた社内で若い女性にちょっかいを出している。そのあたりは社内の後輩が情報を流してくれている。
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— ドラマ「夫を社会的に抹殺する5つの方法」🔪1/31深夜24:30放送【公式】 (@tx_otosatsu) January 24, 2023
#オトサツ
今夜0:30 第3話放送
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第一の復讐で浮気相手の前で恥をかいても、懲りていない大輔(#野村周平)。怒りが込み上げる茜(#馬場ふみか)の元に、次なる復讐の連絡が…。#夫を社会的に抹殺する5つの方法#佐藤玲 #岡本夏美 #伊藤雛乃 pic.twitter.com/njGiAjgxpk
5つの方法の2番目は、夫がこれまで築いてきた達成感を奪うこと。「仮面さん」からの連絡で、茜は夫がこれまで、部下たちのデザインを自分の名前で使っていたことを知る。部下たちは、「次はきみの名前で出すからさ」という大輔の言葉を信じて、無断盗用について意義を唱えられずにいた。これは強烈なパワハラである。
茜は、友人のライターに情報を流し、夫のしてきたことを世間に暴露、さすがに今の時代、社内の幹部たちもこれは容認できず、夫は会社を辞めるはめになった。
夫を本当に“社会的に抹殺”した、ある48歳女性の実話
ヒデミさんは、大手流通企業に勤めている。同期のカズヒロさん(仮名)と結婚したのは29歳のときだ。共働きで、ひとり娘を育ててきたが、どちらかといえば妻は仕事に重点を置き、夫は家庭を愛していた。
「そこはバランスですからね、うちはバランスがいいと思っていました。部署も私は営業、彼は事務職だったから、どうしても私のほうが忙しい。出張などもありました。でも夫は『いいよ、オレは定時で帰れるから』といつも言ってくれていた」
休みの日には、家族3人で、娘の行きたいところへ連れていった。ときには娘を実家に預けてふたりでデートすることもあった。
「幸せだなとずっと思っていました。好きな仕事を思い切りやることができて、家に帰れば優しい夫とかわいい娘がいて。だからいつも夫には感謝していたんです」
ある夜「お父さんが帰ってない」と娘

あるとき、ヒデミさんが3日間の出張に出た。出かけたその晩、電話をすると娘が出た。
「お父さんが帰ってないと娘が言うんです。ご飯も食べてない、と。その日、夫は代休をとれるから娘のことは任せろと言ったんですよ。それなのに。あわてて母に連絡して、家に来てもらうことにしました。夫とは連絡がつかなかった」
問い詰めると、夫の目がキョロキョロして
「娘に連絡くらいしてよと言ったら、『ほんっとにごめん。さっき電話した』と。その場はそれですませましたが、なんだか違和感があった。たとえ親友が事故にあったのが本当だとしても、娘の夕飯を忘れるような人じゃない。いったん家に戻るなり、私の母に連絡するなり、それくらいは頭が回るはず。おかしいと思いました」
出張から戻って出社すると、例の同僚女性が「カズヒロさんの相手と噂されている子が、出社途中でケガをして休んでるのよ」とまたも情報をくれた。探ってみると、ヒデミさんが出張に行ったその日に、彼女は貧血を起こして駅の階段を転げ落ちてしまったという。
「問い詰めるしかない。帰宅してみると、夫はどこか不安げというか、私の目を見ようとしない。どういうことなのか、何があったのかと聞くと、日頃から親しくしている社内の後輩がケガをして、と言い訳する。『ナナコさんね』と言ったら、夫の目がキョロキョロして。しれっと嘘をつけるタイプじゃないんですよね、悲しいことに」
「離婚しますが、会社は夫をとりますか、私をとりますか」
「病院に行きなさいよ今すぐ、と夫を放り出しました。それから母に連絡して、翌日からしばらく来てもらえないかと相談。次の日、会社に行って上司に洗いざらいぶちまけたんです。そして『3人とも同じ会社でこんなことがあったら、私は仕事をしていけない。私は離婚するけれど、会社は夫をとりますか、私をとりますか』と迫ったんです。私をとるなら、夫には会社を辞めさせてほしい、と。もちろん、冷静に言いましたよ」

夫が今どうしているかはわからない
会社が自分を取るとわかっていたから、彼女は夫に復讐を遂げることができたのだ。その後、ナナコさんは回復。夫と、一回り以上年下のナナコさんは、地方にある彼女の実家へ「落ちのびて」いったが、今はどうしているかわからない。
「夫と親しかった同期によれば、ふたりは別れたようです。夫が東京に戻ってきているという話もありますが、私には連絡がありません」
浮気以上に、どうしても許せなかったこと
「浮気じたいは許せたかもしれないけど、不倫相手のために自分の娘を疎かにしたことが、どうしても許せなかった。連絡さえくれれば対処できたのに……。それさえできないくらい、夫は彼女に入れあげていたということでしょ。抹殺されて当然だと思います」
最後の強烈な一言が印象的だった。そして彼女は、順調に出世の階段を上っている。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio