MEGUMIさん出演兼プロデュースの映画『零落』が公開中。浅野いにおさんのコミックを、竹中直人さんが監督し、斎藤工さんが主演を務める話題作です。

 MEGUMIさん 本作で映画初プロデュースを手掛けたMEGUMIさんに、インタビュー。40代に入ったMEGUMIさんが「35歳くらいから、疲れてないのに『疲れてるんですか?』と言われたり」「普通にしているだけでビビられる」ようになった自分に、心がけている“キャラ設定”を教えてくれました。

打ち合わせで、ディレクターの手がビビッて震えていた

 『零落』より――日本では若い層向けの作品が多いから、プロデューサーとして年配の人が生き生きとしている作品もつくりたいとお話しされていました。外国でも、一時はハリウッドでさえ、40歳になったら女優の仕事はないと言われました。外国の方でも、刺激になった方はいますか?

MEGUMIさん(以下敬称略)「『ノマドランド』は、フランシス・マクドーマンドさんの企画で、チャイニーズのクロエ・ジャオさんが監督を務めましたよね。あれは『わあ、すごい』と思いました。ああした企画を自分で考えて、アジア人の女性監督を選んで実現させたんだと。興奮しました。今年もアジア人のパワーがすごいですが、日本も世界で頑張らないといけないな、私も頑張るぞと思っています」

――ご自身の道を歩まれていて、ご自分でもパワフルだとおっしゃるMEGUMIさんですが、もちろんパワフルなんですけど、実際お会いしてみると、強さだけじゃなく、しなやかさをとても感じます。何か心がけているのでしょうか?

MEGUMI「嬉しいですね。以前、バラエティ番組に出たとき、楽屋で打ち合わせをしていたらディレクターの方の手が震えていたんです。『これはヤバいな』と。普通にしているだけでビビられる年になったのかと

――(笑)。

MEGUMI「35歳くらいからですかね、疲れてないのに『疲れてるんですか?』と言われたり、全然そんなことないのに『機嫌悪いですか?』と取られたり。そこを変えていくのは自分しかないですよね。マネージャーと車で2人の時とかは、もっと激しいですよ。でもこうして人と会ったりするときには、強くなりすぎないように気を付けています」

今の私はメロウなキャラ設定でやってます

 『零落』より――20代の時なら同じパワフルも可愛いと言われていたのに。

MEGUMI「変わってくるんですよ。30代も後半になってくると普通にしてるのに怖がられる。こちらはただ一生懸命やってるだけなのに、『あれ、違うぞ』と。ちょっと毒を吐いただけでも、前は笑われていたものが笑われなかったり。それって得にならないじゃないですか。人も寄ってこないし、一緒に仕事をしたいとも思ってもらえない。自分が損しちゃう。だから今の私はいわば、逆ぶりっ子ですね。メロウな感じで行こうと。メロウなキャラ設定です(笑)

――(笑)。まんまと魅了されました。やっぱり自分を客観的に見るのが大切でしょうか。

MEGUMI「そうですね。常に自分を俯瞰して見たり、身近な人の話をよく聞いたり。受け入れるかは別としても、耳を傾けることは大切にしています。だいたい、言ってくれる人もいなくなってきますからね。自分に何かを言ってくれるというだけで、『この人は面倒くさいことをしてくれているな』と思うし、聞くべきだと思うんです。常に客観的に。ダサいのは嫌ですから。

 特にこうしてプロデュースをやったりしていると、問題が起きたりして、それぞれに色々あると知ると、怒りもしなければ寄り添いもしない感じになるんです。『しょうがないね。じゃあ、次、行きましょう』という筋肉も付いてきたなと思います」



母親ではない自分自身をちゃんと持っていなきゃ、と

――そんなMEGUMIさんでも恐れていることはありますか?

 『零落』よりMEGUMI「息子が離れていくことです。次、中3なんですけど、自分より身長もあるし、ある程度自分の世界ができてきていて、自立心が強いタイプなんです。幼稚園の頃からバイトしたいとか、一人暮らししたいとか言ってましたし。この人がいなくなったら、自分はどうなっちゃうんだろうという恐怖は常にあります。

 世の多くのお母さんがそうしたことを言いますが、その恐怖が現実味を帯びてきた感覚があって、エンディングに差し掛かって来た感じが、去年ぐらいから本当にしています。母親ではない自分自身をちゃんと持っていなきゃと、すごく思っています

叶えたい野心があるから。自分で動いていくしかない

 『零落』より――「母親ではない自分」というお話が出ましたが、50代以降の自分に期待していることを聞かせてください。

MEGUMI「40代のうちにいい作品をめっちゃ作って、海外に行きまくって、50代以降は海外の映画祭でも常連のようになっていたいです。今は、みなさん知り合いで楽しそうにしているところを、私はポツンといる感じで。日本の作品を引っ提げてガンガン出ていきたいです」

――ちなみに英語の勉強は。

MEGUMI「してます。2年前から先生について。それは10日に1回くらいで、あとは書き取りでもリーディングでもなんでも、1日10分でもいいから毎日必ず触れるようにしています」

――すごい! お忙しいのに素晴らしい。

MEGUMI「野心がありますから(笑)。叶えたいことがあるから、叶えるためには自分でやるしかないんです」



30代、40代は大人の思春期

――ありがとうございます。最後に改めて、MEGUMIさんがプロデュースした本作にひと言お願いします。

30代、40代は大人の思春期MEGUMI「今回は男性をフィーチャーしていますが、女性も仕事をしていて30代、40代って、これでいいのかなと大人の思春期に差し掛かる時期だと思うんです。その時期をこの作品は肯定しています。たとえば、その時期に取っ散らかっちゃっちゃっても、変な男に捕まっても、酒を飲み過ぎても、別にいいと。

 100歳まで生きていくこの時代、この時期は次に向かうための大事な時間なので、取っ散らかりながらも、自分に必要なものを淘汰していくという思いを持って、この作品を観ながら『こういう人がいていいんだな』『こういうことがあっていいのね』『オッケー、オッケー』と安心につなげてもらえたら嬉しいです」

(C) 2023 浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会

<撮影・文/望月ふみ ヘアメイク/エノモトマサノリ スタイリスト/大浜瑛里那>

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi