遂に登場した。噂のあの人が。主要人物である4人が、口々に同じ名前を呟いていた。

 木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ(以下同じ) 毎週木曜日よる10時から放送されている『いちばんすきな花』(フジテレビ)は、何気ない日常の些事を描く好作である。そこへちょっとしたスパイスとしてミステリアスに登場する“みどりちゃん”とは?

「イケメンとドラマ」をこよなく愛するコラムニスト・加賀谷健が、第8話を解説する。

“ほとんどシェアハウス”のよくわからない集まり

木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ 特に理由もなく、何だかよくわからないけれど、ある日知り合いになる。それをよくひょんなことからと言う。『いちばんすきな花』の登場人物たちはまさにそんな関係性だ。

 見ず知らずの4人が、偶然か必然か、ひとつの場所に集合する。集合場所の家主・春木椿(松下洸平)の懐の広さもあるだろう。潮ゆくえ(多部未華子)、深雪夜々(今田美桜)、佐藤紅葉(神尾楓珠)が憩いの場とする。

 ほとんどシェアハウスに近い。紅葉はたまに泊まったりするが、かといって、完全なる共同生活ではない。グループ名があるわけでも、集まり自体に会合名がついているわけでもない。そう考えると、よくわからない集まりだなと思う。

みどりちゃんなる人物の登場

木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ するとある晩、椿が突然、家を売ると言い出した。買い手は前の住人。自分たちの憩いの場を奪おうとするその人物とは、いったい何者なんだと考えているうち、4人には共通の人物が浮かぶ。

 美しい鳥と書いて、みどりちゃん。確かに珍しい読み方である。この珍しさから、彼らは同姓同名のこの人物が、実は共通の知り合いなのではないかと推測していく。

 それはすぐに確信に変わるのだが、単なる偶然にしては、いくらなんでもでき過ぎではないだろうか。これまたひょんなことだなと思う。



「みんなのみどちゃん」会

木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ 第7話ラストで、キャリーケースを引いてホテルの部屋に入ってくる志木美鳥(田中麗奈)が映る。すると第8話冒頭、美鳥が共通の知り合いであることは確かだけれど、だからといって5人で会うのは違うのではないかと議論になる。

 やっぱりひとまずは2人ずつでよかったと美鳥も納得する。

 すると夜々がこんな表現を。「みんなのみどちゃん」。なるほど、そうか。椿の家をシェアする4人が、今度は美鳥を共有する。だから、グループ名は、「みんなのみどちゃん」会でどうだろう?

 

ポストコロナを生きる新しい結びつき

木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ 近年、シェアハウス物は、テレビドラマのトレンドになっている。おそらくは、コロナ禍で物理的な交流が制限されていたことの反動ではないかと筆者は考えている。

 とはいえあまりにも製作本数が多くはないか。個人的には金子ありさ脚本で川口春奈と横浜流星が共演した『着飾る恋には理由があって』(2021年)を頂点として、同ジャンルは飽和状態になった気がしている。

『いちばんすきな花』では、シェアハウスすれすれのところで、登場人物たちの交流を描くというクリティカルな視点が導入された。しかも椿が引っ越しを決断することでシェアハウスが事実上、見事に回避されてもいる。「やれシェアハウスだ!」に対する明らかなアンチテーゼだろう。

 椿の家にこれ以上集まれないとなると、4人の集まりをこの先どう描くのか。そこで謎が多い美鳥が満を持して登場し、彼らのシェアが継続される。これは言わば、ポストコロナを生きる者たちの新しい結びつきなのではないだろうか。



過去をシェアする再会

木曜劇場『いちばんすきな花』8話より© フジテレビ では、このみんなのみどちゃん会では、具体的にどのような結びつきとなるのか。ゆくえと会った美鳥は、次に椿の家に突撃訪問する。

 同級生だった中学生時代が回想され、玄関で美鳥を見送るとき、椿の「いつか帰りたい家を持てるようにと願うしかなかった」というモノローグが豊かな余韻となる。荒れた中学時代の彼女を知るからこその椿の優しさが滲む。

 美鳥は夜々に手料理を作る。一口食べた夜々が「これだ」 とご満悦。夜々は、美鳥に将棋を教えてもらった幼少期を回想する。この将棋、美鳥は椿に手ほどきを受けている。椿との記憶を経由した夜々との過去なのだ。

 美鳥の人間関係が、過去と現在の間でうまくリンクする。そして最後に会うのが、4人の中では唯一彼女を探し、そこまで親しい関係性ではないと内心不安な紅葉だ。こうして過去をシェアするように再会を果たす美鳥の存在が、クライマックスへのどのような橋渡しとなるのか。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu