これは、大型新人の登場か。映画でもドラマでも、然るべき新人がデビューを飾る瞬間は、鮮やかな物々しさがある。

 NHK『正直不動産2』公式サイトより 毎週火曜日よる10時から放送されている『正直不動産2』(NHK総合)第5話で、山下智久扮する主人公の中学生時代を演じたのが、話題の新人俳優・高野陽向だ。

 イケメン俳優の探求をライフワークとする“イケメンサーチャー”こと、コラムニストの加賀谷健が、SNS世代のこの大型新人に期待を寄せながら、堂々たる初舞台の演技を読み解く。

千葉雄大や高橋文哉以来にビビッと

 だてにイケメンサーチを続けていないだけはあるのかもしれない。所属事務所の大小に関わらず、ある若手俳優をひと目見たとき、(博打みたいに明確ではないけれど)売れるか売れないかはだいたい見当がつくようになる。

 それがデビューまもない相手ならなおさらのこと。原石ではあっても、モノになるかはもちろんまた別の話。筆者の場合、ときに映像作品のキャスティングに関わることもあるので、慎重に見極める必要もある。

 然るべき才能は不意にやってくるものでもある。それが今回久しぶりにきた。ときめきとワクワクのセンサーが、強烈にビビッと。たぶん千葉雄大や高橋文哉以来に反応したんじゃないかと思う。

演じる上での方向性はふたつ



 その人の名は、高野陽向。ぽかぽか暖かい響き。なるほど、ドラマデビューの瞬間も画面内の温度は自然とぽかぽかに感じられる。高野が演じたのが、『正直不動産2』の主人公・永瀬財地(山下智久)の中学生時代。

 所属事務所の宣材写真を見てまず驚く。少年時代の山下の面影を包み込む柔らかな印象。それだけに山Pの子役的に振る舞わなければならない回想場面のハードルは高い。本格的な演技も初挑戦だったというから、これはある程度の戦略が必要。それで中学生時代を演じる上での方向性はふたつ考えられる。

 ひとつは、過去作を参照しながら少年時代の山下を彷彿させるビジュアルに寄せる方法。もうひとつは、あまり神経質にビジュアライズすることなく、発声や声のトーンで表現すること。彼はどちらを選んで演じたか。



現在の山下の真骨頂を再現



 第5話冒頭の回想場面を見てみる。足が一番遅いのにリレーの選手になってしまった梅村。「おい、誰だよ悪口言ってんの」というはつらつとした財地(高野陽向)の一声に、クラス全員が注目する。歩み出た彼はまるで正義のヒーローのように彼女をかばう。正直すぎるが故に潔く、カッコいい。

 嘘八百でトップセールを誇っていたものの、人知を超えた力によって正直営業に様変わりした財地だったが、もともとが正直者だったのだ。悪戦苦闘しながらもいつしか正直スタイルが板についてくる。

 この変化をとにかく軽妙に演じる山下にとって、これは紛れもない新境地だった。クールなイメージが強い山Pがうわずった声であえてクールなトーンをおさえる。

 これが絶妙にコミカルなスタイルの演技になっているのだが、高野もまたこのトーンを再現することに心血を注ぐ。腹に重心を置いて台詞の一字一句をハキハキ発しながら、ぶれないトーンを保つ。

 必ずしも山下の若い頃に似ているとか寄せるとかでなく、むしろ現在の山下の真骨頂を再現することに徹したことに勝算があったんじゃないだろうか。

納得のサイレント出演

 高野のドラマデビューは本作だが、演技初挑戦は麗奈のアルバム『君とあなたと私と僕と、情熱と』の1stトラック「小さな恋」のミュージックビデオ出演ということになるのだろう。同作では韓国のインフルエンサーであるらんの相手役として肺病を患う男性に扮している。

 病をおして気持ちを伝え合う若い恋人たちのストーリーは、全編サイレントだが、その分、高野は、表情で勝負しようとする。アコースティックギターのストロークの上下に合わせて、初々しくも生命力あふれる。高野の横顔が特に印象的。

 声なくして表情だけでキャラクターの性格まで伝える。声がさらに吹き込まれたら、どうなっていたか。サイレントではない『正直不動産2』で、声の演技に意識的だったことはこれで納得だ。



SNS世代の大型新人・高野陽向

@xnyzq__

♬ REBEL DC BY CJAGENA – ig: cjagena


 そもそも高野が最初に話題になったのは、TikTok上でのこと。友人の撮影によるハンバーガーをほお張る何気ない姿が、たちまち100万回再生を記録したのだ。

 そっか、ハンバーガーか。『オーシャンズ11』(2001年)のブラッド・ピットや『雪の花』(2019年)のØMI(登坂広臣)など、個人的にはハンバーガーを食べる姿が様になる俳優を偏愛してしまう。これでハンバーガー俳優コレクションが、またひとつ増えたわけで……。

 ともあれ、この動画がバズったことをきっかけに事務所所属も決まったというから、映画も音楽も今はSNSからチャンスをつかむことはごく当たり前の風景となっている。現在19歳。SNS世代の大型新人に、イケメンサーチンの筆頭タグをつけておきたい。

<取材・文/加賀谷健>

【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu