近年、役者としてますます存在感を放つKing & Princeの髙橋海人。2023年4月に放送されたドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)ではお笑いコンビ・オードリーの若林正恭役を演じ、その高い演技力が評価されて「第116回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 主演男優賞」を受賞した。乗りに乗っている髙橋は、4月から放送されているドラマプレミア23『95(キュウゴー)』(テレ東、月曜よる11時6分〜)でも主演を務めている。

 早見和真『95』(KADOKAWA/角川書店) 本作は早見和真氏の小説『95』(KADOKAWA/角川書店)を原作とした青春群像劇。1995年を舞台に、髙橋演じる広重秋久(Q)が中川大志演じる鈴木翔太郎(翔)を始めとした仲間達とともに“ダサい大人”にならないために奔走する姿が描かれている。

 1995年の雰囲気を見事に表現しており、昔を懐かしむ視聴者が多いが、とりわけキャスティングの上手さを挙げる声もSNSで目立つ。そこで本作のプロデューサーを務める倉地雄大氏にキャスティングの背景など話を聞く。

元々はもっと短い30分ドラマの予定だった

 まず本作は「テレビ東京開局60周年連続ドラマ」として放送されているが、なぜ小説『95』を「テレビ東京開局60周年連続ドラマ」に選んだのか。倉地氏は「3年くらい前に小説『95』を読んでとても感銘を受け、そこで『ドラマ化したい』という気持ちが芽生えました」と説明を始める。

 ドラマ『95』のプロデューサーを務める倉地雄大さん「当時はコロナ禍でしたので、見えない不安感や閉塞感が世の中に充満していました。そういう時代だからこそ、葛藤を掲げながらも今しかない一瞬を懸命に生きるQや翔の姿は、視聴者に新鮮かつ痛快に感じてもらえると思い、ドラマ化を進めていました。

 当初は『テレビ東京開局60周年連続ドラマ』ではなく、30分の深夜ドラマとして制作する予定でした。ただ、髙橋さんや中川さん、松本さんなどからオファーを引き受けてもらい、徐々にキャスト陣が豪華になっていきました。その中で、30分の深夜ドラマではなく、時間帯を上げ、放送時間を伸ばし、『テレビ東京開局60周年連続ドラマ』にしようという方向に変わっていったんです」

ドラマ『だが、情熱はある』にインスパイアされた?

 次にキャスティングについて聞く。「Qは髙橋以外ありえない」とさえ思わせる絶妙なキャスティングだったが、なぜQ役として髙橋にオファーしたのか。

「King & Princeさんと仕事をしたことがなかったのですが、グループのお仕事を拝見していたり、『ドラゴン桜 第2シリーズ』(TBS系)での演技が素晴らしく、『髙橋さんと仕事をしたい』という思いは常々を持っていました

 また、Q役は髙橋さんが適任とも感じており、社内でいろいろ相談したところ『オファーするのはタダだからするだけしてみれば?』と背中を押してもらいオファーしました。先述した通り、ドラマ化の構想は数年前からあり、時間的に余裕があったことも幸いして快く引き受けてもらいました」

 ところで『だが、情熱はある』の若林とQを重ね、「『だが、情熱はある』での髙橋の演技を見てQ役でオファーしたのでは?」と考えている視聴者も少なくないようだ。ただ、倉地氏は「『だが、情熱はある』が放送開始した時にはすでに決まっていました」とその“疑惑”を否定した。



高校生役に、20〜30代まで幅広く起用した理由

 髙橋に続き、中川とも初絡み。

「幾度となく中川さんの作品を見てきましたが、とにかく演技が圧倒的に上手い。安心感や信頼感はもともと高く、そのうえで『髙橋さんと横並びになった時の雰囲気が一番フィットするのは誰か』と考えた時に中川さんの姿が浮かびました」



 続けて、「丸山浩一(マルコ)役の細田佳央太さんも、先ほどの話に出た『ドラゴン桜 2シリーズ』での演技がとても良く、映画『町田くんの世界』などの演技も好きで、髙橋さん同様に『仕事をしてみたい』という思いが背景にありました」と他のメインキャストについても理由を説明。

「堺怜王(レオ)役の犬飼貴丈さんは2023年にドラマ『なれの果ての僕ら』(テレ東)で一緒に仕事をして、その時圧倒的な演技の上手さを感じました。また、犬飼さんは現在29歳ですが、それでも『高校の制服を着ている違和感を演技力で越えられる人だな』と思ってオファーしました」

「メンディーみたいな人はメンディーしかいない」

 とはいえ、新川道永(ドヨン)役の関口メンディーは現在33歳。いよいよ高校生役には無理があるように感じるが、なぜ白羽の矢が立ったのだろうか。

「もともと監督の城定秀夫さんと『ドヨンはメンディーさんみたいなガタイの良い人にお願いしたい』と話していました。というのも、最近の役者さんは背が高くスラッとした方が多い気がします。5人が並んで立ったときに、似通ったビジュアルの人たちばかりになってしまうことにもったいなさを覚えていました。

 そして、城定さんと話し合ったところ『メンディーさんみたいな人はメンディーさんしかいないよね』ということになり、メンディーさんにオファーしました。本作は1995年を舞台にしており、ある種フィクションとして視聴できます。30代前半のメンディーさんが高校生役でも問題ないと考えました」





主役を張ってもおかしくない、豪華な脇役たち

 また、Qが所属するチームの5人だけではなく、安田顕や斉藤由貴など脇を固める役者もとても豪華。主役を張ってもおかしくない役者を多く起用できた背景として、倉地氏は「斉藤さんを始め『台本が面白い』と言ってくれる役者さんは多く、そこが決め手になったと思います。また、『テレビ東京開局60周年連続ドラマ』ということもダメ押しになった部分があるのかもしれません」と語った。

 はまり役の役者ばかりが登場するため、年齢などは一切気になることはなく自然と楽しめるのかもしれない。

<取材・文&人物写真/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki