ハンガリー・ブタペスト近郊のハンガロリンクで開催されたF1第11戦ハンガリーGPの決勝は大波乱となった。そのレースを制したのは、アルピーヌのエステバン・オコンだった。

 金曜日、土曜日と晴天に恵まれたレース週末だったが、日曜日の決勝レース前には徐々に雨がサーキットへ落ち始め、その雨は次第に強くなっていった。コースはウエット宣言が出され、グランドスタンドに詰めかけたF1ファンたちもレインコートを着始めた。全ドライバーがスタートタイヤとして選択したのはインターミディエイトタイヤだったが、スタート時刻には雨も弱まった。

 トップ勢は、スターティンググリッド最前列にメルセデス勢、2列目にレッドブル・ホンダ勢が並ぶ構図。中団グループの先頭はアルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーで、チームメイトの角田裕毅は16番手から出走した。

 70周の決勝レース1周のホールショットを奪ったのは、ハミルトン。しかし蹴り出しが悪かったメルセデスのバルテリ・ボッタスはターン1で止まりきれず、マクラーレンのランド・ノリスに追突。玉突き的にレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンやセルジオ・ペレスに巻き込む多重クラッシュとなった。

 このターン1では、さらにアストンマーチンのランス・ストロールが原因となった多重クラッシュも発生。結局1周目でボッタスやペレス、ノリス、フェラーリのシャルル・ルクレール、そしてストロールと、一気に5台が姿を消した。フェルスタッペンは右側のバージボードやフロアに大きなダメージを負い、13番手に後退してしまった。

 コース上にはデブリが散乱し、レースは赤旗中断。ダメージを負ったマシンのチームは、この機会に破損箇所の修復に追われることになった。赤旗中断時のトップはハミルトン。2番手には予選8番手のオコンが浮上し、3番手にはアストンマーチンのセバスチャン・ベッテルがつけた。また混乱をくぐり抜けたフェラーリのカルロス・サインツJr.がその後ろ4番手、角田も5番手にジャンプアップしてみせた。

 レースが再開される頃には雨も去り、雲の切れ目からは日差しが覗き始めた。コース上も急速にドライ路面へと変化していった。

 スタンディングスタートでのレース再開に向け、各車はインターミディエイトタイヤでコースイン。しかし、ドライタイヤで走れると判断したほとんどのマシンが、グリッドに向かわずピットへと飛び込む。結局、グリッドに並んだのは、ハミルトン1台のみ。彼のみシグナルに応じてスタートを切るという、異様な光景が映し出された。他のマシンはミディアムタイヤへ履き替え、ピットから続々と飛び出していった。ハースのニキータ・マゼピンは、ピットストップを終えたアルファロメオのキミ・ライコネンと接触し、右フロントサスペンションを破損。6台目のリタイヤとなった。

 インターミディエイトタイヤを履いたままだったハミルトンは、1周遅れてピットイン。これで最後尾へと脱落してしまう。その結果、レースをリードするのはオコン、ベッテルがそれに続いた。ウイリアムズのニコラス・ラティフィが3番手だ。角田はその後方4番手につけるが、ラティフィのペースに付き合わされる形となり、オコンとベッテルはどんどん逃げていく展開となった。

 ピットストップのタイミングが遅れたハミルトンと手負いのフェルスタッペンは後方から追い上げるレースとなった。ハミルトンは20周目でピットへ飛び込み、新品のハードタイヤへチェンジ。1周遅れてピットへ入ったフェルスタッペンをアンダーカットしてみせた。マシンのダメージによってペースの上がらないフェルスタッペンとは対象的に、ハミルトンはハイペースで飛ばし、順位を徐々に上げていく。32周目にはハードタイヤに履き替え、ペースの上がらない角田を抜いて5番手に浮上した。

 37周目には2番手を走っていたベッテルがピットインし、ハードタイヤに履き替えた。オコンをアンダーカットする戦略に出たのだ。そのオコンも翌38周目にピットへ。コースに復帰した時にはオコンが前! アウトラップではベッテル猛プッシュをかけるが、これをを抑えてトップを死守した。

 フェルスタッペンは41周目に2度目のピットストップを行ない、ミディアムタイヤに交換。ハミルトンもリヤタイヤに苦戦し、48周目にミディアムタイヤへスイッチした。ハミルトンはこの時5番手。首位奪還を狙うハミルトンは、トップのオコンよりも4秒速い1分18秒台という猛烈なペースで追撃を開始した。

 ただ、そのハミルトンの前に立ち塞がったのはアルピーヌのフェルナンド・アロンソだった。4番手と走っていたアロンソは、前を行く同郷のサインツにプレッシャーをかけながら、圧倒的にペースの速いハミルトンを8周に渡って抑え込んだ。しかし最終的にはいかんともしがたく、ハミルトンが先行。ハミルトンは残り4周でサインツJr.も抜き、表彰台圏内まで挽回してみせた。

 ただハミルトンは、アロンソに抑え込まれたのが痛手となり、追撃もここまで。結局オコンがF1初優勝のトップチェッカーを受けることになった。この勝利は、チームの名称がアルピーヌと変わってから、初めての優勝ということにもなった。

 2位には今シーズン2度目の表彰台を獲得したベッテル。3位には最後尾から表彰台まで這い上がってみせたハミルトンが入った。4位にはサインツJr.、ハミルトン相手に健闘したアロンソが5位となった。

 その後ろにはアルファタウリ・ホンダ勢が並んだ。ガスリーは、序盤のクラッシュの煽りを受けて後方に下がってしまったが、そこから追い上げ6位フィニッシュ。49周目にはペースの上がらないチームメイトの角田と、ターン1でポジションを入れ替えるシーンもあった。さらにレース終盤にはピットストップを行ない、ソフトタイヤを装着。ファストテストラップを記録して追加の1ポイントを獲得することになった。

 レース序盤には一時4番手まで浮上した角田は、終始ペースが上がらず。結局ガスリーの後ろ7位でチェッカー。とはいえ自信最高位タイであると共に、前戦に続く2戦連続入賞となった。

 8位、9位にはウイリアムズが入り、久々のダブル入賞。ラティフィはF1初入賞、ラッセルも念願のウイリアムズでの初ポイントを手にした。フェルスタッペンは61周目でようやくマクラーレンのダニエル・リカルドを抜いたが、これが手負いのマシンでは精一杯。わずか1ポイント獲得にとどまった。

 今回のレースの結果、ドライバーズランキングではハミルトンが首位に返り咲き。2番手のフェルスタッペンとの差を6点とした。コンストラクターズランキングでも、メルセデスがレッドブル・ホンダを抜きトップへ躍り出た。

 2021年シーズンも、今回のハンガリーGPで折り返し。F1チームはここからファクトリーの閉鎖期間を含めた”夏休み”に入る。F1ファンにとっては週末が少々寂しくなるだろうが、多忙に多忙を極めるF1チームスタッフにとっては待ちに待った休暇だろう。今回の結果を受け、好調を維持したいチーム、巻き返したいチームが夏休み明けにどう出るか? 今シーズンの後半戦もF1から目が離せそうもない。