F1第10戦イギリスGPの決勝レースが行なわれ、カルロス・サインツJr.(フェラーリ)が優勝した。

 今年もF1が、伝統と歴史が織りなす”発祥の地”イギリスGPに帰ってきた。舞台となるシルバーストンは、高速コーナーが連続する中高速のサーキットだ。

 週末を通じて不安定な天候が続いており、その”ブリティッシュウェザー”が予選でも襲来した。路面コンディションが安定しない中、サインツJr.がアタックをまとめ上げ、自身初のポールポジションを獲得し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)を退けた。

 決勝レースが行なわれる日曜日もサーキット上空には厚い雲が覆っているという状況。気温17度、路面温度は28度だった。

 スタートタイヤの選択はドライバーにより大きく分かれ、サインツJr.がミディアムタイヤを選んだ一方で、フロントロウに並ぶフェルスタッペンはソフトタイヤを選択した。その後ろでは大半がミディアムタイヤを選択した一方で、8番手のジョージ・ラッセル(メルセデス)がハードタイヤ、10番手のニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がソフトタイヤを選んだ。

 全52周の決勝レースに向けて幕が切って落とされると、フェルスタッペンがソフトタイヤのトラクションの良さを活かし抜群のスタートを決め、ホールショットを奪取。3番手にはルイス・ハミルトン(メルセデス)が浮上した。

 しかし、後方では激しい多重クラッシュが発生した。スタート直後、周冠宇(アルファロメオ)とジョージ・ラッセル(メルセデス)の間を抜けようとしたピエール・ガスリー(アルファタウリ)がサンドイッチ状態となり、ガスリーの右フロントがラッセルの左リヤにヒット。ラッセルはスピン状態となり周のマシン右側に接触した。周のマシンは接触によりひっくり返り、そのまま減速することなくアビー(ターン1)へ向け滑走……グラベルトラップでマシンは浮き上がり、その奥のタイヤバリアを飛び越えた。

 一方セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)は、前方のクラッシュに対して減速していたアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)に追突。コントロールを失ったアルボンのマシンはコースを横切り、角田裕毅(アルファタウリ)が止まりきれず接触し、エステバン・オコン(アルピーヌ)もアルボンのマシンを避けきれず右フロントサスペンションを破損した。

 激しいクラッシュだったものの、幸いドライバーは無事。周はメディカルセンターに運ばれたものの、意識は問題なく怪我もないとのことで、アルボンは念の為地元の病院へ運ばれた。また、ラッセルもここでリタイアとなった。

 このクラッシュにより赤旗でレース中断マシン回収とバリアの修復が行なわれた。ダメージを負いながらピットレーンに戻れたマシンにもメカニックが修理作業を行なった。

 1時間程度の中断を経て、決勝レースは一から仕切り直し。クラッシュによりリタイアとなったドライバーを除き、各車がレーススタート前のオーダーでグリッドに並び、リスタートすることになった。

 最初のスタートでソフトタイヤを履いたフェルスタッペンはミディアムタイヤに履き替え、後方ではアルファタウリ勢らがソフトタイヤに切り換えた。

 スタンディングスタートで3周目からレース再開。ここではサインツJr.がフェルスタッペンを厳しく抑え込みトップを維持。フェルスタッペンには、ペレスを接触しながら抜いていったシャルル・ルクレール(フェラーリ)が迫った。

 ペレスはフロントウイング翼端板を破損したことが影響しているのかトップ3から遅れ、5周目終わりにピットイン。フロントウイングの交換により、最後尾にまで転落した。

 首位争いに目線を戻すと、レース8周目でサインツJr.にフェルスタッペンが1秒圏内でロックオン。サインツJr.は9周目のベケッツ(ターン13)で大きく膨らみコースオフを喫し、フェルスタッペンに首位を明け渡した。

 しかし、サインツJr.がレース12周目にフェルスタッペンを悠々と抜き返していく。パンクを訴えたフェルスタッペンが速度を落としたのだ。ピットへ飛び込み新品のミディアムタイヤに履き替えたフェルスタッペンだが、問題はタイヤではなく、フロアにダメージを負って空力バランスが悪化してしまったようだ。フェルスタッペンは、6番手復帰後もペースが伸び悩んだ。

 レッドブルの2台が後方に落ちたことで、フェラーリが1−2体制に。3番手に上がってきたハミルトンがファステストラップを記録しながら2台を追った。

 ハミルトンは4秒あった差を徐々に詰め、ルクレールは1秒圏内の首位サインツJr.との順位を入れ替えるようチームに訴えたが、チームオーダーはなし。チームは、サインツJr.をレース20周目の終わりにピットへ呼び込み、新品のハードタイヤを履かせて3番手でコースに送り出した。

 これによりルクレールがトップに立ったもののペースは上がっていかず、猛追するハミルトンに迫られたルクレールは25周目の終わりにピットイン。ルクレールはサインツJr.のすぐ後ろ3番手で戻り、再びチームに順位の入れ替えを訴えた。

 レースをリードするハミルトンはステイアウトを選択。ハミルトンとフェラーリ勢のギャップはピットロスタイムの19秒ギリギリで、フェラーリは十分なタイムを刻めなかったサインツJr.に対してルクレールに順位を明け渡すよう指示が下り、サインツJr.はルクレールを先行させた。

 ハミルトンは34周目の終わりにピットイン。ピット作業に少し時間がかかったこともあり、フェラーリ勢の後ろ3番手でコースに復帰したハミルトンは、ルクレールから8周、サインツJr.から13周若いハードタイヤで2台を追った。

 ルクレールとハミルトンが1分31秒台で周回するのに対しサインツJr.は1分32秒台のラップタイム。ルクレールから離され始めたサインツJr.にハミルトンがにじり寄った。

 ただ後方では手負いのフェルスタッペンを抜き8番手に上がっていたオコンにマシントラブルが発生。ターン8の立ち上がりでマシンがストップしたことで40周目にセーフティカー(SC)が出動した。

 後方との差が十分ではなかったことから、首位のルクレールはステイアウトを選択せざるを得ず、2番手サインツJr.と3番手ハミルトン、序盤の接触から4番手に上がってきていたペレスがピットイン、順位を失うことなく新品のソフトタイヤに履き替えた。

 残り10周でレースは再開。サインツJr.がルクレールをルフィード(ターン7)で仕留め、後続を引き離す。ペレスはハミルトンをターン4で抜き3番手に上がりルクレールに迫るも、ハミルトンが食らいついて離れない。

 ペレスはシケインでルクレールを狙うも抜ききれず、その2台の隙を突いたハミルトンが2番手に浮上。しかしペレスも諦めず、翌周のターン3でインを刺し2番手をハミルトンから奪還した。

 ルクレールは勢いを失ったハミルトンを抜き、ペースで勝るハミルトンに対して激しいディフェンスを見せるも、必至の抵抗虚しく48周目のハンガーストレートで3番手の座を明け渡した。

 首位サインツJr.は2番手ペレスに4秒近いギャップで、ファイナルラップに突入。そのままトップでチェッカーを受け、参戦150レース目にしてF1初優勝を遂げた。結果としてポール・トゥ・ウィンとなったが、壮絶なレースを戦い抜き掴んだ1勝目に。アロンソがフェラーリ時代に優勝した2013年スペインGP以来初めて、スペイン国歌が表彰式で鳴り響いた。

 2位はペレス。序盤の接触により最後尾に沈みながらも、SCを活かして最後は優勝争いにまで戻ってきて見せた。

 3位には”王者復活”とも言える力強い走りで今季3度目の表彰台を獲得したハミルトン。ルクレールは最終盤アロンソに迫られるも4位でフィニッシュしたが、その表情は曇っていた。

 5位にアロンソ、6位にノリス。ミック・シューマッハ(ハース)は、手負いのフェルスタッペンを抜ききれなかったものの8位でチェッカーを受け、F1初ポイントを手にした。

 9位にベッテル、10位でケビン・マグヌッセン(ハース)が1ポイントを掴み、ハースはダブル入賞となった。

 アルファタウリの角田は14位。ガスリーはリヤウイングの破損によりリタイアとなった。

 アルファタウリ勢はレースリスタートでソフトタイヤを活かし7番手、8番手に上がったが、チーム内バトルを繰り広げる中で、ガスリーを再び抜き返そうとした角田がスピンを喫し接触。同士討ちで順位を大きく下げた。角田はガスリーとの接触により5秒のタイムペナルティーが科された。

 角田はピットストップ後もペースが上がらず、完走したドライバーの中では最下位という結果になった。