F1第8戦スペインGPで、フェラーリはメジャーアップデートを導入。これによってサイドポンツーンが一新された。

 フェラーリは2022年から、サイドポンツーン上面内側に気流を通すインウォッシュ型のデザインを採用。その見た目から、バスタブとも呼ばれた。

 一方、ライバルのレッドブルはサイドポンツーンの上面が後方に向けて傾き、ディフューザー上に気流を導くダウンウォッシュ型のデザインで圧倒的なパフォーマンスを発揮。多くのチームがこれに追随する形となった。前戦モナコGPでは、メルセデスがアップデートによりサイドポンツーンを大きく変え、ダウンウォッシュ型に変更している。

 そしてスペインGPでフェラーリが導入したアップデートも、側面から見るとサイドポンツーン上面が平坦になり後方に傾斜しており、ダウンウォッシュ型になったように見える。

 フェラーリがレッドブルが2022年からやってきたアイデアを取り入れたというのは確かだが、そこにはフェラーリ独自のDNAが多量に含まれている。

 バスタブと呼ぶには少々狭くなりすぎてしまったが、サイドポンツーン内側には溝が残っているのだ。S字型のシャシーダクトも残っており、アンダーカット部分に設けられた開口部から入った空気がダクトを通り、この溝に流し込まれている。

 アンダーカット部分のえぐりこみは以前のデザインよりきつくなっている。シェルのロゴがある部分は膨らんでいるが、これはSIS(側面衝撃吸収構造)によるものだろう。この膨らみの分だけサイドポンツーンが小さくなったと言える。

細かい空力パーツも搭載

 サイドポンツーンのショルダー部分は低くなり、こうした変更に合わせてミラーにも調整が施されている。ミラーを覆う上側のスラットは、旧型のように端まで伸びるのではなく下側のスラットと同じような長さまで短く変更されている。

 細かい空力パーツに着目すると、新たに小さなウイングレットが追加(写真の青矢印)。ハロの後方からエアボックス領域をつなぐブリッジウイング(写真の白矢印)にも大きな変更が加えられていることにも注目する必要があるだろう。

 以前はハロの後方に水平なウイングレットが搭載されていたが、これがエアボックス脇のウイングレットとつながるように延長されているのだ。これらはエンジンカバーに向けての気流を整えるために活用されているだろう。

フロアにもアップデート

 ここまでを見ると、この新しいサイドポンツーンはダウンウォッシュ型とインウォッシュ型のいいとこ取りを目指したようなデザインにも見える。

 サイドポンツーンの形状変更により、排熱のアプローチにも変化があった。以前はバスタブ内部に多くのルーバーが設けられていたが、新しいデザインではエンジンカバー後方に開けられたルーバーがより大きな責任を担うことになるはずだ。

 S字ダクトの出口にも、小さな冷却ルーバーがふたつ開けられている。とはいえ、このあたりはサーキットによって調整がされるだろう。

 スペインGPでのアップデートはサイドポンツーン周辺だけではなく、フロアにもいくつか手が加えられている。

 アウターフロアフェンスは旧型(下写真白円内)から形状が変更され、段がひとつ設けられた。ここで生まれる渦流はフロア上面を流れる気流のコントロールに役立てられているはずだ。

 エッジウイングも刷新されている。その前方にはフロアがめくれ上がっている部分があり、アンダーフロアからの気流を誘導するためのベーンがふたつ付けられている。

 一方フロアの後方では、エッジウイングとリヤタイヤ前の領域が不連続になっている。これは、リヤタイヤが引き起こす乱流に影響を及ぼし、損失を低減することを目的としている。