今シーズンから、ハルターマン・カーレス社製の、化石燃料を一切使用しないバイオマス由来のカーボンニュートラルフューエル(CNF)を使用しているスーパーGT。GT500クラスでは開幕から全車での導入がスタートしている一方、GT300クラスでは投入が延期されていたが、プロモーターのGTアソシエイション(GTA)は定例会見の中でGT300クラスでの今シーズン中の導入を見送ると明らかにした。

 スーパーGTは2023年シーズンからのCNF導入に向け、国内メーカーだけでなく、GT300クラスのGT3車両を供給する海外メーカーにもCNFを送ってベンチテストを実施するなど、着々と準備を進めてきた。ベンチテストの結果、使用に問題はないという回答があったことから実車でのテストにステップアップしていった。

 ただ実際に走らせたことで、CNFのガソリンとは異なる性質へ対応することが容易ではない、ということがより顕著に見えるようになった。既報の通り、CNFの特徴はガソリンと比べて揮発性が低いという点がある。その特徴から、燃え切らなかった燃料が揮発せずにエンジンオイルに混ざって不具合を誘発する「オイルダイリューション」や、エンジンの始動性の悪さなどに繋がっているとエントラントは明らかにしていた。

 ホンダ、トヨタ、ニッサンの3メーカーが技術開発を行なうGT500クラスに関しては、各メーカーが開発を進めることで使用に問題ないレベルまで適合を進めることができているが、多種多様なメーカー、車種が参画するGT300クラスは一筋縄ではいかない。特にターボ車、そしてGT3車両を使うチームが苦戦しているようだ。「カスタマーサービス」の枠組みでGT300に参画しているGT3車両メーカーからは、「CNFを改良できないか」という声も挙がりはじめているとGTAの坂東正明代表は語る。

 未来に向けた環境対策として自動車業界全体にとって重要な意味を持つCNFの導入に関しては、中止するのではなく、引き続き導入に向けて前向きに取り組んでいきたいという声は各エントラントでも一致しているという。ただGTAは、多種多様な車種を構えるGT300クラスの全車に適合できる燃料を模索していくために、今季は同クラスでの導入を見送り、来季の導入を目指すとした。

 坂東代表は会見の中で次のように語った。

「GT300クラスに関しては、実車に投入する中でGT3メーカーから『カスタマーサービスとしては、燃料を改良して欲しい』という言葉が出つつあります。各チームからは(導入を)やめるのではなく、前向きにやっていただいていますが、今季は保留とし、来季からGT300で使用できる燃料を作り上げたいと思っています」

「現状、GT500に関しては引き続きCNFを使用していきますが、GT300は難しい部分が出ているので、新たに作れるものを吟味するということで、今季の導入を見送ることにしました」