アルファタウリの角田裕毅は、F1スペインGPの決勝レースを9番手でフィニッシュ。しかしレース中に周冠宇(アルファロメオ)をコース外に押し出したとして5秒のタイム加算ペナルティを科され、12位に降格することになってしまった。

 ペナルティを科されたのは実に残念だったが、角田のレース中のペースは、実に優れたモノだった。

 角田は予選で11番手タイムを記録したものの、トラックリミット違反によるタイム抹消を受け15番グリッドからレースをスタートすることになった。すると1周目に12番手、3周目には11番手、7周目には10番手と、着実にポジションを上げていった。

 そして10周目に早々とピットインしてタイヤを交換したことが功を奏し、さらにポジションアップ。その後は終始入賞圏内を走った。

 角田がポジションを上げた理由は、戦略が優れていただけではない。角田自身のペースも実に優れており、十分に入賞に値する走りだったと言える。レースペースの推移を見れば、それがよく分かる。

■オコンやアロンソと遜色なし!

 グラフの濃紺の折れ線が、角田のレースペース推移を示したモノだ。これを見ると、レース中を通じてピンク色の折れ線とほとんど重なるようにペースが推移していっているのが分かる。このピンク色の折れ線は、アルピーヌのエステバン・オコンである。

 オコンと言えば、前戦モナコで3位表彰台に入ったドライバー。そのオコンをレース中に追いかけ、最後は1.2秒差でチェッカーを受けたのだ。

 今季のアルピーヌは、開幕直後こそトラブルが相次ぐなどして好成績は残せなかったものの、そのパフォーマンスはうなぎ上り。アストンマーチンやメルセデス、フェラーリに近い戦闘力を発揮しつつあった。今回の角田は、そのアルピーヌと互角にわたりあったのだ。

 また緑色の線とも、レース終盤までは同じような折れ線を描いているのが分かる。この緑色の線こそ、アストンマーチンのフェルナンド・アロンソである。最終スティントこそ、ピットストップのタイミングが異なったためアロンソが圧倒的に速いが、それまでのペースは角田とあまり変わらないモノだった。

 つまりスペインGPの決勝で角田は、今季表彰台常連のアロンソや前戦表彰台のオコンと、同じような戦闘力を持っていたということ。当然、前戦モナコGPと今回のレースで投入されたアップデートの効果もあっただろう。

 シーズン開幕序盤は、パフォーマンス面で大いに苦しんだアルファタウリ。しかしここに来て確実に上昇している感がある。そして、角田は常に高いパフォーマンスを発揮……今回は入賞こそ叶わなかったが、今後に向けて大いに期待が持てる1戦だったと言えるだろう。