2023年のル・マン24時間レースは序盤6時間を経過。フェラーリ勢が1-2体制を築いているが、数多くのクラッシュが起き、さらには強い雨が断続的に降るなど、荒れに荒れた展開となっている。

 コースの一部に雨が降り、ユノディエールの一部が濡れているという非常に難しいコンディションでスタートの時刻を迎えた2023年のル・マン24時間レース決勝。そのスタート直後に意地の速さを見せたのがトヨタ勢だった。

 今年のル・マン24時間レース直前には、突如BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)が変更され、最低重量が37kg引き上げられてしまったトヨタ勢。その影響を受けてか、予選ではフェラーリ勢にフロントロウを独占されてしまい、決勝での巻き返しを誓った。

 決勝レースがスタートすると、8号車トヨタのセバスチャン・ブエミが次々にフェラーリ勢を攻略し、一気に首位に浮上して1周目を終えた。

 しかしこの1周目、ジャック・エイトキンがドライブする311号車キャデラックV-Series.Rがクラッシュし、いきなりセーフティカー(SC)が出動することになった。このクラッシュによりガードレールにダメージが及んだためSCは実に長引き、レースが再開されたのは40分後のことだった。

 レースが再開されると今度はフェラーリ勢が速さを見せ、トヨタ勢を攻略しにかかる。しかしピットストップのタイミングを変えるなどしたためコース上のポジションは離れ、どちらが有利なのかわからない状況となっていった。

 そんな中、レース開始から1時間半を過ぎた頃から、各車のクラッシュが相次ぐ。14号車のニールセン・レーシングや13号車タワー・モータースポーツなどLMP2クラスのマシンがクラッシュしただけでなく、セバスチャン・ブルデーがドライブする3号車キャデラックに、LM-GTE Amクラスのマシンが追突するという事故も発生した。その後もLM-GTE Amクラスの60号車アイアン・リンクスと16号車プロトン・コンペティションが接触したり、LMP2クラスの22号ユナイテッド・オートスポーツがスピンして77号車デンプシー-プロトン・レーシングのポルシェを巻き込んでクラッシュしたりと、荒れた展開になった。

 さらにそこに、豪雨というスパイスも加わった。雨は土砂降りであり、降雨があった区間はとてもドライタイヤで走れるような状況ではないが、それ以外の場所は全く雨が降らず、完全にドライ路面という実に難しいコンディション……多くのマシンがスピンしたりコースオフしたりと、さらに大荒れとなっていった。

 これによりSCが出動。このSCランは、雨が止み、路面コンディションが改善するまで1時間半以上にも及んだ。

 このSCラン解除直前、フェラーリ勢など複数のマシンがウエットタイヤからドライタイヤへと履き替えた。一方でトヨタ勢はドライタイヤへの交換タイミングが遅れ、レース再開後のピットインとなった。これでトヨタの2台は大きく順位を落とし、厳しい状況に置かれることになった。

 レース再開後、当初は94号車プジョーが先頭を走ったが、これもウエットタイヤを履いたままであったため、ドライタイヤに履き替えたことでポジションを落とした。代わって首位に立ったのは38号車ハーツ・チームJOTAで、後続のマシンに10秒以上のリードを築いていた。

 しかし好事魔多し。58周目を走行していた38号車は、ポルシェ・カーブにオーバースピードで進入していまい、リヤからウォールに激しくクラッシュ。リヤエンドを大破し、ピットに戻ることを強いられた。38号車はコース上に多くのパーツを撒き散らしてしまったため、フルコースイエロー(FCY)が宣言された。

 これでフェラーリの2台が1-2体制を築き、後続を大きく引き離した。そして夜の帳が下り、24時間レースの序盤6時間が経過しようかという頃、サーキットを再び雨が濡らし始めた。

 6時間が経過した段階で首位はフェラーリの51号車。2番手には僚友の50号車、3番手には94号車プジョーという順位になっている。トヨタ勢は6番手と7番手。しかし、雨脚は強くなりつつあり、各車がウエットタイヤに交換した。

 大荒れとなった100周年のル・マン24時間レース。先は見通せない状況だ。