今シーズンのF1はレッドブルが圧倒的な強さを見せており、開幕戦から先日行なわれたイタリアGPまで全勝。マックス・フェルスタッペンも前人未到の10連勝を達成するなどここまで12勝を挙げている。

 この強さにはライバルチームも脱帽。かつて常勝軍団の名をほしいままにしていたメルセデスのトト・ウルフ代表は、レッドブルの今シーズン全勝を止められるのは、レッドブルが自滅した時だけだと語った。

 メルセデスは、昨年のサンパウロGP以来勝利から遠ざかっている。このサンパウロGPは、レッドブル以外のチームが勝った最後のグランプリでもあり、それだけ長いことレッドブルが圧倒的優位に立っているわけだ。

 今シーズンはあと8戦を残しているが、ウルフ代表曰くレッドブルの勢いを止める術はないという。

「今シーズン、レッドブルの全勝を阻止するためには、彼らが自滅する必要があると思う」

 そう語るウルフ代表は、シーズン全勝という史上初の記録が達成されれば、素晴らしい偉業となるだろうとも語った。

「しかし、素晴らしい記録だと思うよ。まさに完璧なんだからね。我々が成し遂げられなかったのは、2016年にバルセロナで同士討ち(スタート直後にルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグがクラッシュしてリタイア)してしまい、その後マレーシアでエンジントラブルに見舞われたからだ」

 ウルフ代表は、自分自身では連勝や全勝という記録はあまり重要視していないというが、それでも今季のレッドブルの強さは賞賛に値すると語る。

「私としては、こういう記録はまったく意味を持っていないんだ」

 そうウルフ代表は言う。

「メルセデスが強かった頃でも、そういう記録は無関係だったし、何連勝したのか覚えていない。レースに勝った回数をカウントすることすらしなかった」

「したがって、ある特定の成果について、私がコメントするのは難しい。それは、私の生涯において重要視したことのないことだからね。でもリザルト自体は、素晴らしいクルマに乗った素晴らしいドライバーが、非常に高いレベルでレースをしていることを示している」

 一方当のレッドブルは、フェルスタッペンの10連勝は当然賞賛しているものの、シーズン全勝を意識しすぎないようにしている。

 チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、次のシンガポールGPが、全勝を妨げる可能性が最も高いグランプリのひとつだと考えているようだ。

「我々はこれまで、14戦中14勝してきた。欧州でのシーズンを無敗で終えることができるのなんて、想像もしていなかったことだ」

 そうホーナー代表は語る。

「グランプリに勝つことは十分に難しいことだ。でも14連勝すること、あるいは過去25戦中24勝しているという事実は、チームメンバーの全員が、自分の役割をしっかりと果たしているということなのだ」

「我々は強力な相手とレースをしているが、1戦1戦を戦っていくだけだ。シンガポールは市街地コースで行なわれるため、開催カレンダーの中で最も過酷なレースのひとつと言える。昨年、そこがいかに危険な場所かということを目の当たりにした。だから現在の勢いを維持するために、とにかく最善を尽くすだけだ」

 最終的にはフェルスタッペンが勝利したものの、イタリアGPはフェラーリ勢が僅差の走りを繰り広げたことで、素晴らしいエンターテインメントになったとウルフ代表は言う。

「フェラーリが表彰台に上がったのはいいことだと思う。彼らは、本来ならばもっと多くの表彰台を手にするべきだったのかもしれない」

 そうウルフ代表は言う。

「最後まで、見ていてとても面白かった。チームメイト同士で戦い、同士討ちになりかけたから、過去のことを少し思い出したけどね」

「ティフォシ(フェラーリの熱狂的なファン)にとって素晴らしいレースだった。素晴らしいエンターテインメントを提供してくれたし、信じられないような雰囲気だった。ここモンツァよりも素晴らしい場所は、おそらく他にはないだろうね」