いよいよ開幕するスーパーGTの2024年シーズン。GT500クラスは多くのチームで体制変更があった。37号車のTGR TEAM Deloitte TOM'Sもドライバーこそ笹原右京とジュリアーノ・アレジのコンビで継続だが、新たにミハエル・クルムを監督に招聘して心機一転浮上を狙う。

 クルムと言えば長年日産のドライバーとして活躍し、引退後もNISMOのアドバイザーを務めるなど日産色が強かった。ただキャリア初期はトムスのドライバーとして活躍し、1994年の全日本F3タイトルや1997年の全日本GT選手権タイトルはトムスで獲得したものだ。

 ある意味古巣に戻る格好となるクルムだが、監督という立場に立つのは初めて。ただNISMOでのアドバイザー経験なども活かし、昨年は苦しいシーズンとなったトムスの37号車を前進させたいと語る。

「今まで監督という立場になったことはないけど、例えばDTMのレース(スーパーGT車両が参戦した2019年のホッケンハイム戦)や、ニュルブルクリンク24時間にKONDO RACINGが参戦した時は、ピットウォールで監督の隣に座ったことがある」

「スーパーフォーミュラでサッシャ・フェネストラズと仕事をした時も、彼とエンジニアとのコミュニケーションを助けたりした。完全に何もして来なかったわけではない」

「もちろんチームの皆のことを知る必要があるけど、ジュンさん(山田淳)のように僕がいた30年前から残っている人たちもメカニックに何人かいる。チームの雰囲気は良いし、僕のことも歓迎してくれている」

「ふたりのドライバーはドライビングスタイルが異なるけど、それはどのチームにだってある。ふたりのドライバーが同じようなフィードバックになるようにすることは、前進するためには必要なことだ。今は一歩一歩進んでいるところなので、楽しみだ」

 クルムは長年日本でレースをしたこともあり日本語が堪能だが、チームではドライバーの希望に合わせ、笹原と日本語で、アレジと英語で会話しているという。

 とはいえ、アレジもある程度の日本語は話すことができ、笹原やトラックエンジニアの大立健太エンジニアも英語を話すことができるため、クルムがフェネストラズの時のように通訳的な立場で介入する必要はないようだ。

「(フェネストラズをサポートしていた時と)少し違う。あの時はムラタさん(村田卓児エンジニア)が英語を話せなかったので、コミュニケーションを取れないような状況だった」

「ここは(大立エンジニアが)英語を話せるし、僕が常に間に入る必要はない。しかもジュリアーノだって日本語が上手だ。彼も無線で日本語を話すこともできるが、そうなると走るのに必要な集中力をやや奪われてしまう」

 またクルムは、今回の体制変更により昨年まで37号車の監督であった山田氏がトムス2台を統括する総監督になったことで、37号車が昨年チャンピオンになった36号車のTGR TEAM au TOM'Sとのパフォーマンス差を縮めることに繋がるのではないかと語った。

「この大きな変更で、(山田氏が)より自由にリラックスできる立場になったことは大きい。僕だってこの仕事を始めて日が浅いので、彼がいてくれることは助かる」

「それ(36号車と37号車のギャップを縮めること)は僕たちが取り組んでいることだ。2台でデータを共有しているし、良いコミュニケーションが取れている」