LCRホンダのヨハン・ザルコとアプリリアのアレイシ・エスパルガロは、MotoGPスペインGP決勝の10周目にターン5で接触。FIMスチュワードは調査とヒアリングを経てお咎めなしとの裁定を下したが、ザルコはその過程に納得がいっていないようだ。

 そしてザルコは、裁定の公平性を保つために2019年からチーフ・スチュワードを務める2度の500cc世界王者フレディー・スペンサーを「その仕事に向いていない」と批判した。

「レースディレクションに行って、僕らはフレディー・スペンサーと一緒にアクシデントを見たんだ。そして彼は僕が何を望んでいるのか知りたがっているようだった」

「彼は僕に、アレイシに関する文句を欲しがった。それで僕は『文句は言わない』と伝えた。でも彼には『正しい時に正しい判断が下せていないから、この仕事に向いていない。何をすべきか僕に聞かないでくれ』と言ったんだ」

 ザルコとしては、スペンサーが自身の決断を待っているように聞こえたという。

「こんな感じだった。僕がレースディレクションへ行くと、彼は僕たちを見ていた。アレイシと一緒で、まるで僕らはふたりの子どもで、彼らはモラル教育をしたがった」

「でも僕は『フレディ、君には情熱はあるが、正しい判断ができていない』と伝えた。僕らは前に進む必要がある。昨日(スプリントレースで)のブラッド(ビンダー/KTM)みたいなことが起こり得るからね。ブラッドにペッコ(フランチェスコ・バニャイヤ/ドゥカティ)が驚いて、バイクを持ち上げたところでベッツェッキ(マルコ・ベッツェッキ/VR46)に当たったんだ」

「ブラッドも3台でコーナーを回るのがトリッキーだと考えていたはずだし、あの瞬間はブラッドにとってチャンスだった」

「それで僕らは裁定を受け入れて、それで決着する。現時点ではアレイシも僕に同意してくれている」

「いずれにしても、ライダーたちはこのグループをまとめて、発言する権利を持ち、適切な人たちに決定を下してもらうために動いている」

「今回のアレイシ、そして転倒してしまったのは残念だし、その後の全てが間違っていた。フレディー・スペンサーはこの場所に相応しくない」

 そしてザルコは、その“相応しくない発言”によってレースディレクションから「追い出された」という。

 一方エスパルガロは、ターン5でフロントタイヤをロックさせて転倒し、ザルコに追突してしまったという。ただ転倒にいたるまでの間にもザルコとは何度か接触していたと明かした。

「ヨハンにも言ったけど、僕らは14番手にいて、彼は3〜4回僕に当たっていた。もっとリスペクトする必要がある。だから僕としてはかなり不満だよ」

「彼はそれが自分の走り方、オーバーテイクの仕方だと言っていた。それは僕の乗り方じゃない。接触を避けるために、フロントをロックさせて転倒したんだ」

「あのコーナーで彼に少し接触するのは簡単だった。昨日はこういうことにペナルティがなかったけど、それは僕のスタイルじゃない」

「ヨハンにはそう伝えたんだ。でもヨハンは昨日のアクシデント、レースディレクション側全てに腹を立てていたし、彼は感情を隠さないんだ」

 ペナルティ適用における一貫性のなさは昨年、ライダーたちからも大きな不満として声が挙がった。そして2019年以降、カル・クラッチローはじめライダーの中には、スペンサーの仕事ぶりに対して大きな不満を抱いている者もいる。