今季は既にオーストラリアGPで1勝を挙げたフェラーリは、2勝目を狙うのはもちろん、レッドブルとの差を縮めるべく、今週末に行なわれるF1エミリア・ロマーニャGPにアップデート版のパッケージを投入する。これに先立ちチームは、ホームコースとも言えるフィオラノ・サーキットでフィルミングデー(PR用映像の撮影日)を実施してアップデートパッケージを身に纏ったSF-24を走らせ、実践投入に向けた準備を整えた。

 フェラーリがこのタイミングでアップデートを投入したのは、そのスケジュールによる部分が大きい。この規模のアップデートパーツを製造するのに当然時間は必要だったはずだが、それ以上に中国GPとマイアミGPがいずれもスプリントレースを実施するフォーマットでの開催だったため、パーツの効果を確認できるフリー走行が1回しかなく、正確なデータを取るのは難しいとチームは考えたのだろう。しかもエミリア・ロマーニャGPの舞台となるイモラ・サーキットは、フェラーリの本拠地であるマラネロからも近い。

サイドポンツーンやフロアに大きな変化

 SF-24に施された最も大きい変更は、サイドポンツーンのレイアウトだろう。これまでサイドポンツーンの開口部(1)は、下端の方が上端よりも前に突き出た、アンダーバイトと呼ばれる形状だった。しかし新型のそれは、上端の方が前に長い”オーバーバイト”と呼ばれる形状に変更された。これは、レッドブルが辿った道のりを踏襲したような形だ。

 この開口部には、旧バージョンではコクピットの真横に垂直に設けられていたバイパスダクトなどを接続したため、結果的にはレッドブルのモノよりも、アルピーヌやメルセデスのモノに近い、P字形のような開口部になった(3)。

 この変更の一環として、ヘイローの付け根部分にあったバイパスダクトのアウトレット(通気の出口)が廃止され、それを覆っていたエアロパーツも、コブラのような形状のウイングレット(4)に変更された。

 なおアンダーバイトからオーバーバイトに変更したことで、サイドポンツーン全体の形状も変更。アンダーカットが大きくなり、気流の流路がこれまでよりも広く確保された。また気流を改善すべく、ウエストライン(2)のデザインも大きく変更された。

 なおオーバーバイトにすることで、サイドポンツーンの上面から、気流を乱す可能性のある大きな要素を排除することができた。これにより、サイドポンツーン上面を流れる気流も改善されている可能性がある。

 これらの変更に伴い。サイドポンツーンのボディワークや、冷却に関するパラメータも再構成。フィオラノでテストされたパッケージの一部は、日本GPで使われたものとほぼ同じだが、大きな開口部になっている(7)。

 フロアに多くの変更が施されている。

 エッジウイングの前方にある”スクロールセクション”(5)は変更され、角度はより過激になった。それに合わせ、ストレーキも以前よりも大胆になっている。

 エッジウイング(6)の形状にはさらなる変更があり、フロア本体に接続するための金属製のブラケットも変わっている。エッジウイングは、金属製のブラケットでフロアに接続されるのが常だが、このアップデート版のSF-24は、エッジウイングの長辺をブラケットで繋ぐだけでなく、後方も馬蹄形のブラケットで繋いでいる。これにより、エッジウイングをより細分化できるようになったはずだ。

フロアには2023年マシンのアイデアが!

 これは実は、2023年の時点でも採用していた手法である。しかし当時のチームはこれを十分に活用することができなかった。ただその後もチームはこの最適化を目指してきたようで、今回満を辞して投入することになったようだ。

リヤウイングも新仕様が登場

 フェラーリは、リヤウイングも新しい仕様のモノに変更してきた。写真の上側が従来(マイアミGP)仕様、下が今回のアップデートバージョンである。これを見ると、形状の違いが一目瞭然だ。

 チームはフラップの後端角の部分、翼端板の上端角の切り欠きを大きく変更。これにより、フラップの幅を拡大しようと目論んでいる。これにより、翼端板の角で生み出される渦の形状も変更しているはずだ。

 フラップの角の部分は、メインプレーンの形状に合わせて丸くなるのではなく、はるかに角ばっている。そして切り欠きを大きく取ることになった。

 これにより、形状の最適化に関しては、設計の自由度を高めることになるはずだ。

 そして何より気になるのは、大規模なアップデートを投入したことで、フェラーリはレッドブルと互角に争えるようになるのか、それともまだまだ差があるのか……ということになろう。それは、今週末のエミリア・ロマーニャGPで実際に走ってみなければ分からない……。