ランド・ノリスはマイアミGPでマクラーレンに優勝を届け、続くエミリア・ロマーニャGPでもレッドブルのマックス・フェルスタッペンと優勝争いを展開した。

 マクラーレンはメルセデスからパワーユニット(PU)の供給を受ける、いわゆる“カスタマー”。ワークスチームをコンストラクターズランキングでも上回っているという状況だ。しかし、メルセデスのトト・ウルフ代表は、マクラーレンの仕事ぶりを素直に称賛した。

 メルセデスは2021年までコンストラクターズタイトル8連覇の偉業を成し遂げたが、現行のグラウンドエフェクトカー規則が2022年に導入されて以降は失速。ここ2年での勝利は2022年のサンパウロGPでジョージ・ラッセルが届けた1勝のみ。今季ここまでも表彰台を獲得できていない。

 一方でマクラーレンは一時期の低迷から復活を遂げ、2023年シーズン途中の大型アップデートから上位争いに加わった。2024年もその勢いに乗り、アップデートを投入したマイアミGPでノリスがキャリア初優勝。チームとしても、現行規定では初の勝利となった。

 続くイモラでのエミリア・ロマーニャGPでも、ノリスはフェルスタッペンと優勝争いを繰り広げ、最後はわずか0.725秒差の2位と、シーズン中盤戦に向けて攻勢を強めている。

 エミリア・ロマーニャGPを6〜7位で終えたメルセデス。現在のマクラーレンのパフォーマンスについてどう考えているか? と訊かれたウルフ代表は次のように答えた。

「素晴らしい復活の物語だ。12ヵ月前のマクラーレンを見てみると、Q1を突破するのがやっとだったと思う。今は文字通り、真正面からレース勝利に向け先頭で戦っている」

「マシンは速いし、タイヤにもかなり優しい。我々としてはエンジンの動向も見ているが、エンジンもタイヤに良い。一方で7月から4月までの12ヵ月足らずの間に中団グループから真の上位チームに回復したことについては我々も注目しているところであり、正しいステップを踏めばそれが“可能”だということを示している」

 そしてウルフ代表はマクラーレンの進歩を称賛しつつ、メルセデスもただ羨望の眼差しを向けているだけではないと語った。

「私がこのスポーツを愛する理由は、ストップウォッチが決して嘘をつかないということだ」とウルフ代表は言う。

「彼らは良い仕事をしてきたし、我々は彼らのやり方に敬意を払う必要がある。上位争いが激しくなることは、このスポーツにとって良いことだし、誰にとっても良いことだ」

「だから私は、それ(マクラーレンの躍進)を羨望の目で見ている訳ではない。私は『これこそ我々が達成すべきことだ』と思ってみている。彼らはそれを成し遂げることができたんだからね。結局のところ、優れたエンジニアリングが物を言うんだ」

「彼らは冬の終わりにコンセプトを変更し、アップデートを投入するまでに時間をかけ、それ以降はパフォーマンスを向上させてきた」

「我々が目指しているのは、『このクルマに求めているモノはこれだ』と言えば開発マシンがそれに従って走ってくれる、安定したプラットフォームだ。我々はこれまで、どこにパフォーマンスを追加すべきか、少しジグザグに進んできた」

「しかし、F1で買えないモノのひとつに時間がある。一度それを誤ると、後手に回る。そしてそこから抜け出すのは非常に難しくなる」