シャビ・アロンソが残留を明言した。彼は来シーズンも、レヴァークーゼンの監督を務めることになった。

筆者も二週間ほど前の配信で、「おそらく残留」と予想していた。SNSなどで「ふざけるな」「なにも知らないくせに」「おまえの目は節穴か」ともいわれたが、3月中旬からの動きをふまえれば、シャビ・アロンソの退団は考えられなかった。

「オファーは一切なく、あったとしても応じるつもりはない」(フェルナンド・カロ/レヴァークーゼンCEO)
「十中八九、彼は残留する」(ウリ・ヘーネス/バイエルン名誉会長)

シャビ・アロンソの去就に影響力を及ぼすと考えられたふたりの男が、相次いで移籍を打ち消していたからだ。圧倒的な有力候補といわれたリヴァプールも、オーナー企業の『FSG』(フェンウェイ・スポーツ・グループ)はユルゲン・クロップ退任後のプランに言及していない。

そう、「シャビ・アロンソがリヴァプールの新監督に」は、メディアの希望にすぎなかったのだ。

クロップが今シーズンかぎりでの退任を上層部に打ち明けた昨年11月、シャビ・アロンソの招聘が検討されはした。しかし、レヴァークーゼンのガードが必要以上に堅く、公式なオファーを届けるまでには至らなかった。

さらに、レヴァークーゼンとの契約が満了を迎えた後のルートにもリヴァプールやバイエルンは存在せず、シャビ・アロンソの希望がレアル・マドリー一本との話まで漏れ伝わってきたという。

こうして、イングランドとドイツの名門は、新監督の人選が振出しに戻った。

バイエルンはブライトンのロベルト・デ・ゼルビ、ドイツ代表のユリアン・ナーゲルスマン、元マドリーのジネディーヌ・ジダンに絞り、4月中にも発表しようとしている。

一方、リヴァプールはスポルティングのルーベン・アモリムが浮上してきた。すでに具体的な選択肢として検討され、ディレクターに復帰したマイケル・エドワーズが早々に接触したとも伝えられている。

また、英国の有力紙『Telegraph』が1280万ポンド(約23億円)と報じた契約解除金もお手ごろだ。

悪くない人選である。2019/20シーズン、スポルティングに着任した後、ヨーロッパのコンペティションは一度も外していない。一昨シーズンはリーガ・ポルトガルを制し、ゴンサロ・イグナシオ、ウスマンヌ・ディオマンデ、モーテン・ヒュルマン、ヴィクトル・ギェケレシュなど、アモリムが育てた選手たちは今夏の移籍市場で注目されるだろう。

「いまは100%スポルティングに集中している。余計な詮索はやめてほしい」

クラブとエージェントを通じ、アモリムは「リヴァプールの新監督に就任濃厚」と報じるメディアにくぎを刺した。ただ、昨年末にチェルシーやマンチェスター・ユナイテッドとリンクされたとき、少なからぬ野心をうかがわせる表情を見せていた。

リヴァプールの監督を任せるのなら、少なくとも優勝経験が必要だ。有力候補のひとりとされるデ・ゼルビは、優勝争いにすら身を投じていない。アモリムはスポルティングにおいて、毎シーズンのようにヒリヒリした最終盤を味わってきた。

現時点で、アモリムがポールポジションに位置している。まだ39歳と若く、選手と感覚が近いことも大きなメリットだ。

ドイツ人の情熱家からポルトガル人の野心家へ──。リヴァプールは、新しい物語が紡がれる。

文:粕谷秀樹