プレミアリーグEAST王座の奪還を目指す川崎フロンターレU-18が、首位を快走している。開幕戦の大宮アルディージャU18戦では、昨季一度もなかった逆転勝利を達成。続くFC東京U-18戦、前橋育英高校戦にも競り勝ち、3連勝でシーズンを立ち上げる。

第4節の昌平高校戦で初黒星を喫したが、前節の柏レイソルU-18戦では難敵相手に2-0というスコア以上の完勝を収め、連敗回避。「昌平戦は結果ということではなくて、“出し惜しみ”したというか、自分たちの力を前半から出せなかったというところに悔しさを感じていたと思いますし、そこを今日の前半は出してくれて、まったく違うチームに私には見えたので、これが彼らの力かなと思っています」と試合後には長橋康弘監督も言及するなど、しっかり反省を結果に繋げてみせた。

一方の市立船橋高校は苦しんでいる。開幕戦で青森山田高校に苦杯を嘗めると、第2節の鹿島アントラーズユース戦は後半終了間際に金子竜也が挙げた同点弾で何とか追い付き、勝ち点1を獲得したものの、その後も大宮U18には0-2で敗れ、FC東京U-18とはスコアレスドロー。なかなか白星が付いてこない。

前節の前橋育英高校戦も決して流れの悪い試合ではなかったが、前半終盤に不運なオウンゴールで先制を許し、後半終盤に鶴岡寿咲が狙った決定的なシュートもゴールポストに阻まれ、0-1で敗戦。開幕5試合未勝利という状況で、今回のアウェイゲームへ臨むこととなった。

川崎U-18で好調を続けているのがドイスボランチだ。その一角を担う八田秀斗は、もともとフォワードやトップ下を主戦場にしていたが、昨年の夏からボランチにトライし始めると、「自分にできることや自分の武器を考えて、“ボランチ像”に当てはめるのではなくて、“自分なりのボランチ”をできるようにというところから始めた感じです」という向き合い方が功を奏し、今シーズンは新たなポジションでスタメンに定着。主力としての存在感を示している。

託された14番という背番号は川崎にとって特別な番号。実は新シーズンの背番号をスタッフで決める際に、中村憲剛FROもそのミーティングに参加していたと聞いて、「凄く嬉しかったです!」とのこと。「フロンターレの“顔”の番号なので、『ユースの14番も上手いね』と言われるように活躍したいですし、『フロンターレのユースの14番は八田秀斗だ』と覚えてもらえるような選手になりたいと思います」と言い切る新米ボランチから目が離せない。

昨シーズンから川崎U-18の中盤を仕切ってきたのが、今季は10番を付ける矢越幹都。とにかく基本技術が高く、ボールを引き出しては長短のパスを使い分け、適切なタイミングで、適切な場所へ配球していくさまは、まさに精密機械のそれ。プレミア屈指のプレーメイカーであることに疑いの余地はない。

「ボランチの自分や八田がボールを受けないとフロンターレのサッカーは始まらないので、いっぱいボールに関わることを意識しています」と口にした矢越が掲げる今シーズンの個人的な目標は5ゴール5アシスト。「10番の責任はありますけど、プレッシャーを感じすぎると良いプレーができないと思うので、適度に感じつつやっていきたいです」と話す10番のゲームメイクは要注目だ。

ちなみに八田と矢越は小学生時代からのチームメイト。2018年に行われた『U-12 ジュニアサッカーワールドチャレンジ』という大会で、2人はFCパーシモンの一員としてFCバルセロナと対戦しており、八田はその試合で2ゴールを記録している。「小学生の頃は自分がフォワードで、幹都からのパスをもらってゴールという形が多かったので、ボランチを組むとは全然考えていなかったですし、感慨深いですね」(八田)。盟友同士が並ぶ川崎U-18のドイスボランチが、プレミアの舞台でも輝きを放っている。

何とか今シーズンの初白星を引き寄せたい市立船橋のキーマンには、ボランチに位置する峯野倖を推したい。2年生だった昨夏のインターハイで大会優秀選手に選出されながら、以降はケガによる長期離脱を強いられたため、青森山田と対峙した開幕戦は実に8か月ぶりの公式戦。「世間も自分のことを忘れているのかなと思っていたので、『自分もいるぞ』というのを1試合通して見せ付けたかったですね」と振り返った90分間をアグレッシブに戦い抜き、印象的なパフォーマンスを披露した。

背負った『7番』は昨季のキャプテンでもある太田隼剛(桐蔭横浜大)から受け継いだ番号。「隼剛にLINEで『7番になったよ』と言ったら、『オレを超えろよ』と返ってきたので、隼剛から自分になった7番を、市船の伝統的な番号にしていきたいです」と意気込む峯野の攻守に渡る躍動が、チーム待望の初勝利を掴み取るためには必要不可欠だ。

『10番のセンターフォワード』を任されている久保原心優の奮起にも、大いに期待したい。昨シーズンはプレミアこそ2得点に終わったものの、高校選手権では準々決勝と準決勝でもゴールをマークし、通算3得点で大会優秀選手にも選出。年始からはU-17日本高校選抜の活動にも参加し、一躍脚光を浴びた。

ただ、今シーズンはここまでまだ無得点。大宮U18戦ではGKを外して、無人のゴールに流し込んだシュートがスーパークリアに遭い、FC東京U-18戦でも豪快なミドルはクロスバーを叩く。前節もGKと1対1のシーンを迎えるも、シュートの軌道はわずかに枠の右へ。やや運に見放されている感も否めない。それでも今年の市立船橋でエースを張るのは、やはりポテンシャル抜群のこの人。久保原がゴールを奪えるか否かは、常にチームの勝敗に直結すると言っても過言ではない。

なお、この対戦カードは川崎U-18にとっても大きな意味を持つ。昨年の10月25日。プレミアEAST第16節の延期分として、平日開催となったアウェイの市立船橋戦。前半で2点をリードしていた彼らは、後半に3点を奪い返され、大逆転負けを喫してしまう。結果的に優勝を逃す遠因となったこのゲームに出場していた選手は今季も残っており、2024年の川崎U-18が掲げているキーワード、『後半まで足が止まらない』『ひっくり返す力』を身に付けてきたことを証明するには格好の相手だ。

「前回は2点獲って、3点獲られたという試合をしていますので、そこは去年見つかった改善点ですよね。まさしくこの相手にどうできるかというところが、今年のチームの進化を問われるような気持ちで選手たちはいると思います。その時も試合に出ていて、本当に悔しい思いをしている子がいるので、やってくれると思います」(長橋監督)。昨季のリベンジか、今季初勝利か。両者の思惑が交差する週末のフロンタウンのピッチは、熱く燃えるに違いない。

文:土屋雅史