いきなりそんなことできるの?!パドレスのダルビッシュ有投手(37)の試合後取材では、よく驚かさされる。5月6日、シカゴでのカブス戦では「きょうはちょっと思い切ってメカニクスを一気に変えたので、それによって球速、力はあったと思う」とコメントした。もちろんこれは、ダルビッシュ本人の感覚ベースの話で正直、見ている者としてはフォームのどこが変わっているのか分からなかった。

「どちらかというと2022年の最初のような、前半戦くらいのフォームというか。そのくらい動きをしたいので、その動きに近い感じでいきました」

22年の前半は防御率3・41で被打率・214の成績を残した。なぜ、いきなりフォームを変更しようと思ったのか。

「体のストレングス(強度)とかそういうのに比べて球速が出ないときがあった」

ウエートトレーニングなどで扱う重量、体に感じている力感の割に自身が想定するほど球速が出ないことで「もう一回フォームを見直して、過去どういうフォームで投げていたとか、どういう(練習の)ドリルをやっていたかを見直して、本を読み直したりとかそういうこと」を取り組んだという。「簡単に言うと筋肉を使って投げるというより、もうちょっと体をうまく使って投げる。(表現する)言葉が難しいんですけど」と感覚を説明した。

臨機応変に、そして柔軟に対応することに躊躇はしない。首を痛めて入っていた負傷者リスト(IL)から復帰した4月30日のレッズ戦。試合前ブルペンでは、投手プレートの踏み位置をその場で変更することをひらめいた。従来は三塁側を踏んでいたが、十数センチだけ真ん中に寄せていた。これを右足のつま先が三塁側ギリギリを踏むように変更した。

「ILから帰ってきた日にちょっと思い切って三塁側にいこうと思って。速いスライダー、小さいスライダーを投げたいのでそれを真ん中の方から投げてしまうと、アングル的に打者から見やすいというのと、あまり横曲がりしないスライダーなので、この角度があった方が打者が嫌だと思うので」

5月12日のドジャース戦では7回2安打無失点と今季最高の内容で3勝目、日米通算199勝目(NPB93勝、MLB106勝)を挙げた。

「きょうは全体的に一連の流れで(投げることが)できていたので、あまり力を入れずに球速も出ていたのでよかったです」

この試合前まで今季の最速は96・2マイル(154・8キロ)だったが、96・4マイル(155・1キロ)をマーク。力まずとも2024年のMAXが出たことは今後、さらに調子が上向くサインかもしれない。日米通算200勝がかかる次回先発は5月18日(日本時間19日午前8時15分開始)、敵地アトランタでのブレーブス戦だ。

(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)