横浜市内のメーカーに勤務する50代女性が適応障害を発症したのはテレワークでの長時間労働が原因だとして、横浜北労働基準監督署に労災認定された。女性の代理人弁護士によると、長時間のテレワークで労災が認められるのは「極めて異例」。新型コロナウイルス禍を経て、テレワークが新しい働き方として定着してきた今、代理人弁護士は「どんな労働形態でも各企業で労働時間の管理を徹底しなければならない。制度が乱用されていないかチェックを強化する必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 女性は外資系のメーカーで経理・人事・総務を担当していた正社員=休職中=で、コロナの感染拡大を契機にテレワークが導入された。

 2021年後半から社員の退職などが続き、新システム導入や決算資料の作成などで業務量が増加。上司からは指示や連絡が頻繁に届いた。ひどい時には分刻みで、早朝・深夜の対応や休日出勤も余儀なくされた。会社側に過重労働を相談したが適切な対応はなく、改善されなかったという。

 労基署の認定などによると、女性は上司から「業務の早い遅いは個人の生産性の問題」などと言われ、「労働時間を報告しないよう」指示されていた。「長時間勤務は仕事ができないから」とも言われ、女性は勤務時間を実際より短く報告した。

 女性は22年3月に適応障害を発症。発症前2カ月の時間外労働時間は労基署の認定分だけで100時間を超えていた。労基署は今年3月、労災認定した。

 同社によると22年11月、労基署から在宅勤務者の労働時間の適正把握について是正勧告・指導を受け、改善対応したという。同社は取材に対し「在宅勤務時、従業員は別途勤務時間記録をメールなどで上長に提出することとした。23年9月からは新たな勤怠システムを導入し、システム上で事前に上長への在宅勤務申請をし、在宅勤務時は出勤・退勤と私用外出の打刻を行い、上長と人事で勤怠記録を確認している」などとメールで回答した。

 女性の代理人で労働問題に詳しい笠置裕亮弁護士は「本来柔軟な働き方ができるテレワークが悪用されると、長時間労働や心身への大きな負荷につながることが浮き彫りになった画期的な認定」と意義を語る。