厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について」によると、2023年第22週(5月29日〜6月4日)の全国の定点当たり報告数は4.55。前週の3.63から、およそ1.25倍に増えており、増加傾向が続いています。都道府県別に見ると、沖縄県15.8・石川県6.98・北海道6.71となっています。

 感染症・予防接種ナビが、今回、取材したのは、中国地方在住の40代の女性です。

 新型コロナウイルス感染症への感染経路に心当たりは無いとのことですが、「ただの風邪」とは違う印象だったとのことです。

中国地方・40代女性(2022年4月6日 3回目ワクチン接種)

 5/23 午後に職場で寒気を感じました。夕方の気温も高かったはずなのですが、寒気が強く、肌寒さを感じながらの帰宅。午後3時に、帰宅し体温を測ると37.6℃その後、横になりましたが、午後5時過ぎに再度体温を測ると38.0℃まで上がっていました。その日は、そのまま睡眠。

 5/24 朝から38.2℃。会社には「お休み」したい旨を伝え、その日は、一日中、ベッドで横になっていましたが、熱は下がらないままでした。

 5/25 起床しても熱が下がらないため、朝9時頃、病院へ。病院前には、『熱・風邪・のどの痛みがある方は来院前にお電話を』とあったので、その場で電話。診療してくださるとの事なので、そのまま別室に案内されました。病院で、熱を測ると、36℃台。医師から、「新型コロナの検査は、有料になるけどどうしますか?」と聞かれました。

 私自身は、「絶対に、コロナじゃない」と思っていましたが、医師に検査を強く薦められ、コロナ・インフルエンザの検査を行うことに。検査は、鼻の奥まで綿棒を突っ込まれ涙が出ました。病院での検査は、唾液ではないのだなと思いました。

検査結果は「陽性」

 検査結果は、1分程度で分かり『陽性』が確定。インフルエンザの結果は、7-8分かかると言われ、待っている間に、抗ウイルス薬「ゾコーバ」の処方についての説明が医師からありました。説明事項は、妊娠中の方には処方できないとの話や、副作用として、頭痛・吐き気・倦怠感などを伴う場合があるとのことでした。

 また、その病院では、まだ2人しか処方されていないことや、薬を飲むことについての『同意書』も必要とのことだったので、しんどい上に、これ以上副作用が出てしまったらツライので飲まない選択をしました。結果、カロナールと咳止めを処方されました。

 朝10時過ぎには帰宅し、夫に連絡。子どもの通う学校への連絡とゼリー飲料を買うようお願いしました。夫が、学校に連絡したところ、「行動制限がない」ため、子どもたちは、学校でマスクをするようにとの話になったとのことです。

 帰宅して、ご飯を食べましたが、この時は、味がありました。その後、体温を測ると37.7℃。すぐに横になりました。

味覚・嗅覚が…

 異変に気が付いたのは、夕方です。のどが痛かったので、ネックウォーマーをしていたのですが、洗剤の匂いを感じなくなったのです。この日から、家族と家の中で隔離生活を始めましたが、部屋の前に「チョコレート」を置いてもらいました。しかし、味も感じないことに気づきました。食べ物の味を感じなくなったので、食欲が失せ、この日から3食ともゼリー飲料になりました。様々な「味」のゼリー飲料でしたが、味は感じません。味覚・嗅覚が無くなったので不安になり、家族に「ラー油」を部屋の前に置いてもらいました。一滴、手に垂らして舐めたのですが、口の中に痛みが広がるだけでした。

 5/27-28 体調はかなり回復しましたが、倦怠感が続き、立ち続けることが困難に。

 立ち上がっても、すぐに座りたくなる感じでした。

 5/29 身体のだるさが和らぐ。この日に隔離期間があけました。

 しかし、病院からは「隔離期間があけたとしても、10日間はマスク着用を」と言われていたので、それまでは私もマスクと隔離部屋生活です。

 6/5になった現在も、味覚・嗅覚が全くなく不安が続いています。

 感染経路は、分かりません。子どもたちは「お母さんとなんで一緒に寝られないの?」と泣き出し、親子ともども、ツライ思いをしました。

 ※2023年6月7日に、嗅覚は回復してきたとのことです。

感染症の専門医は…

 「臨床医としての立場から、抗ウイルス薬を使い、体内のウイルス量を減らすことは、有効と考えています。実際、患者さんに抗ウイルス薬のゾコーバを処方しましたが、今のところ、大きな副作用は確認していません。処方した方のウイルス量を計測しましたが、服用を始めてから、一気に減りました。投与すべき人に、適切に投与することで、ウイルス量を減らせば、周囲の感染も防ぐことができます。今回、取材を受けて頂いた方は、味覚・嗅覚障害が続いているとの事ですが、罹患後症状(いわゆる後遺症)については、世界的に調査研究が進められている最中であり、まだ不明な点が多いです。しかし、現時点の調査研究では、罹患後症状の多くは、時間の経過とともに症状が改善することが多いとされています。しかし、症状が回復したようにみえて、ウイルスがまだ体内に残存している可能性も考えられます。罹患後症状が2週間程度続くことは、よくあるケースですが、1ヶ月以上続くのであれば、後遺症外来や耳鼻科の診察を受けることをおすすめします」としています。

罹患後症状について

 また、今も新型コロナの罹患後症状(いわゆる後遺症)で悩んでいる方がいます。代表的な罹患後症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などがあります。また罹患後症状は、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状など、さまざまです。

引用
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生状況等について(2023年6月9日)
取材
大阪府済生会中津病院感染管理室室長 国立感染症研究所感染症疫学センター客員研究員 安井良則氏