国立感染症研究所の2024年第22週(5/27-6/2)速報データによると、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告数は28。今年の累積報告数は977となりました。去年1年間の患者報告数は年間としては過去最多の941でしたが、半年足らずで超えました。致死率がおよそ30%という注意すべき感染症の猛威が止まりません

【2024年】6月に注意してほしい感染症!溶連菌感染症高水準維持 手足口病・咽頭結膜熱と言った夏の感染症に注意 医師「マイコプラズマ肺炎徐々に増加」(https://www.youtube.com/watch?v=OPa56KVu4gU)

劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは?

劇症型溶血性レンサ球菌感染症は「人食いバクテリア」とも呼ばれることがある感染症です。A群溶血性レンサ球菌に引き起こされ、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず突然発病することがあります。初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸逼迫症候群(ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多いとされています。近年では妊産婦の症例も報告されており、出産の際に感染し発症したケースもあります。

感染症に詳しい医師は…

感染症に詳しい大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長の安井良則医師は、「よく『人食いバクテリア』といわれる劇症型溶血性レンサ球菌感染症ですが、人食いバクテリアという言葉が一人歩きをして、溶血性レンサ球菌が原因の感染症であるということが見えにくくなっています。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、現在流行しているA群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)と同じ病原体が原因の感染症です。溶連菌感染症の流行が、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者増加の一因となっていると考えられます。通常の溶連菌感染症が高い流行水準となっているため減少が予測される7月下旬ころまで、引き続き注意が必要です。溶連菌感染症の流行がおさまるまで、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の患者数も増え続けるのではないかと予測しています」と語っています。

心臓のペースメーカーのリードから感染

安井医師の勤務する病院では今年に入り、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が3例ありました。その一つは意外なところからの感染でした。安井医師「一つの例は、心臓のペースメーカーのリードが原因でした。ペースメーカーのリードを埋め込む際や埋め込み後に何らかの菌に感染するということは今までも報告されていたことですが、今年溶血性レンサ球菌に感染するということが起こりました。それだけ私たちの身の回りに溶血性レンサ球菌があるということです。溶連菌感染症はおそらく夏休みが始まるまで子どもたちの間で流行し続け、その後も流行が続く可能性があります。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は急激に症状が悪化し、治療は一刻を争います。こういう命に関わる感染症があるということを多くの方に知っていただきたいです」

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は去年のピーク時とほぼ同じ流行に

一方、国立感染症研究所の2024年第22週(5/27-6/2)速報データによると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)の全国の定点当たり報告数は4.85。前週からは少なくなったものの、依然として高水準で流行が続いています。都道府県別では鳥取10.79、山形10.57、北海道9.29、福岡8.43、新潟7.89、大分7.11、千葉6.82、宮崎6.67、茨城6.20が多く、流行は全国的に広がっています。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは?

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、レンサ球菌という細菌を病原体とする感染症です。主に感染している人の口から出る飛沫(しぶき)などを浴びることによって感染する「飛沫(ひまつ)感染」や、おもちゃやドアノブなどに付着している病原体に触れた手で口や眼などから感染する「接触感染」、そして食品を介して「経口感染」する場合もあります。よく見られる疾患としては、急性咽頭炎のほか、膿痂疹(のうかしん)、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱(しょうこうねつ)があります。また菌の直接の作用ではないのですが、合併症として肺炎、髄膜炎、敗血症、あるいはリウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことがあります。いずれの年齢でもかかりますが、学童期の子どもが最も多く、学校などでの集団感染、また家庭内できょうだいの間で感染することも多いとされています。

引用
国立感染症研究所:IDWR速報データ令和6年2024年第22週(5/27-6/2)、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

取材
大阪府済生会中津病院院長補佐感染管理室室長 安井良則氏