©︎IMAGO/MB Media Solutions

 先週にマドリードにて行われたチャンピオンズリーグ準決勝1stレグでの熱戦を経て、そのリターンマッチとなったマンチェスターでのセカンドレグを前に、カイル・ウォーカーは対峙したヴィニシウス・ジュニオールに向けて「もう僕をミーム(面白い画像や動画が拡散されていく現象)にしないでくれ」と要望。この試合で同選手はいわゆる「レインボーフリック」をお見舞いされており、その二の舞だけはどうしても避けたかったのだ。だが今回の対戦で痛い目に遭ったのはむしろ、ヴィニシウスの方だった。若きスピードスターを相手に32歳のベテランを再び対峙させるというグアルディオラ監督の狙いは的中し、ヴィニシウスは幾度となくウォーカーによって倒される姿を露呈してしまう。試合後ウォーカーは『BT Sport』に対して、「自分のスピードを信じた、彼よりも早いと思い込もうとして、自分のフィジカル面での優位性を利用したかったんだ」とコメント。スプリント対決となった場合には、日頃から巧みに操る腕を用いて、「決してファウルをするとかではなく、軽く押すだけでもバランスは崩れてしまうものだよ」と説明している。

 苛立つジュニオールはサイドラインでアンチェロッティ監督と激しく話し合う様子が見受けられており、試合終了後にそのことについて問われた指揮官は、0−4での敗戦後「もう思い返したくはないんだ」と吐露。この試合ではヴィニシウスのみならず、全ての選手が淘汰される結果となってしまった。ウォーカーはこれが決してヴィニシウス封じだけでもたらされたのではなく、「このチームのいいところはチーム全員が、自分の役割と責任を理解しているということだよ。デ・ブライネもグリーリッシュも、ハーランドもいるけど、でもただボールを預けるだけという突出したスーパースター、この人に頼るしかないというわけではないんだ」と指摘。つまり「レアルにはもちろん素晴らしい選手たちがいるし、それが彼らにとっての最大の武器でもある。ただもしも思惑通りに試合が運ばなくなった時、問題は彼らにプランBが存在しているかどうかだろう」と語った。「ただヴィニシウスは本当にファンタスティックな選手で大いに将来が楽しみな選手だよ」

アンチェロッティ監督の進退問題は?

 そうなれば必然的に話題はカルロ・アンチェロッティ監督の進退問題ということになる。2024年までレアルとの契約を残すベテラン指揮官については、以前よりブラジル代表との繋がりが指摘されてきた背景があるが、今季はコパ・デル・レイの一冠のみで終了。チャンピオンズリーグでの今季最後の戦いは0−4と完敗であり、「開始から大きな重圧をかけられ、思うように試合を組み立てることが困難だった。ただ手痛い敗北ではあるが、スポーツとは時にこういうもの」アンチェロッティ監督は述べつつ、「チーム自体は非常にうまくいっているし、来季はもっとよくなるよ」と付け加えたが、それはあまり多くの理解を得られるものではないだろう。もしもクラブ内で疑問が生じているなら?「誰も疑問など持っていないさ」とアンチェロッティ監督は返答。実際に2週間ほど前に「ペレス会長からコパ優勝後に、様々な憶測も我々には無関係だ」と言われており、この試合後も役員エミリオ・ブトラゲーニョ氏も「彼は素晴らしい、我々と共に全てを勝ち取った人物」と評価したが、ただ続投を確約する言葉は聞かれず、「今回は彼らが優れていたし決勝進出に値する」と述べるなど、今後これは考え始められる可能性は否めない。

一時代の終焉?トニ・クロース「3・4年前も言われた」

 さらにトニ・クロースは「この試合の開始から20分、25分で、もう崩れてしまっていた。初戦のときのように明らかに受け身になりすぎていて、後半からはポゼッションする時間帯も増えていったけど、でも前線がおざなりになってなかなか危険な場面をつくることができなかった。要するに敗退に値すること」と総括。ただ大会全体については「これを残念とするのは無理があるだろう。決勝にはいきたかったし失望はしているけど」と話すように、特にラ・リーガで優勝できなかったことからも今大会に期するものは大きかった。「でもカップ戦での優勝を果たすことができているし、特に他の大会でうまくいかないときにこれができたのは大きかったと思うよ」と強調するも、やはり今回の敗退はベンゼマ、モドリッチ、そして自身のようなベテラン勢の一時代の終焉を意味するものではないか?「3・4年前にアヤックスにホームで敗れた時にも聞いた言葉だね」とニヤリと笑ったクロースは、その後に再びチャンピオンズリーグの頂点に立ったことを指摘し「だから僕らを過小評価すべきではないさ」と明言。またルカ・モドリッチとともに、アンチェロッティ監督への支持も表明している。

グアルディオラ監督「イタリア勢との決勝は・・・」

 一方でマンチェスター・シティでは、ジャック・グリーリッシュは喜びを隠せない様子で「先週からかなり活気付いていたし、そして今は4−0で勝利をおさめることができた。この状況を迎えられてとても嬉しいし、レアル相手にこんな試合をできるチームはそうない。チーム一丸となって戦えれば、特にホームでは負ける気がしないね」とコメント。イルカイ・ギュンドアンも「僕としては初戦であまり良い気分ではなかったので、今日は同僚やファンのために良い結果を手にしたかった」と語り、さらに前半で2得点を決めたベルナルド・シルバについてペップ・グアルディオラ監督は「私がこれまで見てきた中で最高の選手の一人」と称賛。インテルとの決勝に向けて「イタリアのチームとの決勝戦は、正直言って最高のプレゼントとは言えない。彼らは倒すのが難しい。しかし我々には精神的に準備する時間がある」との考えをみせた。

グアルディオラ監督「昨年は辛酸を嘗めたが・・・」

 それはマンチェスター・シティにとっては、昨年に続くリベンジの場にもなる。「そこで我々は辛酸を嘗めなくてはならなかったが、サッカーの世界では常に別のチャンスもおとづれるもの。だからレアル・マドリードに引き分けたときに、ぜひそれを果たしたいと強く願ったよ」とグアルディオラ監督。「トニ・クロースがインタビューで、エティハドでは1対10か2対10で負けたかもしれないと言っていたのを覚えている。クロースは私がこれまで見てきた、そして指導してきた中で最高の選手の一人であり、彼がそのようなことを言うということは如何に我々にとって辛い敗戦であったかの現れだ」と述べ、今回はそこで「昨年のことはあっても、それでも良い感覚はもてていた。ロッカールームではとても落ち着いていたし、選手たちは冗談を口にしつつ、私も特に興奮や怖さを感じるようなこともなかったよ。チームとしての個性、そして結束力を見せることができたと思うね」と胸を張っている。