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 激動のシーズンも最後はタイトル獲得という形で幕を閉じた。確かにそれは昨シーズンと同じ光景であり、チャンピオンズリーグやドイツ杯ではすでに姿を消しているが、これまで通りにドイツ王者の座は揺るぎないものとしている。だがいつもの光景と違うのは、そのバイエルンが置かれた状況だ。勝ち点わずか71で優勝を果たせた理由はバイエルンの強さというより、むしろライバルの脆弱さに救われたものであり、それゆえ今回は昨季と異なり相談役会はオリヴァー・カーンCEO、そしてハサン・サリハミジッチ競技部門取締役を解任することを判断。彼らの下で1年以上に渡り混迷期を極めることになった、この流れに終止符を打つ事にしたのだ。

 つまりこの2人を指名したウリ・へーネス名誉会長は、ここで自らの過ちを認め修正をはかったということ。そのためルメニゲ代表と共に長きに渡り取締役会として仕事をしてきた、厚い信頼を置くクラブを知り尽くした、財政面で強みをもつヤン=クリスチャン・ドレーセンCFOを、今夏での退任の意思を翻意させてまで慰留させたことは大いに理解できること。その繋がりの深さから今後、前任のルメニゲ氏やへーネス氏らからの助言を得ながら仕事を遂行していけるだろう。それでもその前途はあまりに多難だ。そもそも何がバイエルンの問題の核となっているかを見極めなくてはならない。主将ノイアーと副主将ミュラーを除き、バイエルンと100%共感できている選手がいるかといえば疑問だ。

 そのためこの夏の移籍期間において、当初考えられていた以上に、バイエルンがより多くの変化をみせていく可能性は十分にある。そしてシーズン終盤から就任したトーマス・トゥヘル監督は、これまでの印象も加味した上で今後より一層に、チーム編成に携わっていくことになるだろう。指揮官自体はクラブ内から全幅の信頼が寄せられており、特にへーネス名誉会長やルメニゲ元CEOからも高く評価。自らの首を締め続けてきたシーズンを払拭し、これから新たなシーズンへと向かうために重要なことは、まず再び平和を取り戻すということ。そのためにはこれからの移籍期間で多額の投資を惜しまず、そして入念に話し合いを重ねていく必要があるはずだ。