和紙の文化を広めようと、富山県立山町虫谷の和紙職人、川原隆邦さんと同町でヘルジアンウッドなどを運営する前田薬品工業(富山市)がタッグを組み、新たなプロジェクトをスタートさせた。8月に同社が同町日中上野の古民家を改装し、宿泊や飲食、交流、物販、体験の複合施設を開業するのに合わせた試み。和紙の原料のトロロアオイを敷地内で栽培し、「作る」「食べる」などの体験を通じて文化に触れてもらう。3日に有志が苗を植えた。

 川原さんは自ら開墾した山や畑で原料を育て、紙本来の色を生かす技法に取り組んでいる。春から秋まで原料を栽培し、冬に和紙をすく自然のサイクルと共に生きることを学んできたが、山間部での作業は外部から見えづらいことに課題を感じていた。

 プロジェクトでは麓の田園地帯で栽培を行う。畑は、前田薬品工業が築130年の「旧土肥邸」の母屋を改修し、8月21日にオープンする複合施設の敷地に設ける。身近なところに畑があることで、和紙作りをより多くの人に知ってもらうきっかけにする。獣害を避ける狙いもある。

 複合施設には、最大13人が泊まれる1棟貸し宿泊施設のほか、住民らが気軽に立ち寄れるおばんざいなどの飲食や物販、ワークショップなどのスペースを併設する。食べることができるトロロアオイの花を使ったメニューの提供も計画中だ。文具店「綴ル」(富山市)のオリジナルの紙製品も販売し、和紙の魅力も伝えていく。

 3日は、同社社長の前田大介さん、執行役員の大久保功一さん、綴ル店主の沼美紀子さん、川原さんとアートユニットを組む柴草朋美さん(同)が、川原さんの和紙制作の1シーズン分程度の原料となる480本の苗を植えた。川原さんは「施設を訪れる多くの人に和紙の文化を伝えていきたい」と話した。