9月に入り、スズメバチによる深刻な被害が相次いでいる。神戸市立医療センター中央市民病院(同市中央区)では、一度に数十カ所を刺された人の救急搬送が1週間で2件あった。うち1人は全身を78カ所刺され、重症。同病院救命救急センターの松岡由典医長(40)は「ここに10年以上勤めているが初めてのこと。命の危険もあり、自衛を心掛けて」と警鐘を鳴らす。


 同センターによると、9月12日、同市須磨区で登山中の女性(78)がスズメバチの大群に襲われた。被害は頭と首に30カ所集中し、腕や脚などを含め全身で計78カ所を刺された。

 搬送直後の女性は意識がもうろうとした状態で、刺された部位が皮下出血で黒ずみ、腕なども腫れ上がっていたという。蜂毒の中毒による多臓器不全と、アレルギー反応「アナフィラキシーショック」を引き起こし、重症だった。一時は集中治療室に入院。毒を体外に取り除く治療を受け、容体は落ち着いたという。

 16日には同市東灘区の山中で、遊歩道を草刈り中の男性(84)が25カ所刺され、アナフィラキシーショックを起こして搬送された。

 松岡医長によると、アナフィラキシーショックでは呼吸困難や血圧低下によるショック状態が特に危険という。「初めてでもショック状態が起きる場合がある。多数刺されると多臓器不全に陥ることがあり、非常に危険。劇的な症状は1時間以内に現れることが多い。患部の腫れ以外に異変があればすぐに病院へ」と話す。

 蜂の生態に詳しい伊丹市昆虫館(伊丹市)の主任学芸員野本康太さん(47)によると、「蜂が1匹だけなら動かずにやり過ごし、複数の蜂が現れた時は巣が近いのでその場を離れることが大切」。手で振り払うなど素早い動作は蜂を興奮させる。顎をカチカチ鳴らすのは怒りのサインのため、「姿勢を低くして後ずさって」と助言する。

 振動や大きな声も蜂を刺激する。蜂は巣を守ろうとする際に攻撃を仕掛けるが、土中に巣を作る種類もおり、存在に気づきにくいことも。「山歩きの際には道を外れないことも大切。子連れの場合は下見をした方がいい」と呼びかける。(小尾絵生)

【ハチ被害を防ぐポイント】

・山登りや農作業、庭仕事などの際はハチの存在に注意を払う

・黒以外の帽子や服を身に付ける

・首にはタオル、長袖長ズボンの服装で肌を露出しない

・香水、整髪料など匂いが強いものの使用をさける

・繰り返し刺すため、刺された時は直ちに場を離れる