獲得抗体による集団免疫達成へ

 北朝鮮の朝鮮中央通信は、22日、新型コロナウイルスの感染疑いがある発熱者の合計が約264万6730人、死者67人に達したと報じた。

 韓国の国家情報院は、発熱者には新型コロナ以外にも腸チフスなど別の感染症患者も含まれていると分析しているようなので、発熱者全員が新型コロナ感染者ではないと思われる。

 それでも、すでに北朝鮮の総人口の10%近くが感染した可能性があり、しかも、症状を発症していることから完治すれば、天然の獲得抗体を得ることできる。

 一方、韓国の累計感染者数は、約1800万人近くになっているので、総人口の35%ほどが感染済みとなる。この感染者数には、中国のゼロコロナ政策をまねた徹底したPCR検査で陽性者をあぶり出す「K防疫」による無症状者も含まれている。

 症状を発症していない無症状者は抗体を獲得できない可能性もあるため、獲得抗体の保有者は35%には達していないとみられるものの、韓国は、ワクチン効果との併用で集団免疫獲得に近づいている。

 北朝鮮は、このままのペースで発熱者が増加すれば、総人口の50%、60%が感染済みとなり、獲得抗体保有者も増える。

 そうすると、これからワクチンを接種するよりも獲得抗体による集団免疫達成のほうが早いのではないかとの声も聞こえてくる。

コロナ死者を強調する中国政府の意図

 北朝鮮が初めて新型コロナの感染を認めた12日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、中国の防疫を参考にすると発言したことが、中国では大きく報じられた。

 つまり、北朝鮮は、今や世界保健機関(WHO)から批判される中国のゼロコロナ政策をロールモデルにすると明言したことになる。

 中国政府は嬉しかったのだろう。昨年の秋以降、中国のインターネットも含めたメディア全般では、他国の新型コロナ政策を肯定したり、称賛するのはもちろん、紹介すること自体へも神経を尖らせて、実質的に禁じられている。

 しかし、北朝鮮の新型コロナの状況については大量の投稿がSNS上で確認できる。中国当局が気分を良くして容認した可能性がある。

 それでもさすが中国。ちゃっかりと内政へ利用しているようだ。冒頭の北朝鮮での死者67人を強調する投稿は、削除せずしっかりと残している。

 前日、米国の新型コロナによる累計死者が100万人となったことも大々的に報じていたのと同じだ。

 要するに、中国が国民から批判を浴びてまで固執し続けるゼロコロナ政策は、“中国人の大切な命を守るための重要な政策なんだ”ということを国内向けにアピールしたいのだろう。

 中国政府は、私権を異常なほど制限する過酷な都市封鎖(ロックダウン)でも「死ぬよりはまし」を全面に押し出すことにより、自身のゼロコロナ政策を肯定化するための材料に北朝鮮の情報も利用していると言えそうだ。