【電子版限定】秋山幸二を輩出…氷川中野球部が部員14人で起こした〝奇跡〟…クラブ台頭の中、熊本王者に 小学生から地域で育成、絆の強さに創意工夫も
熊本日日新聞6/5(木)11:45

【決勝・氷川中−鶴城中】決勝戦で好投した氷川中のエース橋本=5月31日、熊本市城南総合スポーツセンター(保護者提供)
部活動の地域移行が進みクラブチームが台頭する熊本の中学軟式野球界で、部員わずか14人の氷川中が九電旗県大会(5月10〜31日)を制し、世代の頂点に立った。決勝を含め全5試合中3試合が1点差。片山謙人監督(37)は「粘り強く戦ってくれた」とナインをねぎらった。
氷川は、本格派左腕・橋本幸明を中心にした守りのチーム。準決勝と決勝を1日で実施する日程の中、降雨で準々決勝から2週間の時間ができた。「大会の流れが有利に働いた」と指揮官は分析する。
その間、準決勝で対戦する白川の本格派右腕対策で、打撃マシンを130キロに設定して打ち込んだ。外野手の新垣環大がけがから復帰し、外野の布陣も変更した。「接戦では大事になる」と、熊本市の準決・決勝の会場となる現地まで足を運び、外野からの中継プレーを磨いて本番に臨んだ。
打撃の強化は準決勝で生きた。想定と異なる投手が相手だったが、五回までに9安打8得点。「速い球で練習したので対応できた」と東坂航夢主将。一方、「本来の日程なら準決勝は橋本だった」(片山監督)マウンドに上ったのは久保田瑞希だった。「久保田は制球力がついて成長した。優勝するための勝負手」という起用に5回1失点。久保田は「3ボールでも四球を出さず粘れた」と胸を張る。
温存したエース橋本で臨んだ決勝は、守備の強化が実った。0−0の二回、左中間を破る打球でピンチかと思われたが、「肩が強い選手が少ないから」(片山監督)と、投手を加える特殊な中継プレーで打者走者を三塁でアウトにした。最終回も布陣を代えた外野が鋭い当たりを好捕して、虎の子の1点を守り切った。
3年生8人(うち女子1人)は小学生時代、いずれも氷川クラブに所属。地域で野球できる環境を残そうと、部活動廃止を前に立ち上げたクラブだ。田中裕成監督(43)は「発足当時、氷川中の部員は1人。一人でも選手を送り出したいと思って指導してきた。強豪クラブの方が上手になれるのに、地元の仲間と野球をしたいと残ってくれたメンバー」と言う。
3年生は小学6年時、県大会で8強入りした期待の世代だった。昨年秋の県大会、初戦で託麻中(熊本市)に12三振を喫して敗れ「レベルが違った」(東坂主将)。雪辱に臨んだ2度目の県大会。東坂主将は「仲間が焦っていることは見れば分かる。ミスしても声を出し合い必死で守った」という。
かつて「大リーグに最も近い男」と評され、西武ライオンズの黄金期を支えた秋山幸二さんを擁し、県中体連で優勝した氷川中。それから48年。「県大会4強で戦力は一番下」(片山監督)ながら、地域で育てたメンバーの絆の強さと、名門・熊本工高で培った指揮官の創意工夫で接戦を勝ち抜き、ナインが「夢みたい」と口をそろえる〝奇跡〟を起こした。
母校の快挙に、〝レジェンド〟秋山さんも感激の様子。「素晴らしい結果だ。3月に試合を見たけど、バッテリーが良かった。町も盛り上がるだろうし、今回の活躍で野球をしてくれる子が一人でも増えたらいいな」とコメントを寄せた。
全日本大会出場を懸け、28日から九州大会に臨む。東坂主将は「優勝じゃなくていい。ずっと野球してきた仲間と全国の舞台に立ちたい」と夢を膨らませた。(高橋俊啓)





