歴史と文化が息づく倉敷美観地区。
その玄関のような存在が、倉敷国際ホテルです。
50年以上の歴史がある老舗ホテルで、信頼を積み重ねています。
たとえば皇族が倉敷に宿泊するときに選ばれるのも、倉敷国際ホテルなのです。
吹き抜けのロビーに飾られている棟方志功(むなかた しこう)の作品は、木版画としては世界最大級の大作で、必見!
歴史と文化を感じる、倉敷国際ホテルを紹介します。
倉敷国際ホテルの概要
倉敷国際ホテルは、JR倉敷駅より徒歩約8分、倉敷美観地区の入口に位置する老舗ホテルです。
1963年(昭和38年)12月1日にオープンし、国内外の訪問者を迎えてきました。
国内外のVIPにも選ばれており、たとえば、2016年にG7倉敷教育大臣会合が開催されたときには、各国の代表が宿泊。
昭和にさかのぼれば、フランスの哲学者サルトルと作家ボーヴォワールも宿泊したそうです。
ホテル内には、以下の施設を備えています。
- 客室(全105室)
- レストラン
- バー
- カフェラウンジ
- 宴会場 4室
宿泊はもちろん、ランチ・会議・結婚式などで利用できます。
抜群の立地ですぐに倉敷美観地区に行けるので、「夕食後に夜景を眺めにお散歩」なんて旅も気軽に叶います。
倉敷国際ホテルの建築
ホテルを設計したのは、倉敷の町づくりを支えた建築家、浦辺鎮太郎(うらべ しずたろう)。
オープン翌年の1964年(昭和39年)に日本建築学会賞を受賞し、今でもその建築を見に訪れる人が少なくありません。
倉敷国際ホテルの建築としての魅力は、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひチェックしてください。
倉敷国際ホテルの歴史
倉敷国際ホテルを創設したのは、実業家の大原總一郎(おおはら そういちろう)です。
ここで少し、大原總一郎と町並みについて紹介させてください。
美しい町並みを残したい
大原總一郎は、のちにクラボウ・クラレとなる会社の社長や、倉敷中央病院の理事長を務め、産業の発展・倉敷の発展に大きく貢献しました。
父である大原孫三郎(おおはら まごさぶろう)が創立した大原美術館を大きく発展させたのも、總一郎です。
總一郎は、ドイツの古都ローテンブルクが、住民の力で歴史的な町並みを保存していることに感銘を受けます。
倉敷を歴史的建築物を残した美しい町にしたい、文化的な遺産として後世に残したいと考えた、總一郎。
昭和20年代には、總一郎が招いた人々らの活躍により、全国に先がけて町並み保存活動が起こりました。
美しい町と調和するホテルを
昭和30年代の倉敷では、水島臨海工業地帯が急速に発展したことで、国際水準のホテルを望む声が高まっていました。
地元政財界の要請を受けて、總一郎は倉敷国際ホテルを創立します。
倉敷美観地区は、白壁の和風建築と大原美術館のギリシャ神殿を思わせる洋風建築が織りなす町並みが特徴です。
目指したのは、倉敷の風土に溶け込むような、町の意思を伝える、和と洋の融合したホテル。
1963年(昭和38年)、目指したとおりの、主張が強すぎず随所に美を感じる、和洋折衷のホテルが完成しました。
50年以上にわたり、国内外のお客をおもてなししてきた、倉敷国際ホテル。
何度か改装は重ねながら、創立当初のコンセプトと伝統を大切に受け継いでいます。
吹き抜けのロビーと棟方志功
倉敷国際ホテルのロビーは、3階までの吹き抜け空間。
見上げると、世界的アーティストである棟方志功がオープンに合わせて制作した木板画『大世界の柵・坤(こん)〜人類より神々へ〜』が、ぴったり収まっています。
棟方志功は、自らの木版画を板から生まれた「板画」を称しました。
大きさは、幅12.84メートル・高さ1.75メートル。
棟方志功の作品のなかでもっとも大きく、木版画としても世界最大級の作品です。
ピカソの「ゲルニカ」を見た感動をモチーフにしたともいわれています。
大原家は棟方志功の良き理解者であり、深い交友関係を築いていました。
大原美術館 工芸・東洋館には、棟方志功版画室があり、個人的に送られた作品なども見られます。
大原總一郎死去の際に棟方は、「日本の美の最大の理解者でした」と追悼文を発表したそうです。
宿泊者なら2階・3階のもっと近い位置から鑑賞できるので、ぜひゆっくり眺めてみてください。
筆者は、ゲルニカには、命の尊さとともに悲しみと怒りを感じます。
『大世界の柵・坤(こん)〜人類より神々へ〜』には、もっと明るい慈しみを感じました。
棟方志功だけでなく、館内にはアート作品が多く飾られています。
ホテル内はモザイクタイルや各所のアール(曲線)が美しく、ロビーを訪れるだけでも、建築の美しさにうっとりしました。
落ち着いた客室
倉敷国際ホテルには、以下の客室があります。
- シングルルーム
- スタンダードツインルーム
- デラックスツインルーム
- デラックスコーナーツイン
- トリプルルーム
- コネクティングルーム
- スィートルーム
ブラウンを基調とした客室
「ラグジュアリー」をテーマにした客室は、木のぬくもりを感じられるシックな佇まい。
内装や構造は部屋によって異なります。
本館のデラックスコーナーツインルームでは、間接照明に照らされる天井のアール(曲線)が優しい陰影を作り、倉敷国際ホテルらしさを感じました。
一般的なビジネスホテルより広く、ベッドだけでなくテーブルと椅子もあり、くつろぎやすい落ち着いた雰囲気。
上質で格調高く、清掃が行き届いていて、心地よく過ごせそうです。
バスタブは、多くの人が足を伸ばせる広さではないでしょうか。
宿泊者からは、「リラックスして過ごせる」「古さの中にあたたかさを感じて心地よい」といった声が挙がっています。
スィートルーム
最高級グレードのスィートルームは、リビングルームとベッドルームに分かれています。
クラシカルなリビングルームには、大原美術館収蔵のクロード・モネ『睡蓮』の複製画が飾ってありました。
モネの『睡蓮』は世界の各地に収蔵されていますが、大原美術館の『睡蓮』は、モネが直接お気に入りの作品を選んでくれたもの。
バスタブと別にシャワーブースもあります。
なまこ壁の蔵を思わせる扉もおしゃれ。
レストランや直営店での食事も楽しみ
宿泊するかたには、以下で利用可能な優待券がもらえます。
- ホテル館内1階「レストラン ウィステリア」
- ホテル館内地下1階「バー レジーナ」
- 美観地区内「レストラン亀遊亭」(直営店)
- 美観地区内「お食事処 鶴形」(直営店)
ホテル館内のレストランは、フレンチスタイル。
こだわりのソースは、しっかり時間と手間をかけて伝統的な手法で作られているそう。
SDGsの取組の一環で地産地消に力を入れていて、高梁川流域野菜をたくさん使用しています。
地元のエディブルフラワー(食べられる花)も使っていて、見た目にも楽しめるのです。
直営店も、評判の良いお店。
鶴形は、JAL国内線ファーストクラスの機内食の監修をしたこともあります。
当時の天皇皇后両陛下(現上皇・上皇后両陛下)の岡山県笠岡市への行幸啓(ぎょうこうけい)の際には、距離があるにも関わらず、鶴形にお弁当提供依頼があったそうですよ。
行幸啓とは、天皇・皇后がご一緒に外出されることをいいます。
朝食は2023年4月現在、地産地消にこだわり、高梁川流域の食材をふんだんに使った約40種類の洋食や和食を選べる「高梁川流域朝食ブッフェ」を提供しています。
ランチやアフタヌーンティーは、宿泊しないかたにも人気があります。
「倉敷アフタヌーンティー」で提供するメニューは、ビクトリア女王が好んで食べていたとされる「ビクトリアケーキ」をメーンに、素材の持ち味を感じられるスイーツです。
宿泊者だけでなく、近隣の人々の集いの場でもある、倉敷国際ホテル。
倉敷国際ホテル 営業サポートチームの白岩良(しらいわ りょう)さんに、話を聞きました。