日産は2020年11月24日に、新型「ノート」を世界初公開しました。外観のフォルムはキープコンセプトながらパワーユニットは全車「e-POWER」となり、動力性能だけでなく環境性能や安全性能の向上や、装備も充実するなど進化を果たして。そこで、新型ノートとともに日産の歴史を彩った歴代FFコンパクトカーを、5車種ピックアップして紹介します。

新型ノート発表で振り返る日産の歴代FFコンパクトカー

 2020年11月24日、日産は同社の主力コンパクトカーである「ノート」のフルモデルチェンジを発表。大きなトピックスとして、全グレードが電動パワートレインである「e-POWER」を搭載したことが挙げられます。

 新型ノートは3代目にあたり、2012年に登場した2代目は2017年から2019年にかけてコンパクトカー販売台数首位を記録するほど大ヒットしたのは記憶に新しいところです。

 これまで日産は数多くのコンパクトカーを販売してきましたが、なかには歴史を彩る重要なモデルも存在。

 新型ノートとともに日産の歴代FFコンパクトカーを、5車種ピックアップして紹介します。

●チェリー

 日産は1966年に大衆車の初代「サニー」を発売。マイカーが庶民でも買えるようになったことを象徴する1台でした。

 ちょうど同時期に欧州ではFFの小型車が普及しはじめており、日産はFRのサニーよりも小型のFF車「チェリー」を発売。

 1970年にデビューしたチェリーは日産初のFF車という記念すべきモデルで、ひとクラス上のモデルと同等の広さを誇る室内空間を実現。

 発売当初のボディバリエーションは2ドアセダンと4ドアセダンでしたが、1971年にはスポーティなクーペが登場しました。

 エンジンはサニー用に開発された1リッター直列4気筒OHVの「A10型」で58馬力を発揮し、トランスミッションをエンジンの下に配置する2階建て構造を採用して横置きに搭載。

 また、当時2代目サニーには高性能モデルがラインナップされて若者から人気となっていたことから、チェリーもスポーティな「X-1」シリーズを追加し、なかでも上位グレードの「クーペ X-1R」には4輪にオーバーフェンダーが装備され、エンジンもSUツインキャブ仕様の1.2リッターで最高出力80馬力までチューンナップされていました。

 しかしFRが主流だった時代とあって、チェリーの独特なドライブフィールや運転姿勢、ペダルレイアウトに違和感を覚えるユーザーが多かったことから、チェリーはサニーほどヒットせず、1974年に「チェリーF-II」へとモデルチェンジ。

 チェリーF-IIは大きく改良されましたが、やはりヒットしたとはいえませんでした。

●パルサー

 1978年にチェリーF-IIの後継車として発売された「パルサー」は、欧州市場を強く意識したコンパクトサイズのFFグローバルカーとして開発されました。

 ボディは3ドアと5ドアハッチバックを基本として、3ドアクーペ、4ドアクーペ、5ドアバンと多彩なラインナップを展開。

 発売当初はチェリーF-IIから継承された1.2リッターと1.4リッター直列4気筒OHVを搭載しましたが、さすがにライバルに対して古さは否めず、1981年のマイナーチェンジで、後に日産のFFコンパクトカーで主流となる1.3リッターと1.5リッターの直列4気筒SOHCに換装されました。

 また、同じくチェリーF-IIから受け継いだ3速セミオートマチックを搭載するなど、ユニークな面もありました。

 一気にモダンになったスタイルとコンパクトカーとして十分な性能から初代パルサーは人気を獲得し、その後の日産のFF車の基礎となり、サニーと人気を二分するモデルとして代を重ねました。

●マーチ

 日産初代「マーチ」は1982年に発売された新世代のFFコンパクトカーで、国内販売のみならず世界戦略車として開発されました。

 ボディは3ドアと5ドアハッチバックをラインナップし、巨匠ジウジアーロが手掛けた飽きのこないシンプルな外観が高く評価され、とくに女性を中心に人気を獲得して国内外でヒットを記録。

 当初、搭載されたエンジンは52馬力を発揮する1リッター直列4気筒SOHCのみで、トランスミッションは5速MTと4速MT、3速ATが組み合わされました。

 内装もシンプルなデザインで、装備も必要最小限にとどめることで安価な価格設定と700kg台の軽量な車重を実現し、アンダーパワーながらもキビキビとした走りを実現。

 1985年には高性能化の波をキャッチアップしてターボエンジンを搭載した「マーチ ターボ」を追加。さらに1988年にモータースポーツベース車としてターボとスーパーチャージャーを搭載する「マーチR」と、1989年にマーチRのストリート仕様「マーチ スーパーターボ」が登場します。

 ほかにもルーフをスライド式のキャンバストップとした「マーチ キャンバストップ」や、女性ユーザーに向けた仕様の「マーチ コレット」など、バリエーションを拡大。

 初代マーチは1992年まで販売されて2代目にバトンタッチしましたが、これは当時としては異例のロングセラーで、それほどまでに高い人気を保っていたということです。

新型ノート登場でコンパクトカーの勢力図は再び変わる!?

●ティーダ

 前述のとおり、かつて日産の小型車として主力商品だったのがサニーとパルサーでしたが、ルノー×日産アライアンスのもと、すべてを一新した次世代のコンパクトカーとして2004年に「ティーダ」を発売。

 ティーダも世界戦略車として開発されたモデルで、プラットフォームはルノーのモデルとも共有していました。

 外観は当時の日産が展開していたデザインコンセプトを反映したフロントフェイスに、比較的オーソドックスなフォルムの5ドアハッチバックのみでデビューし、少し遅れて4ドアセダンの派生車「ティーダラティオ」が登場。

 搭載されたエンジンは1.5リッター直列4気筒DOHCを搭載し、トランスミッションはCVTのみを設定。2005年には1.8リッターエンジンを追加し、6速MTが設定されました。

 その後、ティーダは改良を繰り返しましたがヒットには恵まれず、2012年に2代目ノートと統合され、一代限りで販売を終了。なお、ティーダラティオは「シルフィ」に統合されました。

 一方、海外では代を重ね、現在はロシアと中国ではティーダとして、欧州ではパルサーの名で販売が継続されています。

●ノート

 日産は、新型コンパクトカーの3代目「ノート」を2020年11月24日に発表。発売日は2020年12月23日の予定です。

 3代目の外観は先代を継承したフォルムの5ドアハッバックで、フラッシュサーフェイス化されたフロントフェイスに一新。Vモーショングリルと一体化した薄型のヘッドランプが特徴で、日産の新エンブレムを市販モデルとして初めて採用しています。

 ボディサイズは全長4045mm×全幅1695mm×全高1505mm-1520mmと5ナンバーサイズを受け継いだだけでなく、先代よりも全長が55mm短くなるなどダウンサイジングされました。

 内装ではセンターのディスプレイと一体化した液晶モニターによるメーターを採用するなど、先進性をアピールしています。

 そして、3代目最大のトピックスは全車に「e-POWER」パワートレインを採用したことです。

 e-POWERはエンジンで発電をおこない、駆動はモーターでおこなうシリーズハイブリッドと呼ばれるシステムで、モーター駆動ならではの発進時から最大トルクを発揮する出力特性を持ち、クラスを超えた加速力と低燃費を実現することで、2代目の大ヒットにつながりました。

 3代目のパワーユニットでは発電用のエンジンは1.2リッター直列3気筒と変わっていませんが、最高出力が79馬力から82馬力に向上。

 駆動用モーターも最高出力が従来の109馬力から116馬力にパワーアップしており、さらに加速性能の向上が期待できます。

 発電用のエンジンは1.2リッター直列3気筒を踏襲していますが、最高出力が79馬力から82馬力に向上しています。

 新型ノートの燃費はWLTCモードで28.4km/Lから29.5km/Lを達成。

 アクセルペダルのみで発進から減速、停止までできる「e-POWER Drive」も継承されるなど、独創的な乗り味と優れた経済性を受け継いでいます。

 また、「プロパイロット(ナビリンク機能付)」を日産の国内モデルで初搭載するなど、先進安全技術も大きく進化しています。

 価格(消費税込)は202万9500円から218万6800円で、4WDモデルも2020年12月に正式発表される予定です。

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 日産は国産メーカーでも早期にFFの登録車を手掛けており、50年もの長い歴史があります。

 チェリー発売の頃はノウハウも無かったことからかなり苦労したようですが、大きな転換期となったのは、やはり初代マーチの登場ではないでしょうか。

 現行型マーチは2010年に発売され、すでに10年になるロングセラーモデルで、新興国でもベーシックモデルとして販売されています。

 2020年7月に安全技術のアップデートを中心とした改良がおこなわれましたが、近年は存在感が希薄になってしまいました。

 欧州などでは「マイクラ」として完全に別車種で展開されるなど、今後の存続が心配されますが、一時は日産の小型車の主力だったこともあるマーチの復権が期待されます。