三菱のミニバン「デリカD:5」の売れ行きが好調です。2007年1月の登場から14年が経過したモデルなのに、安定的に売れ続ける理由とは何なのでしょうか。

14年が経過した「デリカD:5」はなぜ売れるのか?

 三菱のミニバン「デリカD:5」の発売は2007年1月に遡り、すでに14年を経過していますが売れ行きは堅調です。
 
 2020年1月から12月の登録台数ランキングを見ると、堅調に売れている車種はいずれも設計が新しいモデルばかり。
 
 設計が古くても売れている車種は、発売後から8年から10年が経過する程度ですが、なぜデリカD:5は14年も前に登場したモデルなのに安定的に売れ続けているのでしょうか。

 2020年はコロナ禍の影響を受けながら、デリカD:5は1か月に1000台近くを登録。三菱の登録車では、もっとも多い売り上げを誇っています。

 また、デリカD:5よりも設計が新しいたホンダ「オデッセイ」(2013年発売)、日産「エルグランド」(2010発売)を上まわる売れ行きです。

 コロナ禍の影響を受ける前の2019年には、デリカD:5は1か月平均で1674台を登録。この売れ行きもミニバンの中堅レベルで、設計の古さを感じさせません。

 デリカD:5が選ばれている一番の理由は、ほかのミニバンでは得られない複数の魅力を備えることです。

 2019年にはフルモデルチェンジに匹敵するマイナーチェンジを受けて、内外装や走行性能、乗り心地、安全装備、運転支援機能まで大幅に進化。

 そのなかでもっともわかりやすい魅力は、ミニバンスタイルのSUVと表現される外観デザインでしょう。

 フロントマスクは、「ダイナミックシールド」と呼ばれる、いまの三菱車に共通するデザインで、SUVの力強さを表現しています。

 グリルの両側にLEDヘッドランプを縦方向に2列ずつ並べる配置はデリカD:5の特徴です。

 最低地上高は185mmと余裕があり、悪路のデコボコも乗り越えやすいです。プラットフォームや4WDシステムは、基本的にSUVの「アウトランダー」と共通。

 前後輪に駆動力を振り分ける4WDの多板クラッチには、締結力を強めるロックモードも採用するなど、ミニバンではナンバーワンの悪路走破力も、デリカD:5の大切な魅力です。

 走りに関するデリカD:5の特徴として、2.2リッター直列4気筒クリーンディーゼルターボもあります。かつてはガソリン車も設定されていましたが、現在ではディーゼル専用車となりました。

 ハイブリッド車を設定するミニバンは、トヨタ「ノア/ヴォクシー/エスクァイア」や日産「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」など数多くありますが、ディーゼル車を設定する国産車はデリカD:5とトヨタ「グランエース」のみです。

 デリカD:5のディーゼルエンジンは、最高出力が145馬力(3500回転)、最大トルクは38.7kg-m(2000回転)。

 ガソリンエンジンに当てはめると3.5リッター並みの最大トルクを、わずか2000回転で発生。発進直後から加速力に余裕を感じます。

 デリカD:5の車両重量は1900kgを超えますが、ボディの重さやパワー不足はありません。

 このエンジン特性は、悪路をゆっくりと進む場面でも有利です。アクセルペダルを軽く踏むだけで強い駆動力が発揮されるため、高速道路を巡航するときも運転しやすいです。

 燃費性能も優秀です。ディーゼルが使用する軽油価格は1リッター当たり115円前後で、レギュラーガソリンに比べて約20円安いです。

 デリカD:5のWLTCモード燃費は12.6km/Lで、走行コストは1km当たり9円程度でしょう。

 この金額はノーマルエンジンを搭載するトヨタ「シエンタ」の4WDなど、コンパクトミニバンと同等です。車両重量が2トン近いミニバンとしては、経済性にも優れています。

 また、デリカD:5は背の高い角張ったミニバンなので、車内の広さにも余裕があります。

 全長が4800mm以下のミニバンでは、居住空間がもっとも広く、多人数で快適に乗車可能。3列目シートを畳めば、4名で乗車して、荷物をタップリと積めます。

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 デリカD:5が長い間フルモデルチェンジしていないことについて、三菱は次のように説明します。

「デリカD:5のコンセプトがお客さまに受け入れられており、好評なものは変える必要がないとの判断により、フルモデルチェンジではなく2019年にビッグマイナーチェンジをおこないました」

 デリカD:5は、外観や4WDの悪路走破力がSUVに近く、ディーゼルエンジンを搭載。

 車内は広く、ミニバンとしての実用機能も優れています。これらの特徴は、ほかの車種では得られないために息の長い人気車になったというわけです。

デリカD:5は資産価値が高い!?

 2019年のマイナーチェンジで大きな進化を遂げたデリカD:5ですが、このタイミングで、従来型から改良後の現行型に乗り替えるユーザーが増加。登録台数も一層伸びました。

 デリカD:5の新車価格は、大半のグレードが400万円を超えます。

 新車価格が高額なので中古車にも注目が集まり、その結果、中古車価格が高まってユーザーが売却するときの金額を押し上げました。デリカD:5は資産価値も高いのです。

 残価設定ローンの残価率(新車価格に占める残価の割合)も高く、3年後で新車時の55%に達します。

 ほかのミニバンの残価率は43%から48%なので、デリカD:5は高値で売却できることを示しています。

 そしてデリカD:5に独特の魅力があり、高値で売却できると、デリカD:5を何台も乗り継ぐユーザーも増えます。

 デリカD:5はクリーンディーゼルターボを搭載するので、購入時に納める環境性能割(旧自動車取得税)や自動車重量税が非課税です。2020年度の実績では、申請すれば経済産業省による1万5000円の補助金も交付されます。

 自動車税、自動車重量税が軽減される優遇措置(通称:エコカー減税)については、これまでの一律100%減税から除外され一部車種の対象となりますが、これまで税金関連の出費を抑えられたことは、フルモデルチェンジをしないデリカD:5が安定的に売れ続ける理由だといえます

 その一方で選ぶときの注意点もあります。最低地上高に余裕を持たせたこともあり床が高く設定されており、低床設計のステップワゴンなどと比べると、乗り降りがしにくいです。

 また、3列目シートの跳ね上げにも力を要します。

 ボディはミドルサイズに収まりますが、最小回転半径は5.6mと少し大回り。視線の位置が高いので遠方の様子はわかりやすいですが、死角は大きめです。

 死角を補うために、マルチアラウンドモニター(標準装着か6万500円でオプション設定)が欲しいです。購入時には、車庫入れや縦列駐車も試したほうがよいでしょう。

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 いまはSUVが人気のカテゴリーになりましたが、SUV感覚のミニバンは意外に少ないです。その意味でデリカD:5は貴重な選択肢だといえます。

 独自の価値を築いた商品は、長く愛用されるわけです。デリカD:5の根強い人気は、クルマに限らず商品開発のヒントになると思います。