コロナ禍の影響もあって、密を避けられる移動手段としてクルマへの注目が高まるなか、ペーパードライバーのなかには久しぶりに運転をするという人もいるのではないでしょうか。忘れてしまった運転のコツなどを、教習所の元教官に聞いてみました。

発進する前に確認したい3つのこととは?

 3密を避けられる移動手段としてクルマが注目されていますが、運転免許を取得したのに何年も運転していないペーパードライバーのなかには、久々にクルマを運転することになったり、または運転を再開しようと考える人が増えているようです。

 ペーパードライバーや久々に運転する人は、どのようなことに注意して運転したらよいのでしょうか。都内の教習所に勤めていた元教官に、いくつかのポイントを聞いてみました。

●運転席周りの配置を確認する

 ペーパードライバーのなかには、運転席に座ることが久しぶりという人もいるでしょう。元教官は、「いきなりクルマを動かそうとせず、まずは運転するクルマの運転席周りの配置を確認してほしい」といいます。

「免許取得から何年も運転していないと、各操作系の配置や名称を忘れてしまっているものです。ハンドルやアクセル、ブレーキなどのペダル類、メーター類の配置や各種警告灯、ミッション、エアコンやナビ、オーディオのスイッチ類など、配置が車種によってかなり違います。まずは運転席に座って、そのクルマ特有の配置を確認してください」

 最近ではガソリン車だけでなくハイブリッド車や電気自動車(EV)などもあり、シフトレバーやメーター類の配置などもさまざまです。

「パーキングブレーキは忘れずに確認してください。以前はワイヤー式のハンドブレーキが一般的でしたが、足踏み式や電動式などもあり、解除方法が車種によって違います。

 初心者や長年運転していなかった人は、パーキングブレーキの解除を忘れがちです。エンジンをスタートさせる前に解除方法を確認しておけば、発進するときに慌てないですみます」(元教官)

●正しい位置にシートを調整する

 次におこないたいのがシート調整です。正しい着座姿勢が取れていないドライバーが多いといわれています。

「人は少しでも快適な姿勢を取りたがるものです。正しい着座姿勢は、ハンドルを握って少し肘に余裕があり、目一杯切ってもシートバックから体が離れない程度に近づいた距離で背もたれもそれなりに立っている角度です。

 かといって教習所で習ったような正しいポジションは窮屈に感じるひとも多いでしょうから、快適だと感じる姿勢から少し前に、背もたれも少し立ててください」(元教官)

●ミラー類の調整

 正しい位置にシートを調整したら、その次におこなうのはルームミラーやドアミラー(サイドミラー)の調整です。

 ペーパードライバーや初心者でありがちなのが、一生懸命調整した割に、運転中は前方に集中し過ぎてミラーをほとんど見ていないことです。

「ルームミラーは、リアウインドウ全体が映る位置が最適だといわれています。ドライバーの好みもあると思いますが、個人的にはより見えにくい助手席側のCピラーを少し広めに映るように調整するのをお勧めします。

 というのも、運転席側は、ドアミラーでの視認で後方確認しやすいのですが、感覚が掴みにくく、見落としがちな助手席側の斜め後方を見やすいようにアレンジしてもいいでしょう」(元教官)

 また、現在ではミラーレス(カメラ+モニター)なども登場しているドアミラー(サイドミラー)ですが、どんな角度で調整すべきなのでしょうか。

「ドアミラーに自車のボディサイドが3割程度映っているのがいいとされています。上下方向では、角度を少し下に向けて、ボディサイドが道路のラインや路肩からどれくらい離れているか確認しやすい位置に調整すれば、苦手な車両感覚も掴みやすくなるはずです」(元教官)

 ドアミラーを少し下向きにするだけで、斜め後方のクルマの視認性を確保しつつ、駐車場でのバック駐車などでもラインが見えやすいでしょう。

 実際、シフトを「R(リバース)」にするとミラーが自動で少し下を向き、より安全に後退できるような機能がついたクルマもあります。

スピードを出すことよりしっかり停止することを意識

●車両感覚を身につける

 ペーパードライバーや初心者にとって、もっとも苦労するといわれるのが「車両感覚」です。

 最近ではバックモニターやコーナーセンサーなどを装備するクルマも増えていますが、バック駐車や方向転換などをスムーズにおこなうには「車両感覚」が重要になってきます。

 そこで活用したいのが、ピラー(ルーフを支える支柱)です。

 セダンを例にすると、フロントウインドウの左右から生えているのが「Aピラー」、前席と後席の中間にあるのが「Bピラー」、ルーフ最後尾を支えながら強度を確保するため(たいていは)太くなっているのが「Cピラー」です。

「着座位置や形状によって誤差はありますが、ウインドウから見える周囲や道路・ラインとピラーとの位置関係を把握できれば、車両感覚は掴みやすくなります。

 右ハンドルかつ左側通行の日本では、左側のタイヤの位置はフロントウインドウの中央よりやや右寄りあたりの延長線上になるイメージです。

 またAピラーの下部分に位置するドアミラーから横方向に延長線を引いたあたりがクルマ前方の先端あたりと同じ距離になり、助手席側のBピラーの左下端は助手席側の後輪の延長線といった具合に、おおよその位置関係はどんなクルマでもほぼ一緒になっています」(元教官)

 運転に不慣れな人に多いのが、走行していると左右どちらかに寄り過ぎてしまうことですが、車両感覚を覚えておけば車線の真ん中を走行できるようになるそうです。

●メリハリのある運転を心がける

 久しぶりに運転する人は、スピードに対する恐怖もあってアクセルをあまり踏まない傾向があります。

 また、実際の走行ではタイミングの遅れから、ステアリング操作やブレ―キングなどのペダル操作も急になりがちです。

 スムーズに流れに乗れる運転になるには、どんなところがポイントなのでしょうか。

「運転にメリハリをつけることがポイントになります。アクセルを踏むなら必要な速度まで加速する、曲がるなら手前からしっかり減速してハンドルを操作するということです。

 ただし、このメリハリは急に大きな動作をすることではありません。スムーズな運転とは、周囲のクルマに迷惑をかけない、周囲のクルマから次の行動が予測しやすい動きをすることです。

 自分では安全運転のつもりでも、周囲より明らかに遅い速度しか出ていなかったり、曲がるのか曲がらないのかはっきりしないハンドル操作は危険です。

 そのためにも『きっかけは早く、動作は大きくゆっくり優しく』を意識して運転してください」(元教官)

●一定の力でブレーキを踏む

 また、運転でもっとも難しいのがブレーキ操作だといわれています。早めにペダルを踏みはじめているのになかなか速度が落ちず、最後に強く踏むことで急停車するいわゆる「カックンブレーキ」を防ぐコツはあるのでしょうか。

「ブレーキの踏みはじめはジワッと優しくが基本ですが、ポイントは道路上のどのあたりでどう止まりたいのかを瞬時に判断することです。その距離感を一定の踏力で止まれるように意識してペダルを踏み込みます。

 この一定というのが大きなポイントで、実際は手前で止まりそうなら弱めるなどの微調整で済ませられるようになり、自分が考えた位置で停車できるようになります。一定の踏力で操作する感覚を身につけましょう」(元教官)

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 ペーパードライバーにとって、慣れない運転はドキドキするものです。しかし、クルマは運転しないと上手くなりません。苦手だからと避けるのではなく、なるべくたくさん運転をして徐々に慣れていきましょう。

 そのためにも、着座姿勢やスイッチ類などの事前確認、車両感覚のつかみ方や一定の力でブレーキを踏むことなどを意識すれば、スムーズな運転ができると思います。