昭和の終わりから平成初期といえば日本がバブル景気にわいていた時代ですが、この頃には数多くの名車が誕生しました。なかでも歴代で最大のヒットを記録したモデルが、日産5代目「シルビア」です。高性能なエンジンを搭載したFR車で、美しいデザインをまとい、若者から圧倒的な支持を得ました。そこで、5代目シルビアはどんなクルマだったのか振り返ります。

バブル絶頂期に誕生したS13型シルビアを振り返る

 1980年代の終わりから1990年代の始め、日本はバブル景気にわきました。この頃はメーカーも潤沢な開発費を使うことができ、いまも語り継がれているような数多くの名車が誕生。

 そのなかの1台が、1988年に発売された日産5代目「シルビア」です。多くの人にはS13型シルビアと呼んだ方が馴染み深いでしょう。

 当時は2ドアクーペや3ドアハッチバックが隆盛を極めていた時代で、S13型シルビアも珍しい存在ではありませんでしたが、歴代で最大のヒット作になりました。

 そこで、S13型シルビアはどんなクルマだったのか、振り返ります。

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 まずはシルビアの歴史について簡単に触れてみたいと思います。

 初代シルビアは1965年に誕生しました。ベースとなったのはオープン2シーターのダットサン「フェアレディ」で、シルビアはクローズドボディの2ドアクーペとしてデビュー。

 当時はまだ庶民にとってマイカーを持つのは夢の時代ながら、シルビアの価格は高級車の「セドリック」を超える120万円に設定され、同世代の大衆車「サニー」の約3倍という浮世離れしたクルマでした。

 デザインを優先した結果、多くの製造工程が手作業でおこなわれていたことから価格が高騰し、わずか554台が生産されるに留まりました。

 その後ブランクを経て1975年に2代目が登場。サニーのシャシをベースに開発されたことで、若者でも手が出せる価格帯となりましたが、スタイルも性能も中途半端な印象は否めず、ヒット作にはなりませんでした。

 そこで、1979年に登場した3代目では直線基調のシャープなデザインに一新され、高性能なターボエンジンやDOHCエンジンを搭載したことで、若者から支持を得てヒットを記録。

 1983年に登場した4代目は流行のリトラクタブルヘッドライトを採用。デザインもクサビ型を強調するウェッジシェイプとし、エンジンもトップグレードにはDOHCターボが搭載されるなど、まさに走り屋御用達の硬派なクルマへと変貌しました。

 そして、1988年に5代目となるS13型シルビアが登場。デザインは4代目までの直線基調から曲面を多用した流麗なフォルムに変わり、ボディタイプは3ドアハッチバックを廃止して2ドアクーペのみになりました。

 ボディサイズは全長4470mm×全幅1690mm×全高1290mmと、現在の水準からするとかなりコンパクトです。

 外観で印象的だったのがフロントフェイスとテールで、どちらもヨコ長のライトを採用。とくに異型4灯式ヘッドライトに加え当時普及が始まったプロジェクターヘッドライトを設定するなど、グリルレスのガーニッシュと相まって精悍な顔となっています。

 サイドビューは低いボンネットから後端まで続く直線的なウエストラインと小ぶりなキャビンによって、美しくスピード感のあるフォルムを実現。4代目の硬派なイメージは消え、妖艶さが感じられます。

 内装も外装と共通の世界観でデザインされており、インパネまわりは加飾を控えたシンプルさと、極力直線を排除して曲面を多用したやわらかな印象です。

 また、シートはヘッドレスト一体のハイバックタイプのバケットシートで、こちらも全体が曲面で構成されており、乗員を包み込むようなフォルムを採用しています。

「アートフォース」のキャッチコピーふさわしい内外装のデザインは高く評価され、1988年のグッドデザイン大賞を受賞。これは1984年のホンダ3代目「シビック」に続く、自動車としては2台目となる快挙でした。

 ちなみに40年の歴史があるグッドデザインで、大賞を受賞したクルマはわずか5台のみです。

見た目だけでない! 秀逸な走りもヒットの理由

 5代目シルビアでは、グレード構成もこれまでにないユニークな呼称が導入されていました。トップグレードから順に「K’s/Q’s/J’s」と、トランプのキング/クイーン/ジャックになぞられています。

 実際にディーラーで配るノベルティとして、シルビアの写真を使ったトランプが作られたほどです。

 K’s/Q’s/J’sの差異はエンジンと装備によってわけられ、K’sには最高出力175馬力を誇る1.8リッター直列4気筒DOHCターボの「CA18DET型」を搭載。

 Q’sとJ’sは最高出力135馬力の1.8リッター直列4気筒DOHC自然吸気で、J’sは集中ドアロック、カセットデッキ、パワーウインドウ、電動リモコンミラーなどが省かれ、装備がQ’sよりも簡素化されています。

 外観にも微妙な差があり、エンブレム以外でもK’sはフロントバンパーにダクトが開いていたことから、すぐに判別できました。

 トランスミッションは全グレードで5速MTと4速ATを設定しています。

 足まわりも4代目から刷新され、フロントにストラット、リアがマルチリンクで4輪操舵の「HICAS-II」装着車を設定し、ブレーキはフロントにベンチレーテッドディスクを搭載した4輪ディスクを採用。また、K’sにはビスカスLSDが標準装備されました。

 このシャシによって優れた路面追従性と運動性能を発揮し、パワフルなエンジンと相まって美しい外観にふさわしい走りも獲得。

 1990年にはK’s/Q’sに装備を充実させた「ダイヤセレクション」を設定し、時代背景を反映した豪華装備のモデルをラインナップしました。

 さらに、1991年のマイナーチェンジでは次世代の2リッターエンジンである「SR20DET型/SR20DE型」に換装され、出力もそれぞれ205馬力、140馬力に向上しています。

 また、年代は前後しますがシリーズ初の試みとして、1988年にK’sをベースとした4シーターオープンカーの「コンバーチブル」が登場。

 販売はオーテックジャパンからで型式は「E-S13(改)」とされ、ボディから屋根とピラーを切り取り、電動のソフトトップを装着。クローズド状態ではベース車と同様なフォルムで、オープン状態ではソフトトップを格納することで、より美しく華やかなフォルムを実現しています。

 なお、コンバーチブルはキャラクターに合わせて、トランスミッションは4速ATのみとされました。

 5代目では販売チャネル違いの姉妹車「ガゼール」が設定されませんでしたが、1989年には3ドアハッチバッククーペでリトラクタブルヘッドライトの「180SX」が登場。

 当時の日産FRクーペラインナップは「レパード」「スカイライン」「フェアレディZ」と並び、シルビア、180SXによって、一応の完成形となりました。

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 5代目シルビアは走り好きだけでなく女性にも好まれ、いわゆる「デートカー」としての一面もあります。

 すべてを刷新した美しいボディに高性能なエンジンを組み合わせたことで、幅広いユーザー層に支持され、大ヒットへとつながりました。

 1993年には6代目の「S14型」にバトンタッチし、1999年にはシリーズ最終モデルとなる「S15型」が登場。どちらもS13型からキープコンセプトとなっていましたが、クーペ人気の低迷からS13型ほどのヒット作にはなりませんでした。

 生産終了から30年近く経つ今もS13型は人気が高く、多くのユーザーから愛されています。