クルマにとって大事なことは走行性能以外にも、環境性能や安全性能があります。そうした性能は一定の基準が定められており、改定もおこなわれ、新車を販売するには常に基準をクリアしなければなりません。しかし、クリアできずに消えていったモデルも存在。そこで、2000年代初頭に姿を消したスポーツカーを、5車種ピックアップして紹介します。

一気に消えたスポーツカーの名車たち

 新車を販売するには、さまざまな規制をクリアしなければなりません。なかでも代表的なのが排出ガス規制と安全基準です。

 どちらも一定期間が過ぎると強化され、規制に対する基準値や対応する項目が厳しくなっていきます。

 強化された規制に対して各メーカーは当然ながら対応をおこないますが、そうした対応が困難な車種は、フルモデルチェンジするか生産を終えるかの選択が迫られます。

 この規制強化で大きな転換期となったのが2000年に施行された「平成12年排出ガス規制」と、1998年以降に順次強化された安全基準といわれ、これらをクリアできずに消えていったスポーツカーが存在。

 そこで、2000年代初頭に一気に姿を消したスポーツカーの名車を、5車種ピックアップして紹介します。

●日産「スカイラインGT-R」

 1969年に誕生した日産初代「スカイラインGT-R」は、1973年に排出ガス規制の強化などを理由に2代目をもって一旦は消滅しました。

 そして、1989年にモデルチェンジされた8代目スカイラインをベースとした、第2世代のR32型 スカイラインGT-Rがデビューします。

 新世代のスカイラインGT-Rは、最高出力280馬力を発揮する2.6リッター直列6気筒DOHCツインターボ「RB26DETT型」エンジンを搭載。

 駆動方式は電子制御4WDシステム「アテーサE-TS」を採用し、さまざまな路面条件でも圧倒的な速さを誇りました。

 その後、1995年にR33型、1999年にR34型が登場。しかし、2002年にR34型は生産を終了し、GT-Rの系譜は途絶えることになりました。

 その最後を飾るモデルとして発売されたのが、特別仕様車の「スカイラインGT-R M・spec Nur/V・spec II Nur」です。

 両モデルに搭載されたエンジンは、ニュルブルクリンク24時間耐久レースや国内のスーパー耐久レースなどに使われたN1仕様をベースとし、ピストンやコンロッドに重量バランスの均一化を図った高精度バランス品が組み込まれていました。

 さらに、限定車専用装備としてゴールド塗装のシリンダーヘッドカバーが採用され、特別なエンジンであることを演出。

 販売内訳はM・spec Nurが250台で価格(消費税含まず)が630万円、V・spec II Nurが750台で610万円でしたが、どちらも発表当日に即日完売となりました。

●トヨタ「スープラ」

 4代目となるトヨタ「A80型 スープラ」はスカイラインGT-Rとはライバル関係にありましたが、4WDのスカイラインGT-Rに対してスープラはFRスポーツカーです。

 1993年に登場したA80型 スープラは、ロングノーズで流麗なフォルムが特徴的で、トップグレードの「RZ」は3リッター直列6気筒DOHCツインターボエンジンを搭載。

 最高出力280馬力を発揮し、トランスミッションは4速ATもしくは6速MTが組み合わされました。

 足まわりには前後ダブルウイッシュボーンを採用し、53:47というFR車では理想に近い前後重量配分を実現したことから、高い旋回性能を発揮。

 絶対的な性能はスカイラインGT-Rに分があったようですが、より軽量でスポーツカー然としたスタイルのA80型 スープラの人気も高く、今も世界中に数多くのファンが存在します。

 そしてA80型 スープラも、2002年に生産を終えました。

●三菱「GTO」

 かつて三菱のスポーツカーでフラッグシップの地位にあった「スタリオン」ですが、1982年に誕生して1980年代の終わりには設計の古さは否めず、新たなスポーツカーの開発が急務でした。

 そこで、1990年にスタリオンの実質的な後継車として誕生したのが「GTO」です。

 北米市場を意識したGTカーとして開発されたGTOは、全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mmのワイド&ローな3ドアファストバッククーペで、迫力あるフォルムは、まさに新たな時代の到来を表現したスポーツカーにふさわしいものでした。

 搭載されたエンジンは3リッターV型6気筒DOHCで、最高出力225馬力の自然吸気に加え、最高出力280馬力を誇るツインターボが設定され、駆動方式は全車フルタイム4WDを採用。

 スポーツカーらしいデザインの外観や、オールラウンドな走りが期待できる4WDのGTOは大いに魅力的な存在でしたが、2000年頃には人気が低迷していたこともあり、2001年に生産を終了しました。

最後となったモデルと、復活を遂げることになるスポーツカー

●マツダ「RX-7」

 マツダは1991年に、ロータリーターボエンジンを搭載した次世代のスポーツカー、アンフィニ「RX-7」(FD3S型)を発売。

 流麗なフォルムに255馬力のロータリー・2ステージツインターボエンジンを搭載し、名実ともにピュアスポーツカーとして一躍人気を獲得しました。

 外観はロングノーズ・ショートデッキ、さらにダブルバブルのルーフやリトラクタブルヘッドライトといった古典的なエッセンスを採用しつつも、複雑な曲面を組み合わせたことで斬新なスポーツカーフォルムを実現。

 さらに、ボンネットやサスペンションアームをアルミ製とすることで、車体の軽量化とともに優れたハンドリング性能を獲得しています。

 デビュー後も繰り返し改良がおこなわれ、1999年には最高出力280馬力に到達。より走りを極めた魅力的な限定車や特別仕様車も登場しました。

 しかし、強化された排出ガス規制をクリアすることなく、2003年に生産を終了。同年には実質的な後継車である「RX-8」が登場しましたが、自然吸気エンジンのみだったことからハイパワーなロータリーターボエンジン搭載車は、RX-7が最後のモデルです。

●日産「フェアレディZ」

 日産だけでなく日本を代表するスポーツカーの「フェアレディZ」は、1969年に誕生。これまで50年以上の歴史を刻んできましたが、とくに印象に残るモデルといえば4代目の「Z32型」です。

 Z32型 フェアレディZは1989年に発売され、R32型 スカイラインGT-Rよりも先に最高出力280馬力を実現。このZ32型がきっかけで、長きにわたって国内メーカーの馬力自主規制が始まりました。

 また、外観のデザインは3代目までのフォルムから一変して流麗かつワイドさを強調したフォルムとなり、国内外から高く評価されました。

 エンジンは前述の通り280馬力を誇る3リッターV型6気筒DOHCツインターボの「VG30DETT型」と、230馬力の自然吸気「VG30DE型」を設定。

 足まわりには新たに4輪マルチリンクを採用したことで、高い運動性能を発揮し、スポーツカーとしてのポテンシャルも一気に向上しています。

 しかし、排出ガス規制の強化だけでなく日産の経営状態悪化もあり、2000年に生産を終了して一旦はフェアレディZの歴史に幕を閉じました。

 そして、2002年にデザインを原点回帰し、エンジンも全車自然吸気に換えて復活を遂げ、もうすぐ7代目の登場が控えています。

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 まさに2000年代初頭はスポーツカーにとって冬の時代でした。ほかにも日産「シルビア」や三菱「FTO」などが同時期に消え、ホンダ「NSX」も2005年に生産終了となっています。

 しかし、2007年に日産「GT-R」が誕生し、2018年にNSXが、2019年にはスープラも復活しており、どのモデルも優れた環境性能と安全性能を実現しながら、かつてとは比べられないほどの高い走行性能を獲得。

 今後は新たな世代として、電動化や先進安全技術が充実したスポーツカーの登場も予想されます。