スズキ「ジムニー」といえば高い悪路走破性を誇るアクティブなイメージを持つクルマですが、日本古来の「侘び寂び」を感じられる静的な茶室が誂えられた仕様が登場しました。

まさに「動く茶室」となったジムニー。 なぜ誕生したのか?

 もはや、国民車といっても過言ではないスズキ「ジムニー」。現行モデルのデビューから3年が過ぎようとしていますが、その人気は衰えるどころか、空前のキャンプブームという追い風によってますます勢いづいています。
 
 高い悪路走破性などアクティブかつ動的なイメージのあるジムニーと、日本の侘び寂びを感じさられる静的な茶室が融合したモデルが誕生したといいますが、どのようなクルマなのでしょうか。

 ジムニー市場の拡大と共に、ここ数年成長しているのがアフターパーツマーケットです。

 ジムニー用のアフターパーツといえば、先代まではリフトアップサスペンションやオフロード走行を主眼としたエクステリアパーツが主体でした。

 しかし、現行モデルはマニアック層よりも多様な価値観を持った層が多いことから、アフターパーツマーケットも商品ラインナップが拡大しています。

 ジムニー=クロカン4WDという単一的な価値観では、もはやユーザーのニーズを満たせない状態にあるのです。

 それを示すかのようなジムニーが、京都発で発信されています。

 それが放送作家である小山薫堂氏と京都を中心にクラフツマンシップを軸にしたプロダクトを手掛けるKiwatokoがコラボした「茶室仕様のジムニー」です。

 Kiwatokoとは、京都で最大級の新車ディーラーネットワークであるマツシマ・ホールディングスが母体となっているカスタムブランド。京都に根付いている伝統工芸の技を活かしたカスタムをおこなっています。

 そのKiwatokoが、なぜ小山薫堂氏とコラボして、このような奇抜ともいえるカスタムジムニーを作ったのでしょうか。Kiwatoko広報の佐藤愛氏は次のように説明しています。

「このプロジェクトは、小山さんがある TV番組で“ジムニーをカスタムするのが夢”ということをおっしゃっていたのを、弊社のスタッフが拝見したことからご相談させていただきました」

 小山氏は、さまざまなアイデアを持っているだけでなく、伝統工芸にも造詣が深いことで知られる人物。

 伝統工芸をよく理解した小山薫堂氏とKiwakotoの価値観の融合によって生まれたのが茶室化したジムニーです。

 車内を見てみると、まず目に入るのが後部の誂え(あつらえ)。運転席と後部空間を仕切る障子は、まるでショーファードリブンカーのように上下します。

 雪見障子を思わせる、遊び心に溢れた部分です。棚は京都北西部・京北の杉を、指物の技術を使って作ったものだといいます。

 床には、い草の匂いが車内に充満しないようにと配慮して、和紙で作った畳が敷かれます。

 天井には落ち着きのある地色に金糸が織り込まれ高級感がさりげなく主張された西陣織のトリムが張られるなど、いずれも一流の職人が作ったものばかりです。

 リアドアにも、杉製の棚が設けられており、錺金具は漆でコーティング。もてなしの心を表す、特別な作りとなっています。ここは床の間に見立て、花を一輪添えたいところです。

 また、前席のシフトレバーに銀の「高蒔絵」を施し、亭主である運転手が経年の変化をそっと楽しめる遊び心も。

 小山薫堂氏は、茶室仕様のジムニーについてホームページ内で次のようにコメントしています。

「私の夢の一つであった『ジムニーをカスタマイズする』という企画が、形になりました。

 今回、茶室の洗練された空間を車の中に表現したいと思い、多くの職人の方の力をお借りしました。

 天気が良い日にこのジムニーで出かけ、景色の良いところでお茶を一服いただくのが今から楽しみです」

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 組み立て式のテーブルと椅子を外に出せば、立礼スタイルで一服の茶をいただけるようになっています。

 亭主であるオーナーが、水屋(車内)でお茶を点てて客人に差し上げる、そんな贅沢の極みジムニーなのです。

茶室仕様のジムニーの値段は…いくら?

「限られた空間に最大限の性能を盛り込んだジムニー、そしてわずか数畳の間取りのなかで無限の世界観を見出す茶室には、なにか通じるものがある」と佐藤氏はいいます。

 ちなみに、実際に京都の山をジムニーで走行した際、室内の特別な構造物はミシリともしなかったといい、「さすがはジムニーです」と佐藤氏も感心しきりのようでした。

 この茶室仕様のジムニーは、Kiwatokoで注文することができるそうですが、価格は仕様次第だといいます。

 予算によって、誂えを決めていくことができるそうです。今回制作された仕様では「もう1台ジムニーが買えるくらい」だといいますが、寸分の隙もない至高の品でカスタムするともなれば、それも納得というものです。

 ひとつの価値観に縛られることなく、個々の世界で楽しめるのがジムニーの魅力。

 贅を尽くしたジムニーで山に入り、1人で野点を楽しむなんていうライフスタイルも良いのかもしれません。