2020年に生産を終えたベントレー「ミュルザンヌ」が、マリナーから5台限定で販売されることになった。しかもレアな「グランドリムジン」だ。どうしてこの時期にグランドリムジンが売りに出されたのだろうか。

「ミュルザンヌ・グランドリムジン」が5台限定で販売される

 ベントレーの最上級サルーンだった「ミュルザンヌ」は、2020年にその歴史に幕を閉じた。しかし、再びミュルザンヌを手に入れるチャンスが訪れることとなった。

 なんと、カスタマーからの個人的な要求に対応する社内ブランドとして存在する、ベントレー・マリナーから世界に向けて販売されることになったのである。

●新車のまま保管されていた5台のミュルザンヌ

 このプロジェクトは、新車時にアラブ首長国連邦のベントレー・エミレーツにデリバリーされながら、新車のまま保管されていた5台のミュルザンヌを用いておこなわれるものである。走行距離はゼロで、新車時のコンディションがそのまま維持されているミュルザンヌだ。

 しかもその5台のミュルザンヌは、マリナーの特筆すべきスキルと究極をデモンストレーションすることを目的に2015年に製作された「グランドリムジン」である。

 グランドリムジンは、全長を1000mmストレッチし、ルーフは79mm高くなっており、リアシートに身を委ねるVIPにゆとりあるスペースをもたらしている。さらに対面式のパッセンジャー用4シーターキャビンは、「スマートガラス」によって、完全に運転席からプライバシーが保証される。

 5台のグランドリムジンには、各々に異なったエクステリアとインテリアのフィニッシュが与えられる。5台の主な仕様は次のとおりだ。

・モロッコブルーを基調としたシルバーフロストの外装に、インペリアルブルーとリネンを基調とした内装にウォールナットベニアを組み合わせたもの。

・ダムソンのボディカラーに、ダムソンとトゥワインレザー、ダークスステインバーウォールナットの組み合わせ。

・オニキス(キャンディレッド)の外装に、ホットスパーとキャメルにオリーブアッシュの化粧板で仕上げられた内装。

・ルビーノレッドの外装に、ファイアーグローとトゥワインレザーのインテリア。

・ブラックサファイアの単色エクステリアカラーに、インペリアルブルーとキャメルのレザーによる内装に、ダークステインバーウォールナット材を組み合わせたシングルトーンのインテリア。

 5台の仕様は、それぞれにマリナーの現在的で象徴的な仕事が感じられるコンビネーションとなっている。

●VIPのなかのVIPに用意されたリアシート

 ミュルザンヌ・グランドリムジンのキャビン、すなわち4シーターのVIP用キャビンには、前向きの座席間にはクリスタルフルート(シャンパン用グラス)を備えたキャビネットが、また反対の後ろ向き座席間には飲料キャビネットが装備されている。

 各席にはベニア仕上げのピクニックテーブルも用意されており、iPadのドッキングステーションと充電ステーションを利用して、移動中にも快適に仕事を進めることができるという。

 外気温とともに英国時間、現地時間を表示する3つのハンドメイド文字盤の仕上げも、さすがはマリナーの作だ。

 空調システムも、マリナーによってグランドリムジンのために再設計された。

 ドライバーと通信するためのインターフォンシステムは過去にも採用例があるが、キャビンを前後に分割するスマートガラスはベントレーでは初の実装例になる。ボタン操作でパネル全体を透明から不透明へと切り替えることができるのは、完全なプライバシーという点で、その意義は大きいだろう。

 搭載エンジンは、512psの最高出力と1020Nmの最大トルクを発揮する、伝統の6.75リッターV型8気筒ツインターボだ。もちろんシャシとサスペンションも、マリナーによる専用設計となる。

 ミュルザンヌ・グランドリムジンのシルエットを見ていると、リムジンに良く見られる、無理に引き伸ばされた感覚がほとんどないことに気がつく。これもまたデザインの秀逸さであり、またマリナーの実力といったところなのだろう。

 公式な記録では、わずか5台が残されたのみのベントレー・ミュルザンヌ グランドリムジン。グランドリムジンともなれば、世界中のVIPが熱い視線を注がないわけはない。完売はおそらく時間の問題だろう。