今も昔も、クルマ好きが愛してやまないスポーツカー。とくに軽量なモデルはローパワーでも、ドライビングプレジャーは一級品です。そこで、日欧のクラシック・ライトウェイトスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。

ドライビングプレジャーあふれる超軽量スポーツカーを振り返る

 高性能なエンジンを搭載し、優れた足まわりによって、速く走ることに特化したクルマといえばスポーツカーです。外観も空気を切り裂くようなフォルムで、見た目にも速そうなモデルが定番でしょう。

 ひとくちにスポーツカーといってもさまざまな種類があり、実は定義も曖昧です。

 一方、スポーツカーの性能を突き詰めるうえで重要なのが車重で、ボディが軽ければ「走る・曲がる・止まる」のすべてに良い影響を及ぼします。

 もちろん、ボディが重くても速いクルマは存在しますが、軽量なクルマはちょっとしたカーブを曲がるだけでも楽しくなるものです。

 そこで、日本と欧州のクラシックなライトウェイトスポーツカーを、3車種ピックアップして紹介します。

●オースチンヒーレー「スプライト Mk.1」

 1950年代から1980年代にかけて、イギリスには大小含め数多くのスポーツカーメーカーが存在しました。そのなかのひとつが、BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)傘下の、オースチンヒーレーです。

 このオースチンヒーレーから1958年に発売された「スプライト Mk.1」は、いまも世界中のファンに愛されています。

 最大の特徴はフロントフェイスで、笑っている口のようなフロントグリルを配置し、その上方向に位置する丸目2灯のヘッドライトで構成され、日本では「カニ目」の愛称で呼ばれています。ちなみに、本国イギリスでは「フロッグアイ(カエルの目)」がニックネームです。

 ボディサイズは全長3480mm×全幅1326mm×全高1200mmと非常に小型な2シーターFRオープンカーで、量産スポーツカーでは世界初となるスチール製モノコックシャシを採用したことから、わずか660kgと軽量な車重を実現しました。

 搭載されたエンジンはBMC「ミニ」などにも搭載された948cc直列4気筒OHVの「A型」で、最高出力は43馬力とかなりローパワーながらも軽量な車体からレースでも活躍。

 その後、1961年に2代目となる「スプライト Mk.2」にモデルチェンジすると、フロントフェイスはMG「ミジェット Mk.1」と共通のデザインに改められ、初代のユニークな印象は薄らいでしまいました。

 なお、スプライトシリーズは安価な価格でヒットしたことから現存数も多く、イギリスでは部品が大量に販売されていることもあって、比較的楽に維持できるクラシックカーといえます。

●ロータス「エラン」

 イギリスのロータスといえばF1マシンに代表されるレーシングカーコンストラクターで、軽量なスポーツカーの生産に特化したメーカーでもあり、直近では最後の純粋な内燃機関のモデルとして「エミーラ」を発表して大いに話題となりました。

 これまで数多くのスポーツカーを世に送り出してきたロータスですが、日本でもっとも有名なのがミッドシップモデルの「ヨーロッパ」でしょう。

 しかし、ヨーロッパ誕生の礎にもなり、走りのポテンシャルが高いと評されたのがFRスポーツカーの「エラン」です。

 エランは1962年に誕生。鋼板製バックボーンフレームにFRP製の2シーターオープンボディを架装した構造で、後に脱着式のハードトップやクローズドボディも追加されています。なお、この構造は後にヨーロッパにも採用され、さらに2代目「エリート」や「エスプリ」などにも受け継がれました。

 外観はエンジンのバキューム圧を利用して開閉する、リトラクタブルヘッドライトを搭載したシャープなフロントノーズが特徴で、FRスポーツカーでは定番だった極端なロングノーズ・ショートデッキではなく、均整のとれたスタイリッシュフォルムです。

 初期のシリーズ1では車重はわずか640kgで、エンジンは欧州フォード製直列4気筒のブロック(OHV用)にロータス製DOHCヘッドを組み合わせた、いわゆる「ロータスツインカム」を搭載。1.6リッターから最高出力105馬力を発揮しました。

 足まわりはフロントがダブルウイッシュボーン、リアはストラットの4輪独立懸架で、優れたハンドリングを実現。

 エランはその後も改良が続けられてシリーズ4まで登場し、1973年に生産を終了しました。欧州だけでなくアメリカでもヒットしたことから、やはり今もパーツは豊富で、サードパーティ製も含めると新品のパーツがふんだんに入手可能です。

 なお、1990年に2代目エランが登場しましたが、高額かつFFを採用したことから人気とはなりませんでした。

●トヨタ「スポーツ800」

 トヨタの伝説的なスポーツカーというと1967年に誕生した「2000GT」ですが、この2000GTに先駆けて1965年にデビューしたのが「スポーツ800」です。

 外観デザインは、1962年の全日本自動車ショウ(現在の東京モーターショーの前身)に出展され、好評を博したコンセプトカーの「パブリカスポーツ」をベースとしています。

 パブリカスポーツは戦闘機のようにキャビン上部が前後にスライドするキャノピー構造でしたが、スポーツ800ではルーフが脱着式のタルガトップとなっており、ドアも一般的なヒンジドアに改められました。

 ロングノーズ・ショートデッキのボディは全長3580mm×全幅1465mm×全高1175mmと、現在の軽自動車とほぼ同サイズのコンパクトさで、風洞実験を繰り返したほど空力性能を重視した結果、ほぼすべての外板が曲面で構成されています。

 シャシと共にパワートレインもパブリカをベースとし、エンジンは800cc空冷水平対向2気筒OHVを搭載。スポーツ800専用にチューンナップされ、最高出力45馬力(グロス)を発揮しました。

 エンジンスペック的にはローパワーですが、アルミ製パーツを各所に使用するなどして、わずか580kgという軽量な車体を実現し、空気抵抗を低減したことから最高速度は155km/hとクラス以上の走行性能と、優れたコーナリング性能を誇りました。

 実際にスポーツ800は、パワーよりも軽量化と空抵抵抗の削減によって、出力以上の性能を引き出すという、大衆車ベースのスポーツカーにふさわしいコンセプトで開発されたといいます。

 その後、大きな改良もおこなわれないまま、1969年に生産を終了しました。

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 近年のスポーツカーは装備が充実していることもあって、大胆な軽量化は難しい状況です。

 そんなか、軽量化に奮闘しているのがスズキで、現行モデルの「アルト」のベーシックグレードは610kg(MT)、スポーツコンパクトカーの「スイフトスポーツ」は970kg(MT)という値を実現しています。

 このスズキの軽量化技術を活かして本格的なスポーツカーをつくれば、かなり魅力的なモデルとなりそうですが、残念ながらそうしたモデルの噂は今のところありません。