スバル新型「WRX」は新たに2.4リッターターボという高性能なガソリンエンジンを搭載し、走りが楽しいクルマを目指したといいますが、厳しさを増す燃費規制(CAFE)をクリアすることはできるのでしょうか。

2.4リッターターボ搭載の新型WRX登場

 自動車メーカーにとって「目立つ」ということは重要。普通のクルマばかり作っていたら価格勝負になり、収益率も悪くなってしまう。

 例えばシャネルやエルメスのバックは原価からすれば相当の収益率だと思う。日本のメーカーが同じような素材を使い、同じような機能&デザインのカバンを作っても、10分の1以下の価格しか付けられません。

 当然ながら自動車メーカーだってブランドイメージの重要性をわかっている。ただアプローチは違う。

 マツダを見ると動力性能についちゃ無視。デザインと完成度の高さでブランドイメージを作ろうとしているし、日産を見ると欧州の自動車メーカーのように電動化技術に代表される「環境対応車」で推している感じ。

 さて、ここにきてスバルが動き始めた。

 リーマンショックまでのスバルといえば性能の良さを訴求しており、市販車と同じ車体&技術を使いWRCに参戦し、世界トップと戦っていた。WRCがスバルを国際ブランドにしたといって良い。

 このイメージはいまでも強く残っており、アメリカですらラリーをスバルのDNAとしてアピールしているほどです。

 リーマンショックで世界レベルのモータースポーツから手を引いたスバルは、日米欧で違う戦略を取り始めた。

 日本についていえば説明するまでもなく、運転支援システム「アイサイト」を使った安全でイメージ作りです。上手にプロモーションしたこともあり、「衝突被害軽減ブレーキといえばスバル。スバルといえばアイサイト」というブランドイメージを作った。

 アメリカではWRCのイメージをそのまま継続。アメリカ国内のラリーにも参戦し続けている。また、AWD性能の高さを上手にプロモーションしており、現在の売れ筋は「アウトバック」に「フォレスター」、「XV」というSUVのラインナップ。

 欧州市場や東南アジア市場についていえばWRCから撤退した後は販促材料がなく、現在ほぼ壊滅状態です。

 スバルも「このままでいいのか?」と考えたんだろう。確かに状況を見ると厳しい。

 日本は衝突被害軽減ブレーキが当たり前になってきて存在感が薄れ気味。アメリカはSUVのライバル急増を受け、最近のスバルはドンドン車高を上げて存在感を出すなど(アウトバックなど最低地上高240mmのモデルを出した)派手さ勝負になってきた。

 折しもスバルの開発トップである藤貫さんは久々のクルマ通。おそらく「電気自動車が主役になるまでもう少し掛かる。それまでの間、スバルファンのため高性能のガソリン車も作りたい」と考えたのだろう。

 2.4リッターのターボエンジンを、アメリカだけでなく日本市場向けにも投入しようと動き始めた。その筆頭が新型「WRX S4」です。

 ここまで読んで「日本は厳しいCAFE/企業平均燃費があるため燃費が悪いエンジンは出せないでしょ?」と思うかもしれない。

 その通りなのだけれど、どうやら2022年の夏前に発売する電気自動車「ソルテラ」をたくさん売る、いや売れるクルマだと考えているようだ。二酸化炭素を出さないソルテラでCAFEを稼ぐということ。

 もう少しわりやすくいうと、ソルテラ1台と12km/Lの2.4リッターターボ車を1台売れば、平均燃費は24km/Lになるため余裕を持ってCAFEをクリア出来るという戦略である。

 ソルテラで環境対応技術をアピールする一方で、パワフルな2.4リッターターボを搭載した楽しいガソリン車を出す。藤貫さんらしい素晴らしい商品戦略だと思う。

 しかし、自動車は性能だけだとブランド作りなど出来ない。

 考えて欲しい。街中でのケンカ(動力性能)が強いだけじゃ尊敬されない、というか単なる乱暴モノ。WRCで作り上げたスバルの魅力は「格闘技のための強さ」です。

 単なる高性能車だと「どこで実力を出すの?」ということ。やはり競技に出てこそブランドイメージになる。

 この点、おそらく藤貫さんは認識していると思う。ただ漏れ伝え聞くところによれば、中村社長が「競技は必要最小限に」と考えているらしい。

「トヨタみたいに余裕あったら競技で使ってもいい。ウチはスーパーGTとニュルだけで十分」ということ。

 社内から「世界と戦いたい」という声が出ているようながら、その気はないようだ。残念!