近年、日本でもっとも売れているクルマは軽自動車です。軽自動車という言葉が誕生して、すでに70年以上も経ちますが、最初にヒットしたのは1960年代のなか頃から1970年代で、さまざまな種類のモデルが誕生しました。そこで、昭和の時代に登場したかわいい見た目で高性能な軽自動車を、3車種ピックアップして紹介します。

かわいくてかっこよくて、高性能な軽自動車を振り返る

 ここ数年、日本の自動車市場でトップセラーに君臨しているのが軽自動車です。1949年に法津上で軽自動車が制定されて以来、すでに72年もの歴史を刻んできました。

 軽自動車とは日本独自の自動車規格であり、最初に普及が始まったのは1960年代のなか頃からといわれています。

 その後、1970年代初頭まで爆発的に数が増えて、庶民の足としてだけでなく物流を支えたり、高性能なモデルも誕生しました。

 そこで、最初に全盛期を迎えた1970年前後に登場した軽自動車のなかから、かわいい見た目で高性能なモデルを、3車種ピックアップして紹介します。

●スバル「R-2」

 1958年にスバルは、同社初の市販4輪自動車である「スバル360」を発売。マイカーを持つことを夢から現実に変えたといわれる、日本の自動車史に輝く名車です。

 スバル360は改良を重ねてロングセラーとなり、1969年8月に後継車の「R-2」が登場しました。

「てんとう虫」の愛称で呼ばれたユニークなスタイルのスバル360と異なり、R-2はオーソドックスな2ボックススタイルを採用。個性は薄れましたがスバル360よりも格段に広くなった室内によって、居住性は大幅に改善されました。

 リアに搭載されたエンジンは360cc2サイクル空冷2気筒をスバル360から引き継いで、標準モデルでは最高出力30馬力を発揮し、400kg強という軽量な車体には十分な出力でした。

 そして、1970年にはスポーツバージョンの「R-2 SS」をラインナップ。ツインチョークのキャブレターを装着してチューンナップされたエンジンは、最高出力36馬力を誇りました。

 また、外観ではフロントにカナード状のスポイラーと、砲弾型フェンダーミラー、フォグランプが装着され、内装ではスポーツシート、タコメーターが装備されるなど、見た目にもスポーティな演出が施されました。

 さらに、R-2 SSよりもエンジンはデチューンされながらスポーティな装備の「R-2 スポーティデラックス」も追加されます。

 1972年には水冷エンジンを搭載するシリーズが追加されましたが、同年にはよりモダンなデザインの初代「レックス」にバトンタッチ。空冷モデルのR-2はしばらく併売されましたが、1973年に生産を終了しました。

●ホンダ「Z」

 360ccエンジン時代の軽自動車市場では、各メーカー間でパワー競争が勃発しました。

 そのきっかけとなったのが1967年に誕生したホンダ「N360」で、ライバルが25馬力前後だったところに31馬力(グロス、以下同様)を発揮し、FFの採用による広い室内を実現したことも相まって、大ヒットを記録。

 そして、1970年にはニーズの多様化からN360をベースに開発した軽自動車初のスペシャリティカー、初代「Z」が登場しました。

 ボディは3ドアハッチバッククーペで、フロントフェイスはN360の後期型「NIII」をベースに、よりモダンに仕立てた印象です。外観で特徴的だったのがリアハッチで、その見た目から「水中メガネ」の愛称で呼ばれました。

 上位グレードのエンジンはN360にも搭載されたツインキャブレターの360cc空冷4サイクル2気筒SOHCで、最高出力36馬力を発揮。タコメーターのレッドゾーンは9000rpmからと、オートバイで培った技術によって高回転化を可能としていました。

 サスペンションはフロントにストラット、リアはリーフスプリングの車軸式と、シンプルな構造はN360と同様でしたが、1971年には、フロントに軽自動車初のサーボ付きディスクブレーキを搭載し、5速MT、ラジアルタイヤ、スポーツシートなどが装着されたスポーツモデルの「Z GS」が登場しました。

 その後、同年12月には水冷エンジンに換装され、1972年にはピラーレスハードトップとなるなど、よりスペシャリティカーとしてのイメージが向上しました。

 しかし、ホンダは初代シビックの生産に注力することから、1974年にZの生産を終了しました。

●マツダ「シャンテ」

 現在、マツダは「CXシリーズ」に代表されるSUVと、プレミアムなコンパクトカーがラインナップの主力ですが、4輪自動車の歴史は軽自動車の「R360クーペ」から始まりました。

 その後も数多くの軽自動車を世に送り出していましたが、そのなかの1台ですごい計画があったモデルが1972年に発売された「シャンテ」です。

 ボディは傾斜したCピラーによってスタイリッシュなフォルムの2ドアクーペで、精悍なフロントフェイスと四角いテールランプが外観の特徴です。

 エンジンは最高出力35馬力を発揮する360cc2サイクル直列2気筒をフロントに搭載して、リアタイヤを駆動するFRを採用。

 シャンテは優れたデザインにパワフルなエンジンと意欲作といえましたが、ライバルに対して販売は低迷し、1976年に生産を終了。一旦、マツダの軽乗用車は消滅することになりました。

 しかし、マツダはシャンテに新開発のシングルローター・ロータリーエンジンの搭載を計画していたのです。

 あらゆる車種にロータリーエンジンを搭載するフルラインナップ化の一環で、シャンテ ロータリーの試作も完了していましたが、結局、運輸省(現在の国土交通省)からの認可が取れず、発売を断念したといいます。

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 360cc時代の軽自動車はパワー競争の激化の後には排出ガス規制の強化があるなど、激動の時代を生きたモデルといえます。

 また、技術的にも過渡期であり、まさにトライ&エラーが繰り返された歴史でもあります。

 一方で、軽自動車が画一化されていない頃で、さまざまなユニークなモデルも登場するなど、今では考えられないほどバラエティに富んでいました。