近年、世界的にも希少な存在となってしまったクルマが、コンパクトサイズのクーペです。かつては国内外のメーカーから多数販売されていましたが、現在は激減してしまいました。そこで、昭和の時代に登場した国産コンパクトクーペを、3車種ピックアップして紹介します。

1970年代に誕生した国産コンパクトクーペを振り返る

 現行モデルでは貴重な存在となってしまったのが、コンパクトなサイズのクーペです。かつは国内外のメーカーから多数ラインナップされていましたが、ニーズの変化から激減してしまいました。

 日本のメーカーでは1960年代から販売されており、昭和から平成にかけては走り好きの若者を中心に絶大な支持を得ていました。

 しかし、近年は使い勝手の良いミニバンやSUV、コンパクトカーの台頭で2ドア/3ドアのクーペはニーズが低下し、次々と生産を終え、現行の国産モデルではスバル「BRZ」と、もうすぐ正式に発売されるトヨタ「GR 86」しか存在していない状況です。

 そこで、往年のクーペのなかから、昭和の時代に誕生したスタイリッシュなモデルを、3車種ピックアップして振り返ります。

●ホンダ「1300」

 ホンダは1969年に、同社初となる4ドアセダン「1300」を発売しました。1300は非常にユニークな1.3リッター直列4気筒空冷エンジンを搭載したモデルで、これをフロントに横置きに配置し、前輪を駆動するFF車として開発されました。

 そして翌1970年にはセダンと主要なコンポーネンツを共有した「1300 クーペ」が誕生。ラインナップはエンジンの仕様で大きくふたつに分けられ、シングルキャブで最高出力100馬力(グロス、以下同様)のスタンダード仕様「クーペ7」と、4連キャブを装着して最高出力115馬力の「クーペ9」で、どちらも当時の水準ではかなり高性能なエンジンでした。

 外観はセダンとの共通項はなく、空力性能も考慮した曲面で構成される王道のクーペフォルムで、FFの恩恵からクーペでも良好な居住空間を確保していたといいます。

 斬新でハイパワーなエンジンと美しいボディの1300 クーペでしたが、空冷エンジンの利点である軽量シンプルな構造とはかけ離れた「二重空冷」という複雑な構造で重いエンジンは、操縦性にも悪影響をもたらしてしまい、販売は好調とはいえませんでした。

 そこで1972年に車名を「145 クーペ」に改め、水冷エンジンに換装して再デビューとなりましたが、同年にホンダは初代「シビック」を発売して主力モデルとなったため、145は1974年に生産を終了しました。

●マツダ「カペラ」

 マツダは1963年に、大衆車の先駆けとなるモデル、初代「ファミリア」を発売。さらに1966年にはファミリアの上位に位置するセダンの「ルーチェ」が誕生し、ラインナップの拡充を進めました。

 そして、マツダが創業50年という大きな節目だった1970年に、ファミリアとルーチェの間を埋める新しい主力モデルとして、初代「カペラ」が登場。

 ボディは4ドアセダンと2ドアクーペの2タイプを設定し、クーペはロングテールの流れるようなフォルムが特徴で、高い空力性能から「風のカペラ」のキャッチコピーがPRに使われたほどです。

 搭載されたエンジンは、新開発の573cc×2ローター「12A型」ロータリーと、1.6リッター直列4気筒レシプロエンジンの2種類をラインナップ。12A型ロータリーエンジンは最高出力120馬力を誇り、初代カペラのパワーと斬新なデザインは高く評価され、1972年には米国の自動車専門誌で輸入車の最優秀車賞に選出されました。

 1971年10月にはロータリーエンジン車では初のAT(REマチック)も登場するなど、小型スペシャリティカーとしての存在感を強め、1974年に2代目へとバトンタッチ。

 2代目のボディは初代からキャリーオーバーしつつ、より洗練されたフロントフェイスに一新するビッグマイナーチェンジといえました。

●三菱「ランサーセレステ」

 1973年に誕生した三菱初代「ランサー」は、1969年に発売された「コルトギャラン」の下位に位置するエントリーモデルとして開発されました。コンパクトな2ドアクーペ/4ドアセダン、ライトバンをラインナップし、高性能なエンジンを搭載したスポーティなグレードを設定するなど、大衆車ながら国内外のラリーでも活躍。

 そして、1975年に「ギャランクーペ FTO」の後継車として、初代ランサーの派生モデルでファストバッククーペの「ランサーセレステ」がデビューしました。

 セレステとはラテン語で「青い空」を意味し、その名のとおり爽快でスピード感あふれる美しいフォルムの3ドアハッチバックボディをまとっていました。

 搭載されたエンジンは、当初1.4リッターと1.6リッター直列4気筒SOHCで、トップグレードの「1600GSR」には、ランサー譲りの最高出力110馬力を誇るソレックスツインキャブレター・エンジンが搭載されました。

 また、スタイリングはスポーツカーそのものでしたが、広いトランクルームに加えて、リアシートを前に倒すと室内後部に広大なスペースが生まれる構造となっており、ハッチバックのリアゲートと相まって、高い実用性からファミリー層からも人気となったといいます。

 その後、1979年のマイナーチェンジでは最高出力105馬力の2リッターエンジンを搭載した「2000GT」グレードを追加し、コンパクトなボディに大排気量エンジンを組み合わせるという、当時としては斬新なモデルとなり、アメリカでは若い女性ユーザーから人気を獲得しました。

 ランサーセレステは1982年に生産を終了し、同年にデビューした「コルディア」が実質的な後継車です。

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 1970年代の日本の自動車市場では、排出ガス規制の強化からスポーティなモデルにとって、性能をアピールできない冬の時代といえました。

 一方で、各メーカーともデザインで勝負する結果となったのか、今回紹介したモデル以外にもスタイリッシュなクーペが数多く誕生した印象があります。

 当時は当然ながら手書きのスケッチとクレイモデル(粘土を使った模型)でデザインされていましたが、美しいクルマをつくろうというデザイナーの熱意が伝わってくるのではないでしょうか。