私たちの生活に欠かせないクルマといえば、物流を担っている商用車です。バンやトラックは荷物の運搬に特化したクルマで、多くのモデルは機能を優先したデザインを採用しています。しかし、商用車のなかには見た目にもこだわったモデルも存在。そこで、秀逸なエクステリアの商用車を、3車種ピックアップして紹介します。

デザインにこだわった商用車を振り返る

 荷物の運搬に特化したバンやトラックは、私たちの生活に欠かせないクルマです。軽自動車から大型車まで、さまざまな種類の商用車が存在します。

 昭和から平成にかけてはすべての国産メーカーが商用車を生産していましたが、近年は撤退したメーカーがあるなど、バリエーションはだいぶ減ってしまいました。

 商用車でもっとも重要なのは積載性であり、限られたボディサイズのなかでいかに効率よく荷物を積めるかが問われます。

 そのため、外装のデザインは機能を優先する傾向にあり、画一的な印象なのは否めません。

 しかし、かつてはデザインにこだわった商用車も存在。そこで、秀逸なエクステリアの商用車を、3車種ピックアップして紹介します。

●日産「エスカルゴ」

 日産は1987年に、ネオクラシックなデザインの限定車「Be-1」を発売しました。Be-1のデザインやコンセプトは大いに話題となり受注が殺到し、1万台が抽選で販売されたほどです。

 そして、日産はBe-1に続き、クラシカルなデザインの「パオ」と「フィガロ」を限定販売し、後にこの3台は「パイクカー3兄弟」と呼ばれました。

 このパイクカー第2弾のパオと同時に1989年に発売されたのが、ライトバンの「エスカルゴ」です。

 エスカルゴの車名は、デザインのモチーフになった「カタツムリ」に由来し、「Cargo=貨物」のスペイン語読み「カルゴ」と「S(エス)」を組み合わせた造語「S-Cargo」で表記されました。

 パイクカー3兄弟が初代「マーチ」をベースにしていたのに対し、エスカルゴは初代「パルサー バン」をベースに開発され、エンジンは1.5リッター直列4気筒を搭載するFFです。

 丸目2灯のヘッドライトを配置したフロントフェイスが非常にユニークですが、さらにサイドビューではフロントガラスからルーフまでつながる曲面で構成され、カタツムリの殻を表現。

 商用車として重要な荷室の広さよりもデザインを優先していますが、荷室高は1230mmを確保しており、十分に実用的な設計でした。

 外観と同様に内装もユニークで、センターメーターやフランス車のような一本スポークのハンドルなど、当時としてはかなり斬新でした。

 また、インパネシフトのシフトノブと、ウインカーレバー、ワイパーレバーのデザインを統一するなど、デザイナーのこだわりが感じられます。

 エスカルゴは主に個人商店の荷物配達用に使われましたが、標準ルーフだけでなく商用車としては異例のキャンバストップも設定されるなど、レジャー用途も想定していました。

●ホンダ「TN-V」

 ホンダは2021年4月に、軽トラックの「アクティ トラック」の生産を終了しました。ホンダの4輪車生産は1963年発売の軽トラック「T360」から始まり、以来、軽トラックの生産を続けてきましたが、その歴史に幕を下ろしました。

 このアクティの前身となるモデルで、1972年にデビューした「TN-V(ティーエヌ・ファイブ)」は、軽トラックのなかでも、かなり異色のモデルでした。

 TN-Vのボディはオーソドックスなキャブオーバータイプですが、ユニークだったのがフロントフェイスで、軽トラックでは初となる丸目縦型4灯式ヘッドライトを採用。

 丸目縦型4灯式ヘッドライトの採用についてホンダは安全性の向上とアピールしていましたが、実際はライバル車にはない斬新さが強調されていたといえます。

 この丸目縦型4灯式ヘッドライトは1975年にデビューした後継車の「TN-7」にも引き継がれ、1977年まで販売されましたが、コスト的な問題からか、以降のモデルは一般的な2灯式となりました。

 なお、現在まで4灯式ヘッドライトを採用した軽トラックは、このTNシリーズ以外に存在しません。

●マツダ「ポーターキャブ」

 マツダの商用車というと、2020年に生産終了となった「ボンゴ」シリーズが最後の自社生産のモデルでしたが、マツダの歴史を遡ると初の自動車は3輪トラックだったことからも分かるとおり、これまで数多くの商用車を世に送り出してきました。

 そのなかの1台に、1969年に発売されたキャブオーバータイプの軽トラック「ポーターキャブ」があり、かなりユニークなデザインのモデルでした。

 フロントフェイスのデザインは狙ったと思われるほどかわいくて、とくに黄緑色のボディカラーを採用した1973年から1976年までのモデルは、別格にキュートです。

 さらに、1977年のマイナーチャンジでは、ヘッドライトのベゼルがブラックになり、今度はパンダのような顔になりました。

 その後、ポーターキャブは軽自動車規格の改定でボディも大きくなりましたが、フルモデルチェンジをおこなうことなく1989年に生産を終了。後継車はスズキからOEM供給された「スクラム トラック」で、現在も販売されています。

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 昭和の時代には1車種で多くのボディタイプを設定するのが一般的で、今では考えられませんが、トヨタ「クラウン」や日産「スカイライン」にもライトバンがラインナップされていました。

 さらに、ライトバンながらスタイリッシュなモデルや、装備が充実したモデルも存在したほどです。

 かつて個人商店のユーザーは、ライトバンをファミリカーなど普段使いするケースも珍しくなく、そうしたニーズに応えていたといえるでしょう。