内燃機関の歴史を振り返ると、熱効率をいかに高めるかが鍵でした。それに伴う出力の向上だけでなく、フィーリングの面も進化し、よりスムーズな回転の上昇が可能となりました。そこで、出力とフィーリングのバランスに優れたV型8気筒エンジンを搭載した日本車を、3車種ピックアップして紹介します。

V型8気筒エンジンを搭載した日本車を振り返る

 内燃機関を搭載した自動車が発明されてから120年以上の歴史があります。この長い年月の間にクルマは目覚ましい進化を遂げました。

 なかでもエンジンの進化は顕著で、熱効率は飛躍的に高まりました。また、それに伴う出力の向上のみならず、スムーズな回転の上昇といったフィーリングも改善が図られてきました。

 エンジンの分類のなかでもパワーやフィーリングを語るうえで重要な要素が気筒数で、現在は4気筒と3気筒が主流となっています。

 一方で、6気筒以上の多気筒エンジンは、高級車やスーパーカーといったハイパフォーマンスなクルマに用いられ、歴史的に見ても12気筒が至高の存在でした。

 しかし、12気筒エンジンはパワーと振動の面で有利な反面、エンジン本体の大きさや重量を考えると、V型8気筒(V8)が現実的に優れたエンジンといえるでしょう。

 そこで、V型8気筒エンジンを搭載した日本車を、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「クラウンエイト」

 前述のとおり、古くから高級車では多気筒エンジンが搭載されてきましたが、国産乗用車で初のV型8気筒エンジンを搭載したのは、1964年に発売されたトヨタ「クラウンエイト」です。

 クラウンエイトは2代目クラウンをベースに全幅とホイールベースを拡大したモデルで、主に法人の役員専用車やハイヤー向けに開発・販売されました。

 搭載された2.6リッターV型8気筒OHVエンジンは最高出力115馬力(グロス)を発揮。エンジンブロックとシリンダーヘッドがアルミ製とされるなど当時としては先進的な技術も導入され、軽量化と同時にスムーズな回転と高い静粛性を実現しました。

 ボディサイズは全長4720mm×全幅1845mm×全高1460mmと、2代目クラウンに対してホイールベースを50mm、前後トレッドを160mm、全長を120mm、全幅を150mm拡大することにより、それまでの国産車にはない堂々とした外観と広い室内空間となっていました。

 また、トランスミッションは2速ATを採用し、パワーステアリング、クルーズコントロール、パワーウインドウ、電磁ロックドア、電動式三角窓など、高級車にふさわしい装備を搭載。

 その後、1967年に登場した初代「センチュリー」にバトンタッチするかたちで生産を終了。センチュリーもV型8気筒エンジンを搭載していましたが、1997年に発売された2代目では、国産乗用車では唯一無二のV型12気筒エンジンが搭載され、大いに話題となりました。

●日産「フーガ 450GT」

 日産を代表する高級セダンとして長い年月にわたって販売された「セドリック/グロリア」でしたが、2004年に生産を終え、両モデルを統合するかたちで誕生したのが「フーガ」です。

 次世代の高級セダンとして開発されたフーガは、より洗練されたフォルムへと変貌。搭載されたエンジンは当初、2.5リッターと3.5リッターのV型6気筒「VQ型」でしたが、2005年には「プレジデント」や「シーマ」にも搭載されていた4.5リッターV型8気筒の「VK45型」を搭載した「450GT」が登場。

 GTの名にふさわしく最高出力は333馬力を誇り、「450GT スポーツパッケージ」では、19インチタイヤと専用にチューニングされたサスペンション、四輪操舵の「リヤアクティブステア」が装備され、スポーティな走りと高い走行安定性を実現しました。

 また、450GTでは左右4本出しのマフラーが装着され、迫力あるリアビューを演出。内装では本木目と本革がふんだんに使われるなど、日産のパーソナルセダンで最高峰に位置するモデルらしく、豪華に仕立てられていました。

 なお、2009年に2代目にフルモデルチェンジすると、全グレードともV型6気筒エンジンにスイッチされました。

●レクサス「LC500/LC500 コンバーチブル」

 現在、希少な国産ラグジュアリークーペとしてラインナップされているモデルが、2017年に誕生したレクサス「LC」シリーズです。

 LCは「SC」から継承されたフラッグシップクーペで、全長4770mm×全幅1920mm×全高1345mmという雄大なボディサイズを生かした、エレガントなフォルムをまとっています。

 低いボンネットフードからルーフラインへとつながるラインや、ドア部分が前後フェンダーより深く絞り込まれたダイナミックなプロポーションを実現。

 この美しいボディに搭載されるパワーユニットはシステム最高出力359馬力を誇る3.5リッターV型6気筒+モーターのハイブリッドと、最高出力477馬力を誇る5リッターV型8気筒自然吸気を設定しています。

 このV8エンジンはトヨタがレースエンジンの設計で培った技術が応用され、チタン製吸排気バルブの採用や鍛造クランクシャフトの軽量化などにより、高回転域まで気持ち良く伸び続けるトルク感とレスポンスを際立たせました。

 また、組み合わされるトランスミッションはトルクコンバーターを用いた10速ATですが、発進時を除くほぼ全域でロックアップする「Direct Shift-10AT(電子制御10速AT)」を搭載し、アクセル操作に即応するダイレクト感とスムーズな発進加速を両立。さらに、世界最速レベルの変速速度を可能にしました。

 そして、2020年6月にはソフトトップを備えたオープンモデルの「LC500 コンバーチブル」が加わるなど、国産パーソナルカーの最高峰に位置するモデルとして、存在感をさらに高めています。

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 一般的にV型8気筒エンジンは大排気量エンジンと同義といえますが、現在、世界的にも数が減ってしまいました。

 多くのV型8気筒自然吸気エンジンは、環境対応からV型6気筒や直列4気筒ターボに置き換えられているからです。

 今も高性能なアメリカ車は昔ながらの大排気量V型8気筒OHVエンジンを搭載していますが、ビッグ3もEVシフトを宣言しており、近い将来、V8車はさらに少数派になることは間違いないでしょう。