ここ数年、日本再上陸の噂が絶えなかった「ヒョンデ(旧ヒュンダイ)」ですが、2022年1月1日に日本の法人名称の変更をおこないました。果たして、再上陸の準備なのでしょうか。

ヒョンデの乗用車部門が再度日本上陸なるか?

 2022年1月1日、韓国「ヒョンデ(現代自動車、旧ヒュンダイ)」の日本法人は社名を「現代自動車ジャパン株式会社」から、「Hyundai Mobility Japan 株式会社」に変更しました。
 
 2009年には日本における乗用車販売から撤退したものの、2020年には公式ツイッターアカウント開設に加え、燃料電池車「ネッソ」のカーシェアを開始するなどヒョンデ日本再参入の噂は絶えません。

 ヒョンデは1947年に鄭周永が設立した現代工程建設株式会社(現在の現代グループ)がルーツです。

 1967年には現代自動車を創立し、フォードからの技術供与を受けながら成長していきますが関係は悪化し、新たに三菱自動車と関係を結びます。

 エンジンなどの技術供与を三菱から受けるだけでなく、デボネア、プラウディア、デリカ、キャンター、ザ・グレートなどの三菱車のライセンス生産もおこない、自社ブランドの車種として販売しました。

 ひと昔前の韓国車は価格が安い分、クオリティが最悪ともいわれていましたが、いまはまったく違います。

 自動車ブランド単体のクオリティに対する調査として、アメリカの品質調査会社「J.D.パワー」が毎年おこなっている「初期品質調査(IQS)」があります。

 これは各ブランドが販売した新車のなかで、100台あたりどれほどの問題が発生したかを調査するものです。

 2021年の北米市場における調査では、各韓国ブランドがフォードやシボレー、そしてトヨタなどをおさえる高評価を獲得しました。

 このように、今や韓国車は日本車やアメリカ車などと肩を並べるほどの存在にまで成長したわけです。

 日本では2001年に乗用車販売を開始します。

 日韓ワールドカップや、当時の韓流ブームなどに絡め、さまざまなプロモーション戦略を大々的に展開するも日本の消費者が求める高いレベルには合わず、販売は低迷。

 ついに2009年には日本での乗用車販売から撤退しますが、同年の累計販売台数は1000台にも満たない状況にまで陥っていました。

 なお、ユニバースなどのバスモデルの販売は現在も正規で輸入・販売がおこなわれています。

 撤退から11年後の2020年、日本におけるヒョンデに動きがありました。

 同年2月に東京ビッグサイトで開催された「第16回国際水素・燃料電池展 〜FC EXPO 2020〜」にて、水素で走るSUV「ネッソ(Nexo)」が出展されます。

 日本語の説明書きが用意され、展示車両も右ハンドル。そしてその車両にはすでに日本の自家用ナンバープレートが装着されていたこともあり、大きな反響を呼びました。

 また、ヒョンデの日本法人は2020年6月に公式ツイッターアカウントを開設し、ヒョンデの燃料電池車や電気自動車に関する情報の発信を始めます。

 それとほぼ同時期に、カーシェアサービス「Anyca」において、先述のネッソが一般向けに貸し出し開始となりました。

 このように、最初から大々的に再参入を発表するのではなく、じわじわと周りから固めていき、一般の反応を伺いながら再び名をあげていく戦略をとっています。

 また、2021年にはヒョンデ最新の電気自動車(BEV)、アイオニック 5も日本の自家用ナンバープレートを装着して走行する様子が横浜周辺で確認されました。

 2021年2月に発表されたアイオニック 5はヒョンデの電動ブランド「アイオニック」における最初のモデルで、それに続く形で複数モデルのローンチも予定されています。

 ヒョンデは以前にもハイブリッド車、電気自動車、そしてプラグインハイブリッド車の3形態から選べるアイオニックというモデルをリリースしていましたが、そのアイオニック生産終了を機に、新たに「アイオニック」ブランドを立ち上げました。

 ヒョンデの日本法人は以前からネッソとアイオニック 5の情報を発信しており、日本に再参入した際に実際に販売される可能性の高いモデルだと考えられます。

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 また、前述の法人名称の変更に関して、ヒョンデは次のように説明しています。

「弊社の将来戦略に基づき、お客様の期待に応えられる自動車会社を目指し社名を変更しました。次世代のモビリティ社会に貢献するために邁進する所存です」

ヒョンデ日本再進出のカギは? 2022年についに本格始動なるか

 実はここ1、2年の流れよりも前から、日本撤退後のヒョンデ車はたびたび日本で目撃されていました。

 そのひとつがヒョンデの高級車「ジェネシス」です。

 元々は「ヒョンデ ジェネシス」という高級セダンでしたが、2015年に「ジェネシス」ブランドとして独立以来、セダンやSUVなど6車種を展開しています。

 日本では韓国の在外公館が数台所有しており、東京・港区周辺であれば駐日本国大韓民国大使館の初代ヒョンデ ジェネシス(BH型)や、ジェネシスブランドにおけるフラッグシップ「G90(HI型後期)」を見かけることが出来ます。

 そのほか、横浜中心部であれば駐横浜大韓民国総領事館のG90(HI型前期)などが外交官車両として、通称「外ナンバー」を装着して走行する様子を度々目にすることができます。

 着実に日本再参入の準備を進めているかのように見られますが、いざ再参入したらどのような車種を実際に販売するのか、そのヒントが日本市場に参入していた時代のヒョンデにあります。

 大阪商業大学総合経営学部教授の孫 飛舟氏が2008年に当時の現代・起亜モーターズ海外政策分析部部長、宋 昌一氏と対談した際の紀要論文「韓国現代自動車のグローバル戦略について」というものがあります。

 そこでは、当時のヒョンデを取り巻く各市場の状況、そしてとくに日本市場ではどれほど苦労していたかが語られています。

 そのなかで、宋氏は今後の展望として、「日本が得意でない分野あるいは日本とは違う方式(戦略)を通じて食い込んでいくしかない」と語っています。

 新燃料や新車種の導入にも言及していますが、結局この対談から1年後、日本から撤退しました。

 筆者はここに再参入のカギがあると見ています。先ほど紹介したように、ヒョンデは先行して燃料電池車や、新型の電気自動車を日本に入れています。

 他国に比べて市場規模としてはまだまだ成長途中である車種群を、ヒョンデはチャンスと捉えているに違いありません。

 ネッソなどの燃料電池車、そしてアイオニックシリーズの新車種など、ヒョンデのカードは十分にあるでしょう。

 なお、ネッソに関してはすでに車両価格が補助金額とあわせて次世代自動車振興センターの公式ウェブサイトの「令和3年度 CEV補助金(2022年1月25日時点)」には、706万2091円(消費税抜)と明記されています。

 また、正規販売が開始されていないものの、2021年の段階では日本向けのウェブサイトやカタログもすでに公開済みで、保証期間については「5年又は10万km」とされているなど、着々と準備は進んでいるようです。

 また、個人的にはヒョンデ Nも導入されたら面白いでしょう。

 ヒョンデ Nはヒョンデのパフォーマンスモデル群で、現在はi20 Nやi30 N、ヴェロスターNなどのホットハッチ、セダンのエラントラN、そして小型クロスオーバーのコナNがあります。低価格かつスポーティーな車種を導入すれば、一定の層からは好評になるのではないかと予測します。

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 13年ぶりの日本、かつて勝負を挑むも敗れてしまった市場で、ヒョンデはどのように日本での存在を再びアピールすることになるのか、注目です。