クルマを運転していると、知らないうちにエンジンブレーキを使用しています。では、エンジンブレーキとはどのようなもので、いつ使うべきものなのでしょうか。

エンジンブレーキ使いすぎてない?ミッションを傷める可能性も

 一般的に「クルマのブレーキ」といえば、ブレーキペダルを踏んで減速・停車する「フットブレーキ」や、駐車時に使用する「パーキングブレーキ(サイドブレーキ)」をイメージする人が多いでしょう。
 
 一方で気づかぬうちに使用しているのが、「エンジンブレーキ」ですが、意図的に多用する場合に気をつけることはあるのでしょうか。

 フットブレーキは、主に「油圧」と「摩擦」が鍵となっており、ペダルを踏み込んだ力は「マスターシリンダー」と呼ばれるパーツへ伝わり、その圧力は「ブレーキフルード(オイル)」を経由して油圧を発生させます。

 その後、油圧が「ブレーキパッド」や「ブレーキシュー」と呼ばれるパーツへ伝達され、回転している車輪へ摩擦をかけて運動エネルギーを熱エネルギーに変え放出することでクルマの進行を止める仕組みです。

 人が持つ力だけでは車輪の回転を止めることができないため、こうしたパーツなどを介して油圧に変換し、パワーを増幅させて活用しているのがフットブレーキです。

 パーキングブレーキは、レバーを引くタイプや足で踏むタイプ、最近では電動タイプなどが存在し、駐車時にクルマが動き出さないようにするブレーキという役目が挙げられます。

 一方で、フットブレーキを踏まずに減速する「エンジンブレーキ」という減速方法もあります。

 これはエンジンの回転数(抵抗)を利用した減速方法のことで、アクセルから足を離してエンジンの回転数を落とす仕組みです。

 AT車では、走行時には通常「D(ドライブ)」で走行していますが、シフトレバーを「2/L/S」またはパドルシフトを「−(マイナス)」にシフトチェンジするほか、車種によっては「O/Dまたはスポーツ」のスイッチを押すことで、エンジンブレーキが強くかかります。

 MT車では、シフトレバーを6速から5速、3速から2速などにすることで、エンジンブレーキを強くかけることが可能です。

 このように、運転している限りアクセルを離すだけでエンジンブレーキが作用し、意図的にシフトダウンすることでより強く使用出来ます。

 そうしたなかで、SNSを見てみると「パッドが減ってきたからエンジンブレーキを使うようにしてる」「エンジンブレーキ使わないとブレーキシュー減るよ?」という声もあり、エンジンブレーキを使うことでブレーキパッドを節約できると考える人もいるようです。

 では、そんなエンジンブレーキを多用することはクルマにとってどのような影響があるのでしょうか。

 国産メーカーの整備士は、エンジンブレーキの多用による影響について以下のように説明します。

「エンジンブレーキを使用すること自体は、とくにクルマにとって問題にはなりませんが、負荷のかけ方によっては悪影響となる可能性があります。

 例えば、速度がかなり出ていてエンジンの回転数が上昇しているときに、突然エンジンブレーキをかけて回転数を無理に落とすと、そのぶんクルマへの負荷は大きくなります」

 このように、エンジンブレーキは使用自体が推奨されていないわけではありませんが、使用方法によっては悪影響をおよぼすことになりそうです。

 また、前出の整備士は「エンジンブレーキの多用については、故障した際のことを考えたほうが良い」として、その理由を以下のように話します。

「フットブレーキを多用すると、一般的にはブレーキパッドが消耗され、定期的に交換することになります。

 一方で、最近のAT車には『CVT』というトランスミッションが搭載されており、エンジンブレーキを多用すると、CVTに負荷がかかり故障の原因になる可能性があります。

 ブレーキパッドの交換費用はさほど高くありませんが、CVTの交換となると数十万円の費用がかかってしまいます」

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 さらに、整備士によると、ブレーキパッドは通常の街乗りの場合では早急に消費されるということはないため、消耗をそこまで細かく考える必要はなさそうです。

エンジンブレーキは積極的に使用したほうが良いケースも?

 エンジンブレーキの活用が推奨されるケースとしては、とくに下り坂の多い峠道での走行などが挙げられます。

 これは、下り坂においてフットブレーキを多用しすぎるとブレーキパッドが熱を持ち、放熱の限界を超えてブレーキの効きが悪くなる状態を「フェード現象」と呼びます。

 さらに、似たような状態としてブレーキを多用しすぎると、ブレーキパッドやブレーキディスクが熱を帯び、ブレーキフルードが沸騰してフルード内に気泡が発生する「べーパーロック現象」という現象も存在。

 フルード内に気泡が生じると、いくらブレーキを踏んでも、その圧力が気泡を潰すことで吸収され、ブレーキが効きづらくなる状態になってしまいます。

 こうした状態を避けるために有効とされているのが、エンジンブレーキの活用で、ブレーキパッドなどの熱負担を出来るだけ軽減することが可能です。

 そのため、山道などでは「エンジンブレーキ推奨!」「フットブレーキの使いすぎ注意」といった看板が設置されていることがあります。

 このようなことからも、エンジンブレーキは絶対に使用してはいけないというものではなく、ブレーキ、エンジンブレーキともに、適切なタイミングを考えて活用するのが最適です。