1970年代に放映された映画「トラック野郎」シリーズ。劇中に登場する“デコトラ”、「一番星号」は多くのファンに親しまれる1台です。そんな一番星号を再現した車両は、車検適合のためにさまざまな工夫が施されているようです。

根気と熱意と運によって製作された一番星

 1975年から1979年に放映された映画「トラック野郎」シリーズは、幅広い世代に人気の作品のひとつです。トラックドライバーである主人公・星桃次郎を中心に仲間たちのアツく愉快な人情物語が繰り広げられます。
 
 そんな主人公の愛車「一番星号」を個人で再現した車両が存在します。どのような経緯で製作され、大変だった部分とはどのようなことなのでしょうか。

 桃次郎の相棒となる一番星号は、トラック野郎のファンからも熱烈な人気を誇ります。

 一番星号は、シリーズによって仕様が違う部分もありますが、個人で再現した車両が存在します。

 この車両は、シリーズ9作品目である「熱風5000キロ」仕様に加飾を施し、忠実に再現したものでオーナーの齋藤氏が製作したました。

 キャビンのルーフ上に設置されている箱型の部分(フロントデッキ)には、きらびやかなパーツとともに「一番星」の文字が存在を主張。フロントガラスの下の部分にはブルーやゴールドの加飾が施され「度胸」「一番」と気合の入る2文字が記されています。

 前方バンパーはシルバーがベースで、形こそ派手ではありませんが、大きなインパクトを与える「御意見無用」の文字が記されています。

 側面には、豪快なトビウオのイラストとともに、右側に「日本列島ひとり旅」、左側には「一番星 桃次郎」の文字が描かれています。

 リアの扉絵には「俺の車にバックギアは無い」と書かれており、一番星号のシブさが強調されています。

 オーナーの齋藤氏は一番星号の製作理由について「トラック野郎が好きで、ずっと一番星号に乗りたいと考えていました。そこで『乗りたいなら作ってしまおう!』と思い立ち、再現車両の製作を決めました」といいます。

 ベース車両は、埼玉県に店を構える埼玉ボデーから購入し、加飾は群馬県伊勢崎市でボデー屋を営んでいたダイヤ工業に依頼したそうです。

 なお、内装の製作には、イベントで知り合った同じ趣味の仲間が加わったり、車内のふすまは齋藤氏の同級生が手掛けたりと、多くの人の協力を得たといいます。

 そんな一番星号の製作で、齋藤氏がもっとも大変だったと話すのが「パーツ集め」です。

 齋藤氏が再現車両を製作したのは、現在から約15年ほど前。再現車両には、基本的に劇中の一番星号と同様のパーツが活用されていますが、現在のように某オークションサイトやネット通販が発達していなかった当時は、パーツひとつ探すのにもかなりの労力を費やしたそうです。

「『どのメーカーのパーツなのか』といった段階からパーツ探しをはじめ、ありとあらゆるショップに足を運びました。

 一番星号には同様のパーツが複数使用されている箇所があるので、ひとつのパーツを見つけたら、それを持参してまた別のショップへ行き、同じパーツが無いか聞いて…。

 ほかのパーツについても写真を持ってショップをめぐり、1件1件に在庫の確認をしました。これがかなり大変でしたよ」(齋藤氏)

 どうしても見つからないパーツに関しては、類似したパーツを用いてオリジナルで製作することもあったそうですが、「とにかく劇中車両に忠実に」と、かなり似せるように工夫されています。

 また、トラックの後方を確認する大型バックモニターも、旧型のものにこだわり、「新しいのを代わりに購入して差し上げるので…」と、友人のツテで見つけた病院のレントゲン車から譲り受けたそうです。

「パーツ集め」は根気…「職人探し」は熱意? 完全再現の道のりは長かった?

 なお、再現車両に使用されているパーツ類は、現在かなり希少価値が高騰しており、某オークションサイトなどで高額で取引されている様子が見られます。

 このように、大変だったパーツ探しですが、齋藤氏は「友人のツテで見つけられたり、ひとつのパーツから次々欲しいパーツが見つかったり、ときにはショップの倉庫から偶然発掘されたこともありました。結果として忠実な再現車両を製作できたので、本当にタイミングや運が良かったと思います」と話します。

 また、齋藤氏によると「職人探し」も大変だったそうです。パーツが集まっていても、それを取り付けたり、加工したりするためには専門の技術が必要です。当時、そうした技術を持つ職人探しがやや難航したといいます。

 とくに、デコトラ特有のきらびやかなライティングの製作を担うネオン屋を探すのが大変だったそうで「面倒だ」「そんな派手なものはちょっと…」と断られることもあったそうです。

 そのうち、ひとつのネオン屋に齋藤氏の熱意が伝わり、数回の依頼を経てやっと製作を引き受けてくれたといいます。

 このように、齋藤氏の一番星号には、同氏の熱い想いに加え、一緒に完成させようと尽力した友人や周囲の人々の想いも込められています。単に完成度が高いだけでなく、そうした人々の想いも背負った1台となっているのです。

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 齋藤氏は、再現車両を街乗りなどには使用しておらず、基本的にはイベントなどへの展示にのみ活用しています。

 例外的な公道走行時や車検時などには、一部のパーツを取り外す必要があるそうで、蝶ネジで簡単に取り外しできるよう設置を工夫しているといいます。