日産は新型軽自動車「サクラ」を2022年5月20日に発表しました。同社にとって「リーフ」「アリア」に続くEV第三弾となるモデルですが、どのような特徴があるのでしょうか。

ついに日産新型「サクラ」発表! 日産EV第三弾の実力はいかに

 2022年5月20日、日産は新型軽自動車「サクラ」を発表しました。
 
 同社にとって「リーフ」「アリア」に続くEV第三弾となるモデルですが、どのような特徴があるのでしょうか。

 日産の経営ビジョンのひとつが「電動化」です。2010年に世界初の量産BEV「リーフ」を発売以降、着実に電動化の階段を登り始めている状況です。

 先日、日産のBEVシリーズのフラッグシップとなる「アリア」の納車が開始されましたが、それに続いてBEVシリーズのボトムラインを担うモデルが登場しました。

 それが「SAKURA(サクラ)」になり、同日に発売された三菱「eKクロスEV」とは兄弟車です。

 この辺りは「デイズ/eKクロス&eKワゴン、ルークス/ekクロススペース&eKスペース」と同じ関係になります。

 昨今、BEVに関するさまざまな記事が出ていますが、多くは「BEV推進派」と「BEV否定派」の対立ばかりです。

 正直、バカバカしいと思うのが本音で、筆者はどのパワートレインも一長一短があるからこそ、今は適材適所で使えばいいと考えています。

 恐らく、BEVは「航続距離」、「充電インフラ」が現時点では十分とはいえないというのが多くの人の意見でしょう。

 となると、1台で全てを賄う人にとっては厳しいかもしれませんが、複数所有が多い地方であれば選択肢のひとつとして考えられます。

 筆者はBEV普及のカギはここにあると考えており、用途や使用条件が限られるセカンドカーとして使うならば、逆にBEVにするメリットは多いと思っています。

 そこで日産が考えたのが、日本の国民車といっても過言ではない存在の「軽自動車」と「BEV」の融合というわけです。

 今回、発売に合わせて日産追浜試験場内の施設「グランドライブ」で試乗しました。

 ちなみにサクラは日産のBEVラインアップとしてはボトムラインを担いますが、その一方で日産の軽自動車としてはフラッグシップとなるモデルです。

 そんなことから、エクステリア/インテリア共にこれまでの軽自動車を超えるクオリティとデザインが与えられています。

 エクステリアは基本プロポーションこそデイズと共通ですが、フロントは薄型のヘッドランプとLEDによるVモーション、リアは一文字に光るテールランプなどアリアとの共通性を強めたデザインに仕上がっています。

 細部に格子(テールランプ)や水引(アルミホイール)といった日本の伝統をさり気なく盛り込んでおり、新日産デザインのコンセプト「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」もしっかりと表現。

 ただ、ひとつだけ残念なのは、前後に対してサイドの平面感が目立ってしまっていることです。

 これは軽規格ギリギリの全幅なので仕方ない所ですが、個人的には軽企画を超えたワイドフェンダー仕様がラインアップされていてもいいかなと。

 インテリアはデイズ/ルークスとは別物です。

 水平基調で奥行きがあるインパネデザイン、統合型インターフェイスディスプレイ、2本スポークのステアリングなどの採用により、その印象はまさに“プチ”アリアといった感じで、室内幅以外は軽自動車越えのクオリティと言っていいでしょう。

 パッと見は非常にスッキリ&スマートとした印象ですが、その弊害としてインパネ右下に追いやられた各種スイッチ類の使い勝手の悪さは少々気になる所です。

航続距離ばかり見てもしょうがない! 日本にあった軽EVとは?

 パワートレインはフロントにモーターを搭載。最高出力は軽自動車枠上限の47kW(64ps)ですが、トルクは軽ターボモデルの約2倍となる195Nmとなっています。

 リチウムイオンバッテリーは20kWhで床下に搭載、航続距離はWLTC複合モードで180kmです。

 パワートレインの印象は195Nmの力強さはもちろんですが、多くの軽自動車で感じるアクセルを踏んだときのモタツキがなく、瞬時にクルマがスッと前に出る感覚が嬉しいです。

 この辺りはモーターの特性のひとつ、応答性の良さによるものですが、車両重量に対してエンジン負荷が大きい軽自動車ではより強く実感します。

 走りの特性は3つのドライブモード(スタンダード/ECO/スポーツ)と1ペダルドライブ(完全停止はしない)が可能なeペダルステップON/OFFの組み合わせで、好みや走行シーンにあわせて選択が可能です。

 ちなみに1ペダルドライブのフィーリングは賛否が分かれますが、サクラのそれは車速によって減速度が変わるため、多くの人が違和感なく上手に使えると思います。

 もちろん万能なのは「ノーマル×eペダルステップON」ですが、個人的には「〇〇〇ccの余裕」と「スーッと転がる軽やかさ」が印象的な「ECO×eペダルステップOFF」と、「超滑らかターボフィール」と「メリハリある減速感」が印象的な「スポーツ×eペダルステップON」がお勧めです。

 シャシ周りは基本デイズと共通ですが、モーター搭載に合わせて新設計されたフロントのメンバーユニットやバッテリー搭載による重量増のためのボディ下部を中心とした補強、3リンクサスペンション(デイズのFFはトーションビーム式、4WDは3リンクだが、それと同じ?)などを採用。

 変更箇所が少ない=日産の軽シリーズは企画当初からBEVを視野に入れた設計だったのでしょう。

 ハンドリングは「トレッド広げました?」と思うくらい安定しており、見ために似合わず軽快な動きです。

 この辺りは軽にしては重いがBEVにしては軽い車両重量が効いているのでしょう。

 ハイト系では苦手なS字のような素早い切り返しが求められるコーナーでは、大舵角を与えてもシッカリとノーズが入るので安心感も非常に高い。

 この辺りは床下にバッテリーを搭載したことによる低重心化とそれに伴う下半身の剛性アップが効いているのでしょう。

 欲をいえば、シャシ側にまだ余力がありそうな感じがするので、タイヤはもう少しいい銘柄(例えばレグノGRレジェーラなど)を奢ってあげてもいいかなと。

 乗り心地に関しては重さを活かしている印象で、シットリした足の動きやアタリの優しさなどは、軽を大きく超えるレベル。

 バネ上のフラット感に関してはフラッグシップのアリアを超えるレベルといっていいです。

 ただ、タイヤの近くに座る後席ではコツコツ感がやや強めに感じる人もいるかも。

 一般的に内燃機関モデルとシャシを共用するBEVの多くはバッテリー搭載で居住空間(とくに上下方向)が犠牲になることが多いですが、サクラはフロア下のトンネルスペースにバッテリーを上手にレイアウト(高さが変えられるユニバーサルスタック)しているため、デイズに対して居住性/積載性は一切犠牲になっていない所は高く評価すべきポイントだと思います。

 先進安全技術は上級車顔負けの充実ぶりで、緊急停止支援付プロパイロットやプロパイロットパーキングなど軽初採用となるアイテムも用意されていますが、今回は未体験。

 運転支援デバイスの優秀性はデイズで体験済みですが、電動パワートレインのほうが制御のしやすさをふくめて相性はいいはずなので、期待していいと思います。

 開発陣が目指した「軽の概念を超える」という部分に関しては内外装/走りを含めて高いレベルで実現しているのは間違いないです。

 価格は233万3100円から294万300円(国の補助金を活用すると実質購入価格は約178万円から)とデイズの価格(132万7700円から191万5100円)と比べると高めの設定なのですが、「軽のBEV」ではなく「BEVの軽」といえるクルマになっていることを考えれば、個人的にはいうほど非現実的な値段ではないかなと。

 そして、多くの人が気になるのは「180kmの航続距離が実用に足りるのか?」という所でしょう。

 これは前述しましたが、1台ですべてを賄うにはちょっと辛い、複数所有でセカンドカーとして使うのならば実用に足りるレベルだと思っています(統計によると一般家庭の軽自動車1日の平均走行距離の約8割は100km未満というデータがある)。

 この辺りは色々と意見があると思いますが、筆者はBEVを選択する現実解としてはピッタリなモデルです。