三菱は軽自動車のEVとして新型「eKクロス EV」を発表しました。三菱の軽EVといえば「アイミーブ」が存在しましたが、新型eKクロス EVはどのようなところが進化したのでしょうか。

アイミーブの実質的な後継車として新型「eKクロス EV」登場

 2022年5月20日、三菱自動車が新型の軽自動車EV(電気自動車)「eKクロス EV」を発表し、同年夏に発売することを明らかにしました。

 ところで、三菱の軽EVといえば、事実上世界初の量産EVとなった先輩、「i-MiEV(アイミーブ)」をイメージする人もいるでしょう。

 i-MiEVは2009年6月に正式発表され、同年7月から法人などへの販売を開始。翌2010年4月からは個人向け販売をスタートし、世界に先駆けて一般ユーザーが普通に購入できる初めてのEVとなりました。

 i-MiEVは三菱自動車として欧州や北米など海外市場にも展開したほか、「イオン」としてプジョーに、「Cゼロ」としてシトロエンにもOEM供給。時代の新しい扉を開いたモデルとなりましたが、2021年3月に生産を終了しています。

 実質的な後継モデルとなる新型eKクロス EVは、そんなi-MiEVと比べてどのようなところが進化をしているのでしょうか。いくつかのポイントに着目してチェックしてみましょう。

 まずは動力性能です。

 i-MiEVのモーターは最高出力47kW(64馬力)、最大トルク160Nmでした。注目は最大トルクで、ガソリン車の「eKクロス」のターボモデルが100Nmですから、その1.6倍にもなります。モーターを活用することで軽自動車の枠を超えた加速を実現した軽自動車だったといって良いでしょう。

 一方の新型eKクロス EVは、最高出力こそ47kWで同水準(これは軽自動車の自主規制である64馬力を超えない数値)としているものの、最大トルクに関しては195Nmとi-MiEVの2割増しまで引き上げられました。

 最大トルクが生きる発進加速などでは、ターボエンジン搭載の軽自動車とはもちろん、i-MiEVと比べても力強さを実感。ちなみに新型eKクロス EVの車両重量は1060kgから1080kgと、i-MiEVの大型バッテリー搭載モデルの1090kgに比べると軽くなっています。

 また、EVの使い勝手に直結する一充電航続距離(満充電からバッテリーが空になるまでの間に走れる距離)も進化。

 新型eKクロス EVの航続距離は180km(WLTCモード)。i-MiEVはもっとも航続距離が長いGグレードで180km(最終モデルの「X」グレードは164km)となっていましたが、これは計測方法が「JC08モード」だったので、現在使われているWLTCモードにあわせれば数値は若干落ちることになります。

 とはいえ、数字だけを並べると「それほど変わっていないのでは」と思うかもしれませんが、実は大きく変わっているのが実質的な航続可能距離です。

 一般的に走行中はエアコンをつけっぱなしにしている人も多いと思いますが、i-MiEVはエアコン使用時で約2割、ヒーター使用時では4割ほど航続距離が低下し、エアコン使用時に安心できる実走行距離は100km程度が目安だったのです(冬場ヒーター使用時はさらに短縮されて80kmほど)。

 一方新型eKクロス EVは、空調使用時の航続距離低下を改善。

「航続距離の数値に隠れてしまい目立たないポイントですが、EVでもガマンせずに乗れるようになり、新型eKクロス EV実用性と快適性が高まりました」と開発者はいいます。

 その効果がどれほどかは、これから試乗の機会を待って確認することになりますが、かなり期待できるのではないでしょうか。

 動力性能以外に目を向けると、ユーティリティ面の違いも使い勝手には大きくプラスとなる部分です。

 i-MiEVのボディはパッケージングよりもデザインや後輪駆動であることを重視したもので、当時としても後席が広くはありませんでした。

 しかし新型eKクロス EVは実用性の高いハイトワゴン「eKクロス」をベースにしたもので、後席の広さも十分。後席を使うユーザーにとっては、この違いは大きいでしょう。

 安全性能の進化も見逃せません。i-MiEVは2006年にデビューした「i(アイ)」がベースということもあり、衝突被害軽減ブレーキなど先進的な安全機能は最後まで搭載されることはありませんでした。

 一方で新型eKクロス EVは、現在の常識的な先進安全機能はしっかり搭載。今どきのクルマ選びをするうえで、安全装備の有無は大きなポイントです。

 そして、最後の5つめのポイントとなるのは価格です。

 i-MiEVの車両価格(消費税込みで補助金を考慮せず)でもっとも安かったのは2014年10月発売モデルの「M」グレードで226万1520円(消費税8%込)でしたが、これはバッテリー積載量が10.5kWhと少ないタイプでした。

 バッテリー積載量が16kWhと大きなタイプは、最安でも264万2440円(消費税8%込)で、その後の最終モデルでは300万3000円(消費税10%込)まで上がっています(一般販売開始時の初期モデルは398万円)。

 対する新型eKクロス EVの最安グレードは239万8000円(消費税10%込)。

 単純比較ではi-MiEVの最安タイプよりも高い価格ですが、注目はバッテリー容量が上位グレードと変わらない20kWhだということです。

 バッテリーサイズを小さくして航続距離を犠牲にするということをせず(むしろバッテリーはi-MiEV上位モデルの16kWhよりも大きい)、さらにメカニズムもダウングレードせずにカーナビやアルミホイールといった装備の違いだけでこの価格を実現できたのは、購入時のハードルを大幅に下げたといって良いでしょう。

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 新型eKクロス EVを購入するときは、EV普及のための補助金が国から55万円、さらに住んでいる場所によっては自治体から最大で50万円程度の補助金が上乗せされ、車両本体価格から100万円ダウンとなる実質140万円ほどから購入できる地域もあります。

 該当する場合、ガソリン車の軽自動車よりも割安な買い物となるのは、いうまでもありません。