日産と茨城県高萩市は、車中泊体験の実証実験をおこないました。クルマで寝泊まりする「車中泊」が観光振興に一役買うというのですが、それはなぜなのでしょうか。

「キャラバン マルチベッド」で車中泊の実証実験

 車中泊を体験してみたいという人のなかには、「ウチにあるミニバンを使ってもいいけれど、せっかくだったら車中泊仕様のクルマでやってみたい」と思っている人が少なくないのではないでしょうか。

 2020年春以降に新型コロナ禍となってから、3密防止の観点、リモートワークによって自宅で過ごす時間が増えて家族との絆が強くなり、いわゆる”ライフスタイルの変化”が起こっています。

 だからこそ、オートキャンプや車中泊を、ユーザーが自然体で取り入れようとする空気が世の中全体に広がっているように感じます。

 そんななか、日産が新たなチャレンジに挑みました。

 茨城県高萩(たかはぎ)市の観光振興を目的として、「キャラバン」のカタログモデルで、荷室部分をさまざまな用途向けに変形できる「キャラバン マルチベッド」を使った実証試験(2022年4月28日から5月17日)をおこなったのです。

 キャラバンでの車中泊といえば、新型コロナ禍のまだ初期だった2020年10月に、キャラバンの特別仕様車「プレミアムGXブラックギア」の発売に合わせて、「車中HACK(しゃちゅうはっく)」というコンテンツを日産が配信。

 これは、さまざまな分野のスペシャリスト4人が、プレミアムGXブラックギアを、それぞれの職業やライフスタイルに合わせて徹底的に使いこなす様子をユーザー向けに発信したものでしたが、今回のキャラバン マルチベッドを使った実証実験の対象は一般ユーザーです。

 特設サイトを通じて、10組20人(小学生以下のこどもは一人まで同伴可能)を募集したところ、1800組もの応募があったという大人気企画となりました。

 費用はひとり6000円(消費税込)(小学生以下は3000円)で、これには車両の使用料、夕食、朝食、さらに高萩市内の自然を満喫する様々なアクティビティをふたつ体験する費用も含まれています。

 どんなところで実証実験がおこなわれているのか、高萩市の現場を取材。せっかくなので、別途、日産からキャラバン マルチベッドを借りて、実証実験に参加したような気分を味わうことにしました。

 キャラバン マルチベッドとは、アフターマーケット系のモデルではなく、日産の公式ホームページにもラインナップされている、新車として正規販売されているモデルです。

 なお、同じくキャラバンを架装したモデルとして、オートキャンプや車中泊に便利な「トランスポーター」も用意されています。

 それぞれ荷室部分の仕組みが違い、とくにマルチベッドはその名の通り、左右跳ね上げ式のベッドで多彩な空間アレンジが可能です。

 具体的には、両方のベッドを倒して、その中間の床に脱着式テーブルをつけると、リビングのようなスペースが広がります。

 また、両ベッドの中間にベッドを同じ色見と素材のボードを組み込むとフルベッドスタイルとなり、ダブルベッドルームのイメージ、中央のボードを外すとツインルームのイメージです。

 さらに、片側のボードだけを倒して脱着式テーブルをつけると、リモートオフィスの雰囲気になります。

 ベッドサイズは、長さが1760mm、ひとつのベッドの幅は580mm、中央のボードの幅が350mm、ベッドの厚みが50mm、ベッドの下の高さは350mm。ベッドのアレンジはどれも工具なしで、簡単にレイアウトができるのが特徴です。

 そして、荷室の床は硬質フロアパネルがしっかりと敷かれています。

 トヨタ「ハイエース」でも、一部のトヨタ販売店が独自企画として、マルチベッドのような商品を販売していますが、ハイエースのカタログモデルとしてはこうした商品はありません。

車中泊仕様のキャラバンは疲れ知らず!

 筆者(桃田健史)は日頃からさまざまなクルマを使ってオートキャンプをしているので、今回も個人所有するポータルブルバッテリーや冷蔵庫、各種LEDライト、寝袋、カーサイトタープ、小型テントなどをキャラバン マルチベッドに積み込んで出かけました。

 今回の旅で改めて感じたのが、キャラバンの走りの良さです。

 2リッターガソリン車(QR20DE)で、最高出力130馬力/最大トルク178Nmにとどまりますが、7速ATによって車両重量1880kgをしっかり支えてくれました。

 そしてハンドリングは、このサイズの商用車としてはとにかく軽快。ステアリングは少ない操舵角でコーナーをスーと曲がっていく感じです。

 ブレーキのタッチも操作性がとても良く、ノーマルタイヤでも路面からの突き上げに尖った感じがなく、サスペンションも商用車としては柔軟性にとても優れています。

 シートのサポート性や前方視界に対する見切りも良いので、ワインディングでも高速道路でのロングドライブでも、ドライバーと乗員に疲れが溜まりませんでした。

 高萩市の車中泊ポイントは、海水で浸食されたダイナミックな景色が印象的な「高戸小浜海岸」や、茨城大学の宇宙科学教育研究センターである宇宙電波館や国立天文台の大きなパラボラアンテナがある「さくら宇宙公園」、さらに山間部のキャンプ場、公共施設、古民家などが設定されていました。

 オートキャンプ場ではないので、車外でキャンプグッズを広げるという設定ではありませんでしたが、マルチベッドをいろいろ組み替えながら、楽しい時間を過ごすことができました。

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 高萩市・観光商工課の細金満寿さんは「高萩市は令和元年から、豊かな自然を楽しんでいただく、アウトドアの町としての観光をアピールしているのですが、市内にオートキャンプ場や道の駅、また大型ホテルもないため、車中泊の可能性を探っているところです」と、車中泊に対してとてもポジティブな姿勢を示しています。

 今回の実証試験の結果を踏まえて、高萩市での車中泊に対する観光パッケージや、利活用に対するルール作りなどが進められることになります。