第46代アメリカ合衆国大統領のジョー・バイデン氏が2022年5月22日に初めて来日しました。同時に運ばれてきた大統領専用車「the beast」とはどのようなクルマなのでしょうか。

バイデン初来日! 一緒にやってきた統領専用車「the beast」とは

 2022年5月22日に第46代アメリカ合衆国大統領のジョー・バイデン氏が初めて来日しました。
 
 同時に運ばれてきた大統領専用車「the beast」とは、どのようなクルマなのでしょうか。

 バイデン氏は大統領専用機「エアフォース・ワン」で在日米軍横田基地に降り立ちました。

 この日、横田基地では3年ぶりに「日米友好祭」(フレンドシップ)が開催されており、非常に広大な横田基地を埋め尽くすほど多くの人々がバイデン氏をのせたエアフォースワンを出迎えたのです。

 その後バイデン氏は「マリーン・ワン」(米海兵隊大統領専用ヘリ)に乗り換えて六本木にある在日米軍基地(赤坂プレスセンター)に移動。そこからは陸路の移動となり、「ビースト」の愛称で呼ばれる大統領専用車に乗り込みました。

 詳しい説明の前に、なぜ大統領専用車を「ビースト(BEAST)というのか?」を改めて確認しておきたいと思います。

 大統領専用車は本来の名称(コードネーム)は「ステージコーチ」ですが、エアフォース・ワンと同様、「キャデラック・ワン」とも呼ばれます。

「ワン」(ONE)とは大統領専用の乗り物のことで「アメリカのトップが乗る」ことを意味して「1番」の意味の「ONE」と呼ばれます。

 ただ、すべての乗り物が常時「〇〇ワン」を名乗っているわけではありません。

 例えば急遽、米軍の航空機に大統領が乗ることになった場合は、その航空機が「〇〇ワン」と呼ばれるのです。

 ビーストの愛称は2001年ブッシュ大統領時代に始まっており、現在のモデルは2018年9月トランプ大統領時代にデビューした3代目となります。

 重量7-9トンといわれる重装甲車で、まさに「戦車」以上の性能を持つ地上最強のクルマという意味をこめて車両の所有者であるアメリカ大統領シークレット・サービスでは「the beast」との愛称で呼ぶようになったのです。

 現在のモデルは2016年にオバマ大統領からトランプ大統領に代わったあと、約17億円をかけてさらなるセキュリティの強化がおこなわれました。

 本体は装甲厚が約20cmあり、耐爆仕様となっている車両底部には装甲床板が備わっており、窓の厚さは、なんと13cmもあり44マグナム弾を止めることが可能です。

 ポンプアクションショットガン、ロケット式手榴弾、暗視装置、催涙ガス手榴弾がすべて搭載されているといわれています。

 化学物質による攻撃を受けた際には内部を密閉することができ特別な換気機能が作動します。

 分厚いドアはボーイング757ジェット機と同レベルの重さとも。これらの装甲や装備によってビーストの重量は7-9トンと大変重たくなっており、0-100km/hには15秒もかかります。

 まさに地上最強といわれるにふさわしい装備ですが、実は全部で10台前後製造されています。

 バイデン大統領の就任式の際にはすべてのビースト7台が参列したとされていますが、恐らくは7台以外にも予備のビーストがスタンバイしていたことでしょう。

トランプ大統領の「ビースト」とは何が変わった?

 大統領専用車はおよそ8年ごとに新しくされる決まりがあるため、2018年のデビューから8年間、少なくとも2025年頃までは現在の仕様のままで使用されるはずです。

 大統領が代わるタイミングとはあまり関係がありません。もちろん、内装のクリーニングやシート表皮の張り替えなど傷んだ場所の補修やリフレッシュはおこなわれているでしょう。

 しかし、バイデン大統領に代わって確実に変化している装備があります。

 それは、「貯蔵される血液」です。ビーストには大統領が攻撃を受けて負傷し輸血が必要になった際の「血液貯蔵庫」が装備されていますが、NBCをはじめアメリカの大手メディアの報道にある通り、それら輸血用の血液は大統領自身の血液を貯蔵しています。それゆえ、大統領が代われば当然、貯蔵される血液も変わるというわけです。

 また、もうひとつ今回日本を訪れたビーストには変化がありました。

 それはナンバープレートです。ビーストにも都内で見かける機会が多い、青地に白い文字で印字された「外」マークがついた青いナンバープレートが付けられていました。

「8286」と「8283」の2種類です。なお、外ナンバーの最初の2桁または3桁の数字は国番号で、アメリカには「82」「83」「84」「87」の4種の国番号が割り当てられています。

 外ナンバーは日本国内に存在する大使館や領事館向けの車両として外務省によって交付されていますが一般のナンバープレートのように道路運送車両法に基づく番号標識ではないため、日本の保安基準を満たさずとも交付が可能となります。(大使館などで使用するクルマに初めて交付する際には販売証明書と任意保険の証書が必要となります) 

 外ナンバーも一般のナンバープレートと同様、同じ番号のプレートが2枚1組となって交付されています。

 2017年11月、2019年5月、そして2019年6月G20でトランプ大統領が来日した際にも今回と同様、2台のビーストが移動に使われましたが、前の1号車と後の2号車でナンバーが違っていました。

 過去のナンバーは2017年11月が8251、2019年5月が8259、同6月が8258となっていました。このように、前後2台のビーストの仕様をまったく同じにすることで、どちらに大統領が乗っているのか瞬時にはわからないようにするカモフラージュが目的とされています。

 しかし、今回のビースト2台のナンバーは8286と8283。何が理由なのかは不明ですが、外観上の違いはその程度でしょう。

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 バイデン大統領は5月24日に日本を離れました。

 恐らくバイデン氏が飛び立った数時間後に、ビースト2台も政府専用の輸送機に載せられて次の目的地に運ばれていくと思われます。